トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
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2023年9月18日
縦の糸 横の糸 (※佐野浩一執筆)

縦の糸はあなた
横の糸は私
織りなす布は
いつか誰かを
暖めうるかもしれない

 ご存じ、あの中島みゆきさんが世に出した名曲の一節です。
 そもそもは、中島さんの友人の結婚のお祝いに作った作品だそうです。
 大好きな作品で、いまだにこの歌詞に触れると、グッとくるものがあります。そういえば、カラオケによく通っていたころは、十八番の1つでした……。

 さらに、蛇足を書くと、最後の歌詞はつぎのようになっています。

縦の糸はあなた
横の糸は私
逢うべき糸に
出逢えることを
人は仕合わせと呼びます

 「幸せ」ではなくて、「仕合わせ」と綴っているところが、またすごいんですよね。
 古くは、こちらを書いたのだそうですが、「仕」とは、尊い相手につかえるという意味で、他人同士が「仕え合う」「し合う」ことで相喜ぶ……ということ。それこそが「しあわせ」なのだということを、きっと昔の日本人は知っていたのでしょうね。

 さて、私の教員時代の話です。
 テニス部の監督をしていたとき、中学部と高校部、両方を見させていただいていました。
 体育系のチームは、どうしても「横糸」のつながりが強くて、学年ごとにまとまるという風潮が強かったことに、当初より課題を感じていました。
 教員になり立てのころ、すでに、それぞれの学年ごとに“かたまり”ができてしまっていました。しかも、6年一貫なので、そのかたまりが6つ。小さい子(中学生)たちの面倒はお前たちが見ろ……というような、上からのプレッシャーが高校1年生や中学3年生たちにかかっていました。しかも、のちに大会(団体戦)の選手選考を行う際にも、「上級学年が優先」というような雰囲気が漂い、強いチーム作りには程遠い環境が出来上がっていたのです。
 「縦糸」をつくらないといけない……。
 直感的にそう思い、「既存勢力」(当時の高校部員たち)と散々ぶつかった結果、3年後に「ハウス制度」を作りました。
 もともとは、イギリスの学校教育におけるボーディングスクール(寄宿学校)ではじまったものだそうです。「ハウス」とは、学年性別全てを混合にして分けた、いわば学校内の縦割りグループのことです。『ハリー・ポッター』シリーズで、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンという寮(ハウス)の名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか? 物語の中で生徒たちは、それぞれのハウスごとに寮生活をし、お揃いの色のガウンやネクタイを制服として着用していました。
 現代では、寄宿学校ではなく普通の公立学校でも、学校生活の中でハウスシステムやハウスカラーを取り入れているところもあります。
 話がやや横道に逸れましたが、学年を「横糸」とすれば、このハウスを「縦糸」として、チームを4つの「仮想ハウス」に分けて、上級生が下級生の面倒を見るしくみを作りました。 
 結果としては、逆に、中高のチームが混ざり合い、技術面でのアドバイスも増えました。また、低学年でも真面目で上手な選手は、あたりまえに上級生とも練習ができたり、交流できる環境が整っていきました。
 いきなり、雑談めいた書き出しになりましたが、人生の「縦糸」「横糸」について触れたいと思います。あの稲盛和夫先生も、真剣に考えていらっしゃったようです。
 2013年のご講演で、つぎのように話されています。
 「人生とはどうなっているのだろうかということを、ずっと考え続けておりました。  
 我々個々人が生まれたときから死ぬまでの間に、どういう道をたどっていくのか。それはもうすでに決まっているのではないだろうか。すなわち、人にはそれぞれ決められた運命というものがあるのではないだろうか。私はそういうふうに思うようになりました。つまり、『私たちは自分に定められた運命という縦糸を伝って人生を生きていくのだ』と思うようになったのです」

