トップが語る、「いま、伝えたいこと」
9月8日(金)の朝、日経新聞の電子版を開くとトップ記事は「Apple時価総額28兆円減」でした。中国政府が政府機関や国有企業の職員に対して、「iPhone」の使用を禁止するのではないかという観測記事が出た影響で、2日間で時価総額(発行済株式数×株価、企業の値段ということになります)が28兆円も下がったということです。ちなみに、同記事によると28兆円というのはソニーの時価総額の1.5倍にあたり、たった2日間でそれだけの企業価値が下がったということになります。アメリカのハイテク企業の株価水準はすさまじく、Appleの時価総額は400兆円を超えているので、7%下がっただけでという見方もあり、大きな下げではありますが、これぐらいの水準の上げ下げはそれほど珍しいものではないという話しもあります。
ただ、やっぱりポイントは米中貿易戦争の影響がいろいろなところに出てきていることだと思います。福島の処理水の放出問題に関して、日本からの水産物の輸入を禁止したという話しにもつながっていると思います。さらに、中国は不動産不況が深刻で1990年代初頭の日本のような状態になっているのでないかという見方もあります。政府批判をかわすために日米批判ができる材料は何でも利用するというのが現状なのだと考えてもいいのかもしれません。
日本の場合は、直接中国とのビジネスに関わっている方への影響は大きいと思いますが、昔ほどこたえなくなってきているような気もします。インバウンドの中国人が戻ってこなくても、ありがたいことにすでに他国からの観光客の対応もできないような現状では、かえってありがたいような気もしますし、水産物を中国に買い負けていたことを考えると、きちんと国内の消費を立て直すいい機会になるのかもしれません。中国とは隣人であることは止められないわけですから、対立を煽るのはどうかとは思いますが、やっぱり対抗できるだけの体力をつけておくのは大事なのだと思います。
アメリカの大企業も、本音はともかく、これからしばらく中国バッシングが続くことは各社とも織り込み済みで対応できるのではないかと思っています。弱いものいじめみたいでちょっと恥ずかしい気もしますが、やっぱり日米欧の先進国の方に、この喧嘩の分はあるのかなと思います。ケ小平の息がかかっていた頃は、韜光養晦(とうこうようかい)政策で爪を隠す方法を少なくとも対米戦略ではやっていましたが、習近平政権になって爪を隠さなくなってきました。確かに相対的なアメリカの力はかなり落ちてきていますが、まだ少し早過ぎたかなとは思います。
日本にとっても中国に行ってしまっていたビジネスが国内に回帰してくるというメリットと、対中ビジネスで儲かっていた分がダメになっていく面と差し引きはあると思います。どちらかというと前者のプラスの影響の方が多いのではと思いますので、クレバーに立ち回りながら、間違っても熱い戦争が始まってしまわないような国益にかなう戦略を考えていきたいものだと思います。
選挙学
昨今は投票率の低さが話題になる事の多い選挙。年中日本のどこかで行なわれていると言っても過言でなく、国の行方を左右する非常に大切なものですが、投票率をみる限り国民の半数以上が他人事に近い状況であるという、不思議な状態です。その理由は何か、政治への関心のなさ、投票のハードル、たかが一票への意味を見出せない等、様々な理由が挙げられます。そしてその理由の中の一つとして個人的に、選挙について知識が不足しており、その重要性と意味も知らないままの方が多い、というのもあると考えています。
今回紹介するのは、野澤一著『選挙学入門: 選挙プランナーが明かす逆算の思考』(平凡社)です。著者の野澤さんとは前職時代にお付き合いがあり、その会社で父の講演会を一番多く頼んでもらっていたというご縁があります。野澤さんはちょうど舩井幸雄の担当をしてくれていたので、父の晩年の10年間、一番一緒にいたビジネスマンということになると思います。当時も、選挙のプランナーの仕事をされていましたが、いまは独立されて、実際に選挙現場で活躍されていて、選挙の裏も表も知り尽くしておられます。
父も私も、野澤さんに選挙の応援をしてもらうように政治家の人をご紹介したことがあります。選挙コンサルタントを頼むぐらいですから、かなりの苦戦が予想される選挙なのですが、いまのところ勝率は100%です。負ける選挙のプランナーをやってしまうと評判が悪くなるので、野澤さんなりに勝てる確信があって助けてくれるのだと思っています。
本書では表の仕組みももちろん、政治家の視点に立っての解説も非常に多く記述されています。選挙活動というと、投票する側の人間からすれば選挙カーや街頭演説、ポスターでの投票の呼びかけくらいしか思い浮かばないかもしれませんが、裏側でどのような争いが行われているのか、どんな公式があって票を読み、どんなマーケティングによって票を集めるのか。後援会はどうして存在するのか。大体の事が分かりやすく書かれています。
そして野澤さんの視点からみた選挙の課題や、今後について、ネット選挙や、新しい時代に即した候補者の在り方についてまで触れられており、驚くと共に、常に情報をアップデートされているからこそ、野澤さんは長年活躍してこられて、この本の内容も有意義なのだなと改めて感じました。コロナ等、社会の変化を通じて仕組みも変わりつつありますが、それでも根本的な部分については残っています。選挙プランナーとして多くの実績を残す野澤さんによる解説は入門書として最適であり、選挙について知らなかった裏側の部分まで教えてくれる、興味深い内容でした。
改めて選挙について学びたい方や、選挙への出馬を考えている方はもちろん。投票の意味について漠然とした理解しかなく、投票という行動から遠ざかってしまっている若い世代が読んだり、大人が読んで子どもさんやお孫さんに解説する形でもいいので、ぜひ触れてもらいたい一冊です。選挙学という学問のレベルまで洗練されてきた選挙のあり方の一端を知るのはきっと楽しいことだと思います。
=以上=
2023.09.18:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】縦の糸 横の糸 (※佐野浩一執筆)
2023.09.11:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】選挙学 (※舩井勝仁執筆)
2023.09.04:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】推しの時代 (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |