トップが語る、「いま、伝えたいこと」
5月15日にアメリカの労働省が発表した4月の消費者物価指数は前年同月比3.4%の上昇と発表されました。前月や市場の予想より低かったことで安心感が広がり、NY市場株式は一時的には高騰し、ダウ平均ははじめて4万ドルの大台を記録しました。しかし、終値では利益確定売りが出たので下げて終わりました。17日(金)の日経平均の先物もかなり弱含んで終わっていますので、少なくとも朝方は大きな下げがあると思います(出張の関係でマーケットが開く前に書いています)。市場は金余りもあり上げたがっているのですが、さすがに高すぎるという思惑も出てきたので、おっかなびっくりというところでしょうか。
CPI(消費者物価指数)の発表に過敏に反応したのは為替相場で金曜日の朝方は1ドル155円台前半で推移していますが、発表直後は153円台の円高まで一時的に進みました。日本の金融当局が8兆円規模の為替介入をして160円を挟んでの攻防をつい最近していたことを考えると大きな円高傾向になってきたようです。もちろん、これで円高傾向が定着するほど甘くはなく、指標の発表がある度にそれを材料にして乱高下を繰り返すのだと思いますが、可能性としては緩やかな円高株高(特に日本株)傾向に徐々になっていく確率が高くなってきたと思います。ただ、株価は大きく下げていくことも同じぐらいの確率で考えられるとも思いますので、相場をやる方にとっては難しい局面になってきたように思います。
一方で16日に内閣府が発表した日本の今年1〜3月の第一四半期のGDP(国内総生産)は年率換算で2.0%のマイナスになりました。個人投資は4四半期連続のマイナスで不景気の足音が聞こえてきている感じもしますが、大きなマイナスになったのは不祥事によって自動車の生産停止になったことが大きな要因であり、4〜6月期はプラスに回復するだろうと見込まれていて、強い売り材料になるような感じではないのですが、残念ながらどちらかというとアメリカの市場に引きずられるのが、いまの日本の相場なので4万ドルの大台に乗せた達成感から短期的には調整感が強くなると思います。
そんな状況の中で、今回紹介する本は、澤上篤人著『暴落ドミノ 今すぐ資産はこう守れ!』(明日香出版)です。澤上先生は日本で個人投資家が長期投資をするための金融機関側の利益を第一にせず個人投資家の育成を目的とする投資信託(投信)を最初に作ったパイオニアです。まだまだ、金融機関側の利害を基に作られている投信が多い中で、熱烈なファンを多数育てて、利益が出ているかどうかという普通は投資家が一番気にする指標にそれほどこだわらない特異なポジションを築きました。澤上先生が「さわかみ投信」を立ち上げられたころに、講演(30年近く前だと思います)をお聞きしたことがあり、ファンドの購入までは至りませんでしたが、資料を取り寄せて勉強したことをよく覚えています。
乱高下の傾向があらゆる分野で顕著になり、不安定さが増している様子が見て取れる現在の市場は、非常にリスクを孕んだ状態です。そんな状態でどのように立ち回ればいいのか、どこからドミノは倒れ始めるのか、本書はそれを解説してくれる一冊です。本文で指摘されているように、一度売り基調になってしまえば、その流れは非常に強く、止められないものになるでしょう。まさに暴落ドミノ、それはいつ起こっても不思議ではありません。過去の恐慌を例に出し、類似している部分などから予測を立てているようですが、それは十分にあり得ることも、解説の中で理解できます。
その先にある資産デフレに巻き込まれてしまうと、我々も大きな損失を被ります。しかし避けるには世界中に不安材料が多く散らばっており、難しい問題のようです。本書内では売ってしまい比較的安全な資産(現金に近いもの、生活に根差している地道な優良会社の株式)への切り替えが推奨されています。しかしその為には自分で知識を身につけ、行動する必要があります。投資会社に全てを任せて運用している気になっている方もいますが、そのリスクについても触れられています。
終盤に書かれているように、投資会社の社員は、顧客の利益ではなく手数料を稼ぐ事を第一に考えている。これは事実であり、現在の仕組み上そうなってしまうのは仕方がない、構造的な問題でもあります。また投資の裾野を広げようとするNISAなどの問題点についても触れられています。何の知識もなくお得だからと始める危険性、問題性。今後も様々な政策が講じられていく事が想像できますが、それは本当に必要なのでしょうか。投資は非常に大きなお金が動くギャンブルに近いものです。知識も無しに感覚や人任せで投資を行うのは、競技の知識も無しに競馬やスポーツ系ギャンブルで賭けるようなもの。大きな痛みを伴う可能性があります。そんな事が許されるのは、中東の王族か有名スポーツ選手の口座を財布がわりに利用できる通訳くらい。
知りもしない分野に大金を賭けるリスクは非常に高いことは、冷静になればそれは誰でも理解できるはずです。本書はリスクを喚起することで、それを教えてくれる一冊ではないでしょうか。ただ、澤上先生のご意見にもうなずけるところは大いにありますが、私は前半で書かせていただいたように、どちらかというとまだ楽観的な相場観を持っています。澤上先生のご意見もしっかりと押さえながら相場観を磨いていく必要があると思いましたので、本書を紹介させていただきました。澤上先生や私の意見を無条件に信じるのではなく、それを参考にしていただいて、それぞれの相場観を創造していくことが大事なポイントだと思っていますので、相場をやらない方でも経済の動きを感じる上でとても参考になる名著だと思います。
=以上=
2024.05.20:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】暴落ドミノ (※舩井勝仁執筆)
2024.05.13:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】いまを生きる! (※佐野浩一執筆)
2024.05.06:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】スピリチュアル本 (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |