中村陽子の都会にいても自給自足生活

このページは、認定NPO法人「メダカのがっこう」 理事長の中村陽子さんによるコラムページです。
舩井幸雄は生前、中村陽子さんの活動を大変応援していました。

2024.03.20(第113回)
塩のことがスッキリわかるお話

 平成9年に塩の専売法が廃止され、誰でも自由に塩が作れる時代になりました。いろいろな塩が作られたり、輸入されたりして、赤い塩、ピンクの塩、高温で焼いた塩、海水を丸ごと粉末にした塩、太平洋の真ん中のきれいな海の塩、藻塩、何かをプラスした塩、など百花繚乱のごとく、塩が出てきましたね。私は、1994年から海のミネラル研究会を始め、日本の塩が自由化された時に初めて、世界と日本の塩の一覧表を作りました。そこで、今回は、日本の塩にはどんな種類があるのか、原料の違い、作り方の違い、使い方の違い、どの塩が自分に合うのかなど、整理してみましょう!

 塩にはどんな種類があるのでしょうか
 日本には、輸入原塩、イオン交換膜法の塩、再生自然塩、海塩 の4種があります。

輸入原塩
 これは、メキシコやオーストラリアの広大な塩田で天日で結晶した塩を、三菱商事などが大きな船で日本に運んできている塩です。ほとんどが工業用ですが、イオン交換膜法の塩の生産量では間に合わないので、一部粉砕したり、精製して食用にも使われています。1s60円台です。
 ですが、工業用が主目的ですので、結晶の周りについているミネラル分を飽和海水で洗い落として運んできます。ですので、食用には微量ミネラルがほとんどなく、身体にとって良くない塩です。しかし天日塩には間違いなく、味噌、醤油、漬物などの原料表示のところに、天日塩と表示されているのはこの輸入原塩のことです。

イオン交換膜法の塩
 高温多湿で雨が多い気候で、塩づくりには適さない日本にとっては、活気的な発明とも言えます。これは、プラスの電極にCl−、マイナスの電極にNA+を集めることで、純粋な塩化ナトリウムが海水から取り出せるという技術です。ですが、この塩は、日本の塩の85%を使用している工業用にはとても適しているのですが、残念なことに、人間の体の中で働いている内なる海の働きは向いていない塩です。

再生自然塩
 これは、イオン交換膜の塩が登場し、その膨大な研究費や設備投資を回収するため、7企業が独占できるよう、塩専売法が敷かれ、一般の国民がどうにも自分たちで塩を作ることが出来なくなった時、純粋な塩化ナトリウムでは、人間の健康が保てないと考えた人たちが、作り始めたものです。まず自分で塩を作れないので、原料は輸入原塩を使います。そこに、ニガリや現地の海水、伏流水などミネラル補給をして、再結晶させるという方法です。赤穂の天塩、伯方の塩、シママース、瀬戸のほんじおなど、藻塩の中にも輸入原塩に溶かしているものもあります。1s300円台からあるので、使いやすく、ミネラルも補給されているので、ちょっと意識の高いお店で使われています。私も茹で塩、漬物の下漬塩、足湯の塩などに使っています。

海塩
 昔は、自然海塩と呼んでいたのですが、その表示が許されなくなり、伝統海塩とよんでいるところもあります。昭和46年に、全ての塩田が廃止され、それ以降に考え出された製造方法なので、伝統という言葉には違和感がありますが、生体にとって最も良い塩を作ろうと研究して考え出されたものなので、ほとんどが体にとって良い塩です。
 塩田が廃止されてしまったので、海水を濃縮する方法を開発するところから始めたのですが、最初に研究したのは伊豆大島の現在の海の精の前身である日本海塩研究所の試験場です。いくつかの試行錯誤の上、ネット式という濃縮方法が始まり、ここで研修を受けた方たちによって、高知の美味海(うまみ)、熊本県天草の小さな海、沖縄県粟国島の粟国の塩と広がっていきました。専売法が廃止されてからは全国各地で塩づくりが始まり、オホーツクの塩、下関、沖縄の島々などと広がっていきましたが、濃縮方法はそれぞれ工夫されて違ったものが出てきました。価格は1s大体3,000円くらいします。それでも海水から97%の水分を取り除く作業は、日本ではとても大変なコストがかかり、注文が入っても多く作れるわけではないので、経済的には厳しい状況だと思います。