 稲盛先生は、運命を「縦糸」と考えられたのです。
 そして……。

 「同時に、私たちはその運命というものに翻弄されながら、人生のなかでさまざまなことに遭遇していきます。そして、その遭遇する過程で、人は善いことを思ったり、善いことを実行したりします。それによって人生というものがよい方向へと変わっていく。そのような『因果の法則』があるということも、私は同時に思い始めるようになりました」

 ということは、運命が「縦糸」なら、自分の実行したことによって結果が変わることを「横糸」とお考えになったのです。「因果」とは、ある事象や状態(原因)が別の事象や状態(結果)を引き起こす関係を指していますから、なるほどなって思います。

 さらに、続きがあります。

 「運命という縦糸があり、因果の法則という横糸がある。この2つの糸で織られていったものがそれぞれの人の人生を形づくっている。私は、そのように考えてまいりました」

 ところが、稲盛先生であっても、こうした考えにたどり着かれるまでには、やはり紆余曲折があったようです。そんななか、強い影響を受けたのが、舩井幸雄と同様で、あの安岡正篤先生であったそうです。
 安岡正篤先生の『運命と立命』という書物は、中国の『陰隲録(いんしつろく)』という本を解説する体裁をとっていて、そこに書かれたエピソードは有名だと思います。

 学海という少年がいて、あるとき、白髪の老人に「お前は、役人となって見事に地方長官になる。子どもは生まれない。そして53歳で死ぬ」と言われます。
 学海はそれを信じて、出世を果たし、見事に地方長官になりました。
 その後、禅寺の雲谷禅師と出会います。禅師にこの白髪の老人の話をすると、「そんなことを信じているのか」とえらく叱られたのです。
 雲谷禅師は言います。
「人は皆、運命のままに人生を生きていきますが、そのなかでいろいろなことを経験するでしょう。そういうとき、善いことを思い、善いことを実行したとすれば、その人の運命はよい方向へと変わっていきます。それが人生というものです」と。

 舩井幸雄もまた、「善いことを思い、善いことを行う」ことの大事さを説き続けてきました。稲盛先生と同じく大きな影響を受けたことがわかります。

 その後、学海は、人生には因果の法則というものがあることを知り、善いことを思い、善いことを重ねてきたところ、子どもも生まれ、53歳どころか70歳になってもまだ元気でいたのだそうです。

 人生にしろ、経営にしろ、なかなか白黒、善悪で切り分けられないことがたくさんあるように思います。「縦糸」の存在しか認識していなかったところに、「横糸」が存在することを知ると、見方や考え方がダイナミックに変化します。
 舩井幸雄は、よく「天の理」と「地の理」についても話していました。これは、「あの世」と「この世」の違いを伝える際にも、同じ考え方をとっていたと理解しています。

「地の理」から「天の理」へ
@複雑      ⇒単純
A不調和     ⇒調和 
B競争・搾取   ⇒共生(協調)   
C秘密      ⇒開けっ放し 
D束縛      ⇒自由    
E不公平     ⇒公平
F分離      ⇒融合
Gデジタル    ⇒アナログ 
Hムダ・ムラ・ムリ⇒効率
I短所是正    ⇒長所伸展         

 私たちが「優良星人」となり、この地球が「優良星」になるために越えなければいけないハードルといいますか、課題です。
 ただ、いまのいまの私の感覚では……、「地の理」を完全に越えてしまった世界が「あの世」だとすれば、「この世」には、限りなく「地の理」が少なくなることはあっても、完全に「天の理」に移行することはないのではないかと思えてしまいます。
もしかすると、この「地の理」と「天の理」を「縦糸」と「横糸」でとらえてみると、面白い融合の世界観が生まれるような気もします。
 それこそ、この宇宙や地球、そして私たちに「縦糸」という決められたものがあるとするならば、私たちも日々経験させられ、与えられることに対して、「善いことを思い、善いことを行う」ことで、「横糸」という育むことのできる何かを見つけられるのでは……とも思えます。

 結論することのむずかしいテーマとなりました。
 お付き合いいただいて、ありがとうございます!!

                            感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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