トップが語る、「いま、伝えたいこと」
老子の思想の中核は「道(TAO)」に集約されます。
老子の説く「道」は、儒家の説く「道」とは、まったく異なるようです。
儒家の示す「道」は、人間社会について言うもの。修養論としては、人が行うべき「道」、つまり倫理的規範を示すと考えられます。一方、政治論としては、為政者が拠るべき「道」、つまり政治的理念であるということになります。
「人の道」「武士道」「人道主義」など、私たちが日本語でも使う「道」は、おおむね儒家の言う「道」と同じだと考えてよいと思います。
一方、老子の「道」は、宇宙自然を指していて、万物を生成消滅させながら、生滅を超越した唯一普遍的な存在、つまり、宇宙自然のあらゆる現象の根底に潜んでいる原理、法則のこと。いわゆる、舩井幸雄的に言えば、それこそが「天地自然の理」ということになります。
「老子」第一章に。
「道の道(い)うべきは常の道に非ず。
名の名づくべきは常の名に非ず。」とあります。
これが「道」であると言葉で表せる「道」は、永遠不変の「道」ではない。
これが「名」であると名付けられる「名」は、永遠不変の「名」ではない。
と訳されますが、正直、私にはまだよく理解できません。
「名無きは天地の始め、
名有るは万物の母なり。」
「名」が無いのが、天地の始めで、
「名」が有るのが、万物の母である。
「故に常無は以て其の妙を観んと欲し、
常有は以て其の徼(きょう)を観んと欲す。」
ゆえに、天地開闢前の「無」の状態では、「道」の霊妙な働きが観察され、
万物が生成される「有」の状態では、「道」の末梢的な現象が観察される。
「此の両者は同じく出でて名を異にす。
同じく之を玄と謂う。
玄の又玄、衆妙の門。
両者(「無」と「有」)は、出てくるところは同じで「名」が違う。
同じく「玄」と呼ぶ。
奥深く、また奥深いところ、そこが諸々の霊妙な働きが生まれる門だ。
「無」も「有」も同じである根源的な状態、
「無」が「無」、「有」が「有」と呼ばれる前の原始の状態、
それを「玄」と呼ぶ。
「玄」のもともとの意味は、天の色なんだそうです。人間の色彩感覚を超越した、天空の果ての果て、奥の奥の色のことを指すようです。人知を超えた、言葉で表せない、暗く深遠なもの……。おそらく、ここで、老子は、宇宙の始まりを説いているのだと思います。
「道TAO(タオ)」とは、古代中国の賢人達が長い年月をかけて自然を観察し、星の運行と人間の行動や健康、運命を観察して発見した宇宙に貫徹している原理原則。この「道TAO(タオ)」は、とうてい人間の手が届かない 大きな宇宙の法則です。
そしてまた、人間の体も、宇宙の原則である「道TAO(タオ)」に支配された小宇宙と考えたようです。そして、その小宇宙の生命をつかさどり、動かしているエネルギーを「氣」と名づけたのです……。
ですから、私たち人間も、体内の小宇宙が調和した状態で、無為自然に気が流れているのがもっとも健康で元気な状態であり、宇宙に生かされる一つの小さな存在として、この「道TAO(タオ)」に添って生かされることが、最も幸せで快適で健康な生き方であると気付いたのでした。
この「道TAO(タオ)」に添って生かされるという、「無為自然」の生き方を、タオイズムと呼ぶのですね……。そして、この宇宙に存在するものは、人間だけでなく、すべての生命もまた存在も、「道TAO(タオ)」の宇宙の原理原則に添って生かされているのです。
天災だけでなく、私たちのまわりにあるすべての現象、人間がつくりあげた社会現象ですらも……、そして、人間関係や、経済活動、国と国の関係をも宇宙的な立場に立って見れば、「道TAO(タオ)」の原理原則から逸脱することはできないということのようです。
よって、老子は、人間も宇宙の一部、天地自然の一部としてこの世に生み出されたものであると考えます。人間もその自然の一部であると考えたのです。
なんだか、もう完全に舩井幸雄の生き方哲学をも、この「「道TAO(タオ)」そのものだなって、感じ入ってしまうのですが、いかがでしょうか?
舩井幸雄は、だれにもわかりやすく、「あるがまま、なるがまま」と伝えました。これこそが、「無為自然」。何もしないのではなく、精一杯の努力をし、あとは天地自然の宇宙の原理や変化をそのまま受け入れよう……。舩井は、もしかしたらこういう文脈で伝えたかったのかもしれないと思ったりします。
私たちのこの小さな命を、無為自然の宇宙に委ねて生きる……。そして、この宇宙に命をいただいているということを、もっと大切に日々を楽しく精一杯過ごすこと、そして、心も体も自然なありのままの状態に戻してあげることで、はじめて私たち人間は、明るく、楽しく、前向きに、とらわれのない 無為自然な生き方=「道(TAO)」に到達することができるのだと……。ここに、村上和雄先生に示唆を受けたとされる「サムシンググレート」の存在を感じざるを得ません。
「老子」には、人は作為のない状態、ありのままでいるのが良いと書かれています。
その代表的な一節が、「老子」第十九章にあります。
「素を見(あらわ)にし 樸(ぼく)を抱き
私を少なくし、欲を寡(すくな)からしむ」
自然のままにいて、
木なら原木のままを大切にし
自分が自分がという我執をなくして、
欲を持ちすぎないことだと……。
そう……、「ありのまま」 ということですね。
素朴こそが、「無為自然」。つまり何かに執着した生き方、人より上になりたいという思い……、自分だけ金を儲けようとか、利益だけを追求するような生き方じゃない……。
地位があがることだけにあくせくするような生き方、有名になることだけを考える生き方は無為自然じゃない……というのです。
舩井幸雄は、あれだけ有名で実力者になっても、名誉欲などは一切持たないと言い切りました。名刺だって、晩年は、役職などを一切外した「舩井幸雄」とだけ書かれたものを使っていました。なにかに対する執着やこだわりも本当になかったように、身近で感じていました。
自分本来の生き方を大切に、素朴であることを大事にして、作為や、計算や見栄などを手放して無為自然になり、本来のありのままで生きればすばらしい生き方ができる……。
そう示したかったのだと思います。
これこそが「道(TAO)」の生き方、「無為自然」の姿勢ということなんですね。
一方で、舩井幸雄は、「直感力」を身につけたほうが良いとも、よく話していました。
「直感」と言えば、なんとなく「思いつき」や「瞬時に降りてくる判断」のような感覚でとらえていて、イメージは「頭の上」からくるもののように感じていました。
舩井は、私のような凡人からすると、なかなか体系的に伝えてくれないところがあったので(*本人は、論理的、体系的に伝えている……と申しておりましたが)、バラバラに伝えてくれることを、なにかのきっかけで統合したり、関連させたりしながら、理解を深めていかざるを得ないことがたくさんありました。
ただ、いま「道(TAO)」を少しずつ学んでいく中で、ある面白いことにまた気づいたのです。それは、舩井がよく伝えていた「丹田」や「氣」に関してなんです。なぜ、「頭」ではなく「腹」のことを伝えたのか……。一つの私なりの結論を述べると、それは、「直感力」の発露に深い関係があるかもしれない……ということです。
「腹脳」という言葉を知りました。腹で考えるということです。乱暴かもしれませんが、「直感力」は頭の上から来るんじゃなくて、「腹」に“すでにあった”のだと……。
「腹脳」が導く道は、人から見て、どんなに苦難なことであっても、腹脳に導かれているときは、苦難なんて思わない……。気づいたら、ただそこに居る……という感じ。自分の力ではない、なにか大きなものに動かされているような生き方、とらえ方です。まさに、サムシンググレートとなんとなく一体化しているような感覚なのかと想像します。
昔、アクションスターのブルース・リーが伝えた名文句、「考えるな、感じろ」というのがありました。まさに、この感覚なのかなって思います。
何か判断に迷ったときに、頭で物事を考えて 意識的に行うことをやめて、本当に自分が進みたい道を選択すること。人間はもちろん自然に頭で考えてしまうものですが、それをできるだけ「腹脳」での思考や行動に変えていくというのが「直感」?
本当に「無為自然」に生きるということは、「腹脳」で考え(感じて)、「腹脳」の導く答えに添って進んでいくことなのかもしれないということなのです。自力で生きるというより、宇宙のパワーに生かされている……という感覚なのでしょうか?
それはきっと、本来の自分自身の道を歩むことであって、あるがまま、なるがままに生きることにもつながっていくということなのでしょうね。
とりとめのない雑感となりました。
では、ごきげんよう。
感謝
2024.08.19:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】舩井幸雄と道(タオ) (※佐野浩一執筆)
2024.08.12:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】人間の強みを活かす (※舩井勝仁執筆)
2024.08.05:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】ピンチはチャンス (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |