トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
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2024年10月28日
自利利他 (※佐野浩一執筆)

 舩井幸雄は、よく「自他同然」と申しました。

 「人は、ひとりではなく、すべてつながっていると考えれば、自分のために生きることは、世のため、人のためにも、なるようになっていきます。自分と他人を同じくらい大事にしてみましょう。その延長で、自然や地球のこと、社会のことも考えるようになります。」

 こんな言葉を残しています。

 これって、いったいどこから来てるんだろう……?
 以前から、とっても気になっていました。

 「自分と他人を同じくらい大事にできる」感覚というのは、どれくらいの人が腑に落としているのだろうか……? このことも、とっても気になっていました。というのは、正直言って、私自身、この言葉の意味は理解していても、完全に実行できているわけではもちろんありません。ましてや、いつもこのような心持ちでいられるわけでもないからです。

 でも、「答え」を見つけた気がしました……。

 あるとき、「自利利他」という仏教用語に出会いました。その意味するところは「自らの悟りのために修行し努力することと、他の人の救済のために尽くすこと」だといいます。もう少しわかりやすく言うと、他人の幸せ・他人の利益のために修行・努力することが、ひいては自らの利益にかなう……、ということです。
 あの稲盛和夫先生も、常に「利他に尽くせ」と言っておられますよね。企業の経営理念にもこの言葉が引用されている事例は数多くあります。たしかに、この精神は商売の基本でもあるからだと理解することができます。

 ある社長さんが、ブログにつぎのような逸話を書いていらっしゃいました。

昔々、あるところに一人の男がいた。
その男は、耕作する土地ももっていなく、しかも狩をしようにも大変下手で、これはもう生活していくためには誰か人にでも雇ってもらうしかないと、こうおもって旅に出た。
ある時、内陸の村に立ち寄った。
その村は塩が足りなくて大変苦しんでいた。
塩は生活必需品なので、非常に村人たちは困り果てていた。
その男は、気の毒だな、かわいそうだなと思ったが、何もすることが出来ずに、無念にもその村を去った。
しばらく旅を続けていると、今度は海沿いの村に行くことがあった。
その村の人は海沿いなので、塩はふんだんにあるが、米が不作。
米がなければ餓死してしまうので大変困っていた。
この男はその村の人をなんとか助けたいと思って、ずっと悩んだ時にハッと思いついた。
そうだ、あっちの村には米がたくさんあった。
向こうは塩がなくて苦しんでいた。
あっちの米をこっちにもって来てもらい、こちらの塩をあちらに持って行ったら、お互いの人が助かるのではないかと、その男は思った。
そう思った男は、二つの村に掛け合って、流通させることを提案した。
そうしたところ、この二つの村の人みんなが幸せになった。
そして、その二つの村の架け橋になって尽力したその男も大変感謝され、得もした。

 困ったことを、「なんとかしたい」と思わなかったらこのようなアイデアはそもそも出てこなかったのではないかと思います。そもそも、商売って、少々きれいごとを言うと、人々の苦しみや悩みをなんとかできないか、人々を少しでも幸せにできないだろうか、そう考えることが原点であると思っています。
 いや……、そう考えることなしに、大好きだった教員という仕事を辞めて、舩井幸雄の元に来ることはなかったと振り返っています。
 だから、相手の苦しみに鈍感である、また人を幸せにしたいという気持ちがないというのでは、それはきっと商売には向いていない……ということになる。そう、自分自身を戒めてきたつもりです。
 やはり、商売・ビジネスの原点は、「どうすれば他人を幸せにすることができるのだろう?」という考えから出発する必要があると考えます。
 そもそも、商売というのは、誰かに損をさせて自分が得するというものであってはいけないですね。そうして一時的に利益が出たとしても、長く続くはずがありません。その原点は、商売をする「相手の利益」を叶えることがなければ、成立しないのです。これは、これまでお付き合いいただいている諸先輩方から、ことあるごとに学ばせていただきました。
 「何をさせていただけたら、喜んでお金を払ってもらえるのかを考え、実行すること!」が大事……!それでも、今の経済状況やマーケットは、そればかりではやっていけないことも事実……。悩ましいものです。
 だからこそ、あらためて、お客さまの求めるものは何か? そのために自社ができることは何か? を考えるきっかけにしようと思っています。

 一方で、鬼丸昌也さんが創始者である「テラ・ルネッサンス」さんのメルマガからは、いつもたくさん学ばせていただいています。そのなかで、ある日、つぎのようなコメントと出会いました。

(引用開始)
「利他」が偽善的であるという印象を持つ人もいます。
だから実際には行動に移さないことがあるかもしれません。
この感覚の背後には、
どこか「利他」が悪用されてきた時代や思想があったのではないでしょうか。
例えば「お国のため」という教育の影響や
それに対する反省が、こうした疑念に繋がっているのかもしれません。
だからこそ、「自利利他」という「自利」がセットになっている考えは、
私たちにとって救いになるのではないかと感じます。
他人を活かそうとするときに
決して自分自身を犠牲にする必要がないことを示してくれているからです。
そして同時に
「利他」ということは仰々しいものではないことを自覚したいのです。
日常の中で、実は簡単に取り入れられるものでもあるのです。
道元の「愛語」の教えがあります。
 
愛語といふは、衆生をみるにまづ慈愛の心をおこし、顧愛の言語をほどこすなり。おほよそ暴悪の言語なきなり。(『正法眼蔵(四)』水野弥穂子校注 岩波文庫)

道元は、まず人々を慈しみの心で見守り、
愛情あふれる言葉で接することが大切だと説いています。
私たちが使う言葉には
決して乱暴であったり、暴力的な言葉は用いないように、ということです。
でも、ネットで誹謗中傷を行ったり、
あからさまな暴言を吐くことはないにしても、
私たちの日常生活の中で
ふとした瞬間に他人を傷つけるような言い方をしてしまうことがあります。
イラッとしたときに嫌味な言い方をしてしまったり、
素直に「ごめん、悪かった」と謝れない場面もあったりします。
それは特に、目下の人や、子どもであったり、
自分より弱い立場の人に向けられることが多いかもしれません。
そして、同時に、言葉をかけるのは他人に対してだけでもありません。
傷つける言葉や乱暴な言葉を
自分自身に対してもかけていないか、
そう振り返ることが実は肝要なのではないでしょうか。
自分にも、慈しみの心を持って、愛情あふれる言葉をかけることができるのか。
これも「自利利他」の一歩だと思うのです。
(引用終了)

 「なるほどな」って思いました。
 まずは、自分(自社)のできることをできる範囲で行う……。
 そのためには、まず、自分にも慈しみの心を持って接することができるか……?
 ここが大事。

 「自利」と「利他」がいっしょになっていると、だれかのために自分だけが疲れる、自分だけがガマンすればいいというような感覚も薄らいでいくように思います。「利他」を念頭に置きつつ、まずは「自利」からスタートする……。舩井幸雄がまた伝え続けた「今だけ、自分だけ、お金だけ」ではなく、「未来も、他者(他社)も、お金以外の大事なこと」も大切にできる経営をするべきだという考え方にも通じるように思えます。
 きっと、こういうところから「三方よし」の考え方にも通じていくのではないかと思いました。そして、きっとこの先に、「自他同然」を深く理解し、実践できるようになれるのではと考えました。
                            感謝

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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