人は思ったとおりの塩が作れる
 さて、ここで面白いのは、この方たちは日本の海水で作っているのですが、ミネラルバランスや味が違うのです。その一番の理由は海水から天日乾燥でも釜で煮詰めても、塩には結晶化する順番があるからなのです。始めに出てくるのは灰色の硫酸カルシウム、次が塩化ナトリウムの四角い結晶、次は塩化カリウム、いろいろ出てきて、最後に飽和に近く濃縮されて出てくるのが針のような結晶の塩化マグネシウムなのです。塩づくりの方が、どんな塩が人間にとって良いかと考えているかによって、最初の硫酸カルシウムを取り除いたり、すべての元素を入れる方が良いと思ったり、最後の塩化マグネシウムは適度に取り除いたほうが体に良いと考えたり、出来るだけ全部残そうと考えたりすることにより、塩のミネラルバランスや味に違いが出てきます。

人は身体の状態により良い塩は変わってくる
 またどんな塩が人間に良いのかは、私は内なる海の由来である古代の海のミネラルバランスだと思っているのですが、それでも個人個人によって自分の体の状態により良い塩は変わってきます。ある時、その人に合う薬を選ぶドイツの機械を使って、何種類かの海塩を試したことがあったのですが、その場にいる方たちに合う塩は、バラバラでした。私自身も、微量元素が足らない時には、粟国の塩のようなニガリ分が多い塩がおいしいと感じたのに、足りてきたら美味しいと感じる塩が変わってきました。人は自分が不足している微量元素が入っている塩がおいしいと感じるし、身体にも良いのです。

逆浸透膜で海水を濃縮した塩に注意
 私は海のミネラル研究会をやっていたので、いろいろな方から、良いと思われる塩をいただくのですが、最近ある問題に気付きました。それは海水の濃縮する方法に、逆浸透膜を使用している場合があるということです。どうも美味しくないと思い、調べてみるとそうなので、逆浸透膜は、海のミネラルバランスをかなり崩してしまうと推察しています。袋の後ろの原材料のすぐ近くに製造方法が書いているので、探してみてください。

摂ってはいけない塩
 長くなってしまったので、最後に摂ってはいけない塩だけ書いておきます。
 それは2つ。1つ目は、塩化ナトリウムの塩、2つ目は添加物の塩です。添加物は全部ナトリウム化合物です。お茶に入っているビタミンCは、アスコルビン酸ナトリウム、ほとんどの加工品に入っているアミノ酸はグルタミン酸ナトリウム、保存料は、ソルビン酸カリウム、発色剤は、亜硝酸塩やリン酸塩、他にもありますが、悪い塩であることに間違いありません。
 これは内なる海のミネラルバランスを崩し、身体を弱めます。
 減塩の問題もありますが、更に長くなるので、今日はおしまいにします。


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Profile:中村 陽子(なかむら ようこ)
中村 陽子(なかむら ようこ)
首のタオルにシュレーゲル青ガエルが
いるので、とてもうれしそうな顔を
してい ます。

1953年東京生まれ。武蔵野市在住。母、夫の3人家族。3人の子どもはすべて独立、孫は3人。 長男の不登校を機に1994年「登校拒否の子供たちの進路を考える研究会」の事務局長。母の病気を機に1996年から海のミネラル研究会主宰、随時、講演会主催。2001年、瑞穂(みずほ)の国の自然再生を可能にする、“薬を使わず生きものに配慮した田んぼ=草も虫も人もみんなが元氣に生きられる田んぼ”に魅せられて「NPO法人 メダカのがっこう」設立。理事長に就任。2007年神田神保町に、食から日本人の心身を立て直すため、原料から無農薬・無添加で、肉、卵、乳製品、砂糖を使わないお米中心のお食事が食べられる「お米ダイニング」というメダカのがっこうのショールームを開く。自給自足くらぶ実践編で、米、味噌、醤油、梅干し、たくあん、オイル」を手造りし、「都会に居ても自給自足生活」の二重生活を提案。神田神保町のお米ダイニングでは毎週水曜と土曜に自給自足くらぶの教室を開催。生きる力アップを提供。2014年、NPO法人メダカのがっこうが東京都の認定NPO法人に承認される。「いのちを大切にする農家と手を結んで、生きる環境と食糧に困らない日本を子や孫に残せるような先祖になる」というのが目標である。尊敬する人は、風の谷のナウシカ。怒りで真っ赤になったオームの目が、一つの命を群れに返すことで怒りが消え、大地との絆を取り戻すシーンを胸に秘め、焦らず迷わずに1つ1つの命が生きていける環境を取り戻していく覚悟である。
★認定NPO法人メダカのがっこうHP: http://npomedaka.net/

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