トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2024年5月13日
いまを生きる! (※佐野浩一執筆)

 大好きだったコメディアンであり俳優のロビン・ウイリアムズが教師役を演じること、当時、自分自身も教師だったこともあり、この作品に没入してしまいました。
 「いまを生きる」という映画です。
 「いまを生きる」というのは、劇中でロビンが演じるジョン・キーティング先生が発するラテン語「Carpe Diem、カルペ・ディエム」の日本語訳で、厳密には「いまを生きろ」「いまを掴め」といった意味だとされています。
英語でいうと、「Seize the Day」となり、いまでもなお大好きで大事にしている言葉の1つです。
 本作品は1989年にロードショー公開されましたが、舞台は1959年。
 バーモントの全寮制学院ウェルトン・アカデミーの新学期に、同校のOBである英語教師ジョン・キーティングが赴任します。ノーラン校長の指導の下、厳格な規則に縛られている学生たちに、キーティング先生は「プリチャードの教科書なんか破り捨てろ」と言い放ち、詩の本当の素晴らしさ、生きることの素晴らしさについて教えようとするのです。
 ある日の授業では、キーティング先生は突然机の上に立ち、「私はこの机の上に立ち、思い出す。常に物事は別の視点で見なければならないことを!ほら、ここからは世界がまったく違って見える」と話します。

