トップが語る、「いま、伝えたいこと」
先々週の当欄で書いたように日本株も明らかに調整局面に入ってきました。
38,000円を割る水準まで下がるとバーゲンセールだと感じている投資家からの買いが進むのではないかという意見もあり、実際に木曜日には一度その水準を回復したのですが、金曜日の朝方は大幅に下げており、このままでは37,000円の攻防戦も危ない水準になってきました。とりあえず、材料視されているのは、ワシントンで行われたG20財務省中央銀行総裁会議や、その前日の17日に行われた日米間財務相会議で目に見える具体的な形での円ウォン安やアメリカの利下げ先送りに対する対策が打ち出せなかったことがあげられています。
しかし、海外投機筋の見方は日経平均が38,000円の水準は安いとみているようなので、今回の下げは国内投資家の弱気が原因なのかなとも思えます。私は今年還暦を迎えますが、私たちの世代は日本経済に対してまったく自信を失ったまま社会人生活を送ってきました。正直に言うと、1989年のバブル時に付けた最高値は永久に更新されないだろうと考えていましたので、今年の4万円台突入はまさにびっくり現象ととらえていました。だから、ちょっと下がってくるとやっぱり異常な現象で、こんなことが続くはずがないという思いが高まってきて、慌てて売ってしまっているのかもしれないというのが感想です。
テクニカル的にも、いわゆるダブルトップという株価の天井を2回つけた現象が起こりましたので、しばらく相場は調整局面に入ると思います。テクニカル分析の専門家は36,000円程度まで下げる可能性があると言っていますが、私は個人投資家として主流になってきている私やその上の世代が簡単に悲観論を持ちやすいことを考えると35,000円割れぐらいまで行く可能性はあるのかもしれないと考えています。しかし、前回も書きましたが長期投資を前提にしていれば、優良株が割安で買える局面が来たということになり、いろいろな指標や日本企業の利益体質やガバナンス(統治)体制がしっかりしてきたことを考えれば、そう遠くない将来にさらに最高値に向かってトレンドが反転するタイミングが来るのではないかと思っています。
投資は自己責任でやっていただくのが原則です。私の見方が必ず当たるわけではありませんので、ご自分の考え方をある程度作って投資に臨まれるのがいいと思いますが、日本経済について、あるいは日本の経営についてもう少し自信を持ってもいいのかなと思っています。
そんなことを背景に、今回紹介するのはウリケ・シューデ著『シン・日本の経営 悲観バイアスを排す』(日経BP)です。著者はドイツ出身で、アメリカの大学で日本を対象とした企業戦略、組織論、金融市場、企業再編、起業論などが研究領域とする教授をされています。タイトルにもある、バイアスの部分。日本人は国に対して非常に悲観的な印象を強く持っている。その部分について、首を傾げる方はおそらく少ないでしょう。そもそも国民性として、ポジネガどちらに寄っているのか? と考えた時、多くの人が後者を選ぶのが日本人の特徴だと思います。私自身は謙虚であり、満足せずにより良い形を見つけていくともいえるその習性は好ましいとも考えるのですが、悲観バイアスを持ってしまう原因である事も間違い無い事実でしょう。
無理がある言説なのではないか、というのが本書のタイトルを目にした際の第一印象でした。必要以上に日本を持ち上げるのが売りの類のものかな? とさえも考えましたが、少々毛色が違うような印象も受けます。悪い部分も表現はされていますし、バイアスを排す視点で面白いなと感じたのは、現在の停滞と言われる状況は意図的に選択されて作り出されたと記してある部分です。日本は実際、国もわざわざ衰退を招こうと意図して社会を動かしてきたわけではなく、批判されがちな政策等にも、当然意図は存在します。それを正確に読み取り、独自の進化を遂げていると考える作者の思考は、確かに一理あります。
また、国内はもちろん、世界中のメディアが日本についてネガティブな報道をするのが当たり前になっていて、良い話題でも悪い方向に帰結する報道姿勢を持っています。そして、それによって悲観バイアスを植え付けられてしまっている、という展開も納得のいくものです。自らに問うた際、前述のように私にもその傾向があることは否定できません。
失われた30年を【舞の海戦略】(具体的には本書をお読みください)の期間だと表現するなど、ユニークな表現が随所に用いられており、硬い言説よりも受け入れやすい印象です。書かれている事が正解であるかは、議論の余地が非常にありそうですが、少なくとも新しい視点としては受け入れる価値がある主張が並んでいます。視点を変えてネガティブをポジティブに捉えるような言い方をされていますが、個人的には良い部分を見つけて強調しそれを活かそう、と言い換えても面白いのかなと思います。長所を探す、それは舩井幸雄がいつも推奨してきたものですが、それを国に対して行ない、見つけた部分を伸ばしていく。そうやって日本の形を作っていくべきなのかもしれないというきっかけになるのかもしれないと感じました。
=以上=
2024.04.22:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】視点を変えて、日本を変える (※舩井勝仁執筆)
2024.04.15:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】小林正観先生に学ぶ、ストレッサー対処法 (※佐野浩一執筆)
2024.04.08:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】女神の目覚め (※舩井勝仁執筆)
2024.04.01:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】自立とは依存先を増やすこと (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |