トップが語る、「いま、伝えたいこと」
アメリカの大統領選挙は予想外のワンサイドになりました。トランプ前大統領が7つの激戦州すべてで勝利し、得票数でもハリス副大統領の得票を上回るという結果で再選されました。同時に上下院も共和党が多数派を占めるトリプルレッド(共和党のイメージカラーが赤なので、両院と大統領の全部の主導権を確保するという意味になる)が実現して、トランプ大統領のやりたいことが存分にできる体制になりました。いまのところ、2週間前に書いたように米株式市場はトランプ勝利を読み込んでいましたし、さらにここまでの圧勝は予想されていなかったので、それを好感して上げ幅を広げている状態です。
トランプの政策を公約通りに実行すると、インフレが再現して金利が高止まりすることが予想されるので為替が大幅に円安に動いていて、それによって輸出企業や海外で大きな事業を展開している大企業の株価が日本でも上がっていて日本の株式相場も比較的堅調に推移しているようです。ただ、トランプはアメリカの製造業の競争力を取り戻すことを主要な公約に掲げていますので、ドル高状態については修正を迫ってくることが考えられます。一説には、FRBの機能を大幅に制限するのではないかという見方も出ていて、パウエル議長がどこまで抵抗できるかが焦点になるかもしれません。
パウエル議長は、11月14日のテキサス州ダラスでの講演で「経済は利下げを急ぐ必要があるというシグナルを発していない」と発言したことが伝えられています。9月時点に予想されていたよりも利下げのペースを緩やかにするのではという見方を裏付ける発言ですが、このタイミングで出したということはトランプの金融政策に対する牽制球を投げたと読んでもいいのかなと感じます。為替安を実現するためには、アメリカが金利を下げることが必要ですが、そのプレッシャーに少しでも対応する用意をしているということなのかもしれません。
政府効率省(DOGE)という新しい省庁を新設して、そこの閣僚にイーロン・マスクを任命するという報道もなされています。DOGEはDepartment of Government Efficiency の略称ですが、マスクが好きな暗号資産の名前でもあり、これが急騰しているという話しもありインサイダー取引のような気もします。マスクは2兆ドル(310兆円)の削減を打ち出していますが、日本で民主党政権ができたときの事業仕分けに似ているような気もします。トランプはかなり思い切った改革を志向していることは間違いなく、すでに新閣僚の人事が発表されつつあり、その過激さに各方面に衝撃が走っているようです。
いまのところ、マーケットとの関係は良好だと言えますので、大きな軋轢が発生することによるマイナス面を考慮しつつも、相場に対しては強気で考えてもいいのではないかと感じています。
トランプ再選を受けて今回紹介するのは、辻浩平著「トランプ再熱狂の正体」(新潮新書)です。NHK国際部の記者としてワシントン支局で取材を重ねていた著者が、実際に現場での体験を元に書かれた現地レポートとなります。本書は選挙前に出版されたものですが、記者としての中立的な立場からのレポートであり、なぜトランプがあそこまでの支持を集める事ができたのかを知ると同時に、アメリカの変化と現状を知る事ができる物となります。
本書を読み強く感じたのは、第一次トランプ政権、新型コロナなど、立て続けに起こった社会の価値観を変える大規模なでき事により、アメリカの国自体が大きく変化し、分断が強まっている事です。価値観をぶつけ合う議論すらできない程に双方の支持者の熱狂を加速させています。SNSなどに目を向ければ、日本人でもトランプを同じように熱烈に支持する人たちを簡単に見つける事も可能ですが、彼らは、トランプは正義でそれ以外は悪と聞く耳を持たず、本書に出てくるような極端な人間と正に似た存在になっている気もします。そんな人たちが溢れかえっているのだとすれば、アメリカの分断の現状は容易に想像する事ができます。
ただ、辻氏は中立的にトランプ支持者に対してもマスコミ人としての共鳴を示していて、頭ごなしに否定しているわけではありません。トランプの魅力と人を惹きつける巧妙な手段。世界最大のプロレス団体WWE仕込みとも言われる芸の細かさの具体的な方法についてまで触れられ、どのように不満を持った人間を上手く取り込んでいるのか、人々の支持を集める政治家としての適性の高さを読めば読むほど感じる事ができます。アメリカは大きく割れ、先の選挙戦の結果を考えればトランプ側の思想を持つ人々が舵を握っており、そうでない人間は船の外へ追いやられている状態になるかもしれません。著者は最後まで対話の重要性を説いていますが、それが現在のアメリカでなされているようには見えません。
普段、我々がアメリカについて知る際に用いられるような翻訳されたものではなく、日本人によって書かれた、他国の大手メディアという背景があるからこそ可能だった取材とそこで得た生の声を伝える本書。海外のフィルターを介さず、日本人の視点でトランプとアメリカを知る事ができますし、マスコミ人は中立的に両者の言い分を伝えていく義務があるということを確認する、そんな意味でも非常に価値のある一冊であるように感じました。
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2024.11.11:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】モンテスキューとトランプ氏再選 (※佐野浩一執筆)
2024.11.04:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】副島先生の語るトランプ (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |