トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2024年4月1日
自立とは依存先を増やすこと (※佐野浩一執筆)

 前回の拙文で、「心理的柔軟性」について書かせていただきました。そこから、本物研究所でリリースした「数霊ZENWA」という「悟りへ導いてくれる新時代の機器」について触れさせていただいたわけです。
 この「心理的柔軟性」を一言で言うと、自分らしい人生を歩むために「どんな行動を目指したらよいか」を示したものだと言えます。そして、もう少し掘り下げてみると、大きく下記の3つの柱で構成されているとされています。

(1)感情や思考とほどほどに付き合う
 実は感情や思考は、自分が思っているよりもコントロールが難しいものです。「考えないようにしよう」とするとむしろ考えてしまったりします。
 そこで、無理に「考えるのをやめよう」とか「思考を制御してポジティブに考えよう」と力むのではなく「まぁそう考えてしまうのは仕方ない」と諦めてほどほどにゆるく付き合おうとすることで、柔軟な状態が生まれるということです。

(2)過去や未来ではなく「今」を意識する
 人は意外と目の前のことに集中していません。起きている時間の46.9%は今行動して  
いること以外のことを考えているというハーバード大の研究もあります。目の前のことより昔起こった嫌なできごととか、未来に起こる嫌な予定などを考えているということです。過去や未来は変えられないので、そこに意識を持っていかれてしまうと「今」目の前の行動に対しての柔軟性が失われてしまいます。「今」に意識を集中して行動することが大切だということですね。

(3)自分にとって大切なことをする
 「自分にとって大切なこと」を理解していると、大切なことのために(誰かのせいや環境のせいにせずに)主体的な行動が行いやすくなります。環境の変化に振り回されずに、柔軟な対応ができるようになるのです。
 少し大きくまとめると「自分の大切なことのために、コントロールできることに意識を向ける」ということです。自分がコントロールできないことに意識をとられても、できることはありません。自分ができることに集中して、環境の変化に柔軟に対応していくことが、自分の人生を主体的に生きることにつながるといえます。

 さて、ここで1つ強調しておきたいのは、こだわりや思い込み、そして先入観が強いと、心理的柔軟性は担保できないということです。「〜だから……できない」という思考は、プラス発想にはつながらないし、ましてや「自己肯定感」や「自己効力感」も育まれていきません。
 ですから、「なんとかなる」「なんとかできる」という思考性がとても重要だと考えます。このことを「処理可能感」と言うそうです。
 私は、「ライフカラーカウンセラー認定協会」を運営していますが、カウンセリングの現場では、打たれ弱い人、ネガティブな思考にとらわれている人、ストレスフルな状況にいる方々と出会うことは少なくありません。こうした方々は、この感覚が弱いと感じます。
 この「なんとかなる」をもっと詳しくいうと、「自分にふりかかるストレスや障害に対処できるという確信」「問題を抱えたり、トラブルが起きたりした場合にも、自分やまわりの助けを借りながら、乗り切ることができる自信」などがこれにあたります。
 そして、なぜ「なんとかなる」「なんとかできる」「乗り切ることができる」という感覚をもてるのかというと、乗り越える際に必要となる「資源」の存在に気づいているからです。
 ここでいう「資源」とは、「人脈」「知力」「才能」「経験」「お金」「権力」「地位」などがあります。これらがいつでも活用できる状態であれば、ベストだと考えられます。

 話が横道にそれますが、過日、公益財団法人舩井幸雄記念館で主催した第25回講演会で、一般社団法人HiFive代表の畠山織江さんと長男の亮夏さんにお話いただきました。織江さんは、『ピンヒールで車椅子を押す 「自分をあきらめたくない」人に贈る とある親子の物語』(すばる舎)
という書籍も出版され、ベストセラーになっています。
 亮夏さんは、生まれつき脳性麻痺で、基本、誰かの介助なくしては日常生活が営めません。でも、そういう亮夏さんだからこそ、人の役に立てることがあるのではないかと親子で対話を重ねます。そして、自分自身が生きた教科書」になるべく、学校や企業などで、体験を交えたお話し会を、母である織江さんとともに展開されています。ちなみに、亮夏さんは大学講師でもあります。
 そんな亮夏さんは、この6月から、「一人暮らし」を始めることを決めました。
 一人では生活できないのに、一人暮らし?
 きっと、そう思われたと思います。
 ここでポイントとなるのは、「自立」というテーマです。自立とは、すべて自分自身で主体的に行うこと……と理解されているのが普通だと思います。
 そう……、一般的に「自立」の反対語は「依存」だと勘違いされていますが、人間は物であったり人であったり、さまざまなものに依存しないと生きていけない……と考える必要があります。
 「自立」とは、依存先を増やすこと……。
 織江さんは、このように話されました。
 
 たとえば、オフィスが5階にあったとしましょう。そこで、1人の車椅子ユーザーが働いていらっしゃいます。突然、エレベーターが止まってしまったとします。その方は、下に降りようとしても降りられません。つまり、移動に関して“依存先”が限られてしまっているということです。
 エレベーターが止まっても、健常者は階段や場合によっては梯子で降りられます。つまり3つも「依存先」があるのです。ところが、車椅子ユーザーには、エレベーターしかなかった……。
 これが、障がいの本質だと思います。つまり、障がい者というのは、「依存先が限られてしまっている人たち」ととらえなおすことができます。健常者は何にも頼らずに自立していて、障がい者はいろいろなものに頼らないと生きていけない人だと勘違いされています。けれども真実は逆で、健常者はさまざまなものに依存できていて、障がい者は限られたものにしか依存できていない……。依存先を増やして、一つひとつへの依存度を浅くすると、何にも依存してないかのように錯覚できます。“健常者である”というのはまさにそういうことなのです。世の中のほとんどのものが健常者向けにデザインされていて、その便利さに依存していることを忘れているわけです。
 ですから、実は膨大なものに依存しているのに、「私は何にも依存していない」と感じられる状態こそが、「自立」を意味すると考える必要があるということです。ということは、自立を目指すなら、むしろ依存先を増やさないといけない……。こういうことです。
障がい者の多くは、おおよそ親か施設などしか頼るものがなく、依存先が集中している状態です。だから、障がい者の自立生活運動は「依存先を親や施設以外に広げる運動」だと言い換えることができます。ですから、依存先を増やすことで、亮夏さんは「一人暮らし」ができると考えているのです。

 話を戻すと、この自立へ向けた「依存先」を増やすことは、先述した「資源」と似ています。仕事においても、心身の健康に関しても、どれだけの資源(依存先)があるかによって、大きく変わってくるということです。そして、この資源の存在に気づいていて、それらが活用できると認識できることこそが、「なんとかなる」「なんとかできる」と考える「処理可能感」につながっていくのです。
 たとえば、仕事でピンチに陥ったとき、メール1本で「今、困っていて。これについて何か情報ないかな?」などと聞ける仕事仲間がいたり、「どうしましょうか」と相談したら一緒に考えてくれる上司がいたりすると、「なんとかなる」と思えるものですよね?
そうでない場合は、あきらめであったり、できないことを自分を責める材料にしたりして、メンタル面でのマイナスが大きくなってしまいます。 
 では、心理面からこの「処理可能感」を高めるにはどうしたらよいか?
 『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者、舟木彩乃氏は、同書でつぎのように述べていらっしゃいます。

(引用開始)
 アントノフスキー博士は、処理可能感を高める「良質な人生経験」として、「過小負荷と過大負荷のバランスがとれた経験」をあげています。「過小負荷」とは、「心理的にほとんど負荷がない、ストレスを感じない状況」のことです。「過大負荷」は、逆に「過度に大きな負荷を強いられた状況」のことで、本人の能力を超えた仕事量や難しい仕事を指示された場合などがこれに当たります。
 つまり、「過小負荷と過大負荷のバランスがとれた経験」とは、がんばれば乗り越えられる程度のバランスのとれたストレス下での経験を指しています。
 普通に考えると、ストレスをまったく感じない状態が一番いいように思われますが、処理可能感を高めるには適度な負荷やプレッシャーがあったほうがいいことになります。(引用終了)

 これによると、やりがいを保ちつつパフォーマンスを発揮できるのは、「要求度」(上司などから仕事の量や質について期待されていること)と「コントロール度」(期待に応えるために必要な裁量権を与えられていること)の両方が高い状態ということになります。
 このような状態のもとで仕事をクリアしていくことが良質な人生経験となって、次にもっと難易度が高い仕事がきても「なんとかなる」(処理可能感)と思えるようになり、より大きな仕事、困難な出来事にも対処できるようになります。
 船井総研時代に、当時の高嶋社長が、「若い人たちには“小さな成功体験”を積ませよう……」と、よくおっしゃいました。まさにこれだと思ったのです。
 適度な課題を与えられてクリアしていくことによる「成功体験」が、処理可能感を高めることに大きくかかわっている……。きっと、高嶋社長はこのことをご存じのうえのことだったのだと思います。大きすぎず、小さすぎないストレスのかかった仕事を経験し、うまくいくことによって育まれるのが処理可能感です。
 もちろん。この「成功体験」は、人に助けてもらった結果でもかまわないのです。まさに、自分自身の「資源」であり「依存先」であるからです。体験であったり、人に教えてもらったりしたものでもいいのです。みんなで無事に終わらせたことで「成功体験」「できた経験」になっています。
 私自身も、思い返せば、こういうことがよくあったな……と感じます。
 そうすると、あらためて感謝の念が溢れてきます。
 「自立」とは「依存先」を増やすこと。
 いま、仕事や人生で悩んでいる方がいらっしゃったら、ぜひ伝えて差し上げてください。そして、そのときこそ、本稿を読んでくださった“あなた”の出番です。

                           感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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