 この作品で、もっとも記憶に残った場面です。
 生徒たちにも机の上に立たせ、降りようとした際には「待て、レミングのように降りるんじゃない!そこから周りをきちんと見渡してみろ」と諭します。キーティング先生の風変わりな授業に最初は戸惑う生徒たちでしたが、次第に刺激され、新鮮な考えや、規則や親の期待に縛られない自由な生き方に目覚めていく……というストーリー。
 ネタバレになってしまいますので控えますが、最後に自分のやりたいことに目覚めた1人の生徒が、親の呪縛に抵抗して拳銃自殺を図る……という刺激的な展開、そして、“あの”ラストシーン……。
 観られていない方は、ぜひご覧になってくださいね!
 私は、当時、高校の授業でもこの作品を題材にして授業をしましたので、たぶん10回以上は観たと思います。
 「Seize the Day!」
 そう、大事なのは、ただ「いま」を生きること。
 今日、いま、この瞬間をどう生きるか?
 日常の気ぜわしさに忙殺されていると、とてもこのようなことは考えるすき間もないかもしれません。実際、私もそうなのですが、幸い、「書く」ことを仕事にさせていただいているのは、とっても幸せなことだと痛感します。
 なぜなら、「書く」という行為は、どれだけその周辺の時間が荒波に飲まれるような状況であったとしても、少なくともこの時間だけは立ち止まり、思索にふけったり、考えたり、感じたりできるので、あらためてどれだけ貴重かに感じ入ってしまいます。
 そう考えると、たしかなことは、“いま、この瞬間”にしかありません……。
 まさに「静寂」のとき……。
 「過去→現在→未来」という時間の流れのなかで生きている私たちは、過去や未来に思いを馳せることは確かにあります。でも、心が過去や未来を行き来するあまり、現在がおろそかになってはいけない……と、時折、見つめ直します。
 前回も「禅」について書かせていただきましたが、「前後際断(ぜんごさいだん)」という言葉があります。現在は過去(前)とも、未来(後)とも切り離されている、絶対的な存在であるという禅の考えです。「一生」は、「いま」という瞬間が積み重なって築き上げられる。「いま」この瞬間に集中して生きることが、充実した一生につながる……ということです。
 舩井幸雄は、よく「目の前にあることを大事にして、集中しよう」と申しましたが、これまた禅語にある「深知今日事(ふかくこんにちのことをしる)」に通じます。「いま、目の前にあることを深く知り、やるべきこと、なすべきことは何なのか、自分自身がよく把握して取り組むことが大事」という意味です。目の前にあることを熟知してこそ、十分に力を尽くすことができるものです。「この仕事を片付けたら、次はあれ。それが終わったら……」と、未来のことばかり考えていても、これまた、いまやるべき仕事に集中できない……ということですね。
 近年、ビジネスでは、マルチタスクが求められたり、もてはやされることが多くなってきました。私も、実際には、何かをしながら、別の何かに手を付けつつ、並行していくつかの仕事が回っていることを意識してはいるものの、ときに、「禅」の考え方に立ち返ったとき、「それでいいのか……」と自問自答するのです。
 並行させながらでないとこなしきれない……ことも事実ではあるのですが、実際には、それで全力を注げているのか……との問いには、「是」と答えられる勇気は持ち合わせていません。
 一方、禅語には、「一息(いっそく)に生きる」というものもあります。
 「人生において、息を吐いて吸う、その呼吸(一息)の瞬間だけが真実である。その瞬間を一所懸命、全力で生き切りなさい」という意味です。いま、この瞬間の呼吸をすべてとして集中せよという教えです。
 「禅」における坐禅が、海外から“マインドフルネス”として逆輸入されたことは周知の事実ですが、そこでもやはり「呼吸」がすべて。ただ呼吸に意識を集中させて、心身の安寧を求めていくということです。シンプルですが、それゆえに、現代ではとくに注目を浴びているわけも理解できます。
 枡野俊明先生によれば、「一息に生きる」ためには、“ながら”をしないことが大切だと説かれます。“ながら”をすると、どうしても中途半端になる……。仕事をするときは仕事に、遊ぶときは遊びに集中して徹底的にやりきることが、その瞬間を全力で生ききることにつながる……と。
 集中できないときは、丹田呼吸をしてから、いまの仕事に全身全霊で取り組んでみることだと、枡野先生はおっしゃいます。
 ちなみに、蛇足はありますが、丹田呼吸について少々……。
 姿勢を整え、おへそから二寸五分(約7.5センチ)下の丹田の位置を意識しながら、ゆっくりと深呼吸を繰り返すこと。丹田は禅ではきわめて重要な場所で、ここを意識した呼吸を「丹田呼吸」と呼んでいます。丹田呼吸で、脳が集中するため準備を整えることができるとされています。それでも、集中できないときは、シンプルに「深呼吸をくり返しましょう」と、優しく教えてくださいます。
 坐禅自体は、数回、お寺で体験したことがありますが、基本的には我流です。マインドフルネスの手法に近しいかもしれません。
 著名な経営者や有名な政治家も、実践されている方はめちゃくちゃ多いと聞きます。書物の中には、「ビジネスや人生の成功をもたらす習慣や健康法」として紹介されているものもあります。
 ただ、「禅」における坐禅は、決して成功をもたらすためのものとは考えられていません。ただ坐ること。そこに意義があるとされています。ただ、様々な研究によると、集中力や思考力を高める効果があることが、科学的に証明されているというわけです。
 
 目をつぶると……、(そのまま眠ってしまうこともありますが、)「動」から「静」にスイッチが切り替わるように感じます。外界からは音も聞こえますし、人や物の動きも感じます。五感は逆に冴えるようにも感じます。
 でも、「内」はとっても静かです。
 アタマのなかを完全に空っぽにするのは容易ではありませんが、浮かび上がるさまざまな思いを湧きあがるにまかせ、消えていくにまかせる……。これが、「禅」でいう「無心」なんだそうですね。
 あまり雑な言い方はできませんが、要するに、静かに目をつぶること、目を開けていても、空を見上げたり、花や樹木を眺めたりしてぼーっとする時間をつくること。これが大事なんだろうと、我流の解釈をしています。
 
 「いまを生きる」こと。
 そのためには、まず自分自身を「いま」にいさせてあげないといけません。
 「いまを生きる」ためには、「いま」がないといけません。
 「いま」が「ここ」にあることを、内なる静けさのなかで感じながら生きること。
 この延長線上で、「Seize the Day!」の感覚とつながっていくのでないかと、仮説を立ててみました。まだまだしばらく精進の旅を続けてみます。
                             感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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