トップが語る、「いま、伝えたいこと」
1月24日(金)の午前中の株式相場は、日経平均が4万円台を回復して終わりました。2期目のトランプ政権がいよいよ始動したのですが、今回は就任前ではなく、就任してからの安心感が広がりトランプ・ラリーが始まったのかもしれません。日銀は、金曜日の午後に発表する金融政策決定会合での利上げがほぼ確実視されていますし(※実際に、0.25%程度から0.5%程度に引き上げることを決定)、トランプ大統領はFRBに対して早期の利下げを要求するという発言が伝わったこと等で為替は若干の円高傾向になっています。
トランプ大統領は頭と感(勘)がいい大統領で、特に市場との対話は優れているのだと感じます。就任前はいろいろ過激な政策が実行されるのではないかという疑念から今回は就任前のトランプ・ラリー(株価の急騰)は起こりませんでした。ただ、時間をかけて、トランプ政権が打ち出す政策のマイナス要素も織り込まれてきたので、市場との対話が今回も可能であるということと、基本的には特に株高につながる政策をドンドン打ち出していくことへの期待感が高まっているのだと感じます。
日本のマーケットに関しても、関税がかけられる、軍事費の増額が求められる等のマイナスの要因もありますが、欧米のマーケットに比べて出遅れ感が強いことと、特に取引高の70%以上を占める外国勢からすると為替安の影響もあるので、まだまだ割安だと認識されているので買われやすい環境にはあると思います。
そして、何よりもインフレと株式相場は相性がいいということも大きな要素だと思います。銀行預金などは、まだほとんど金利が付きませんし、債権は金利が上がっていくことが予想される中で価格は下がる可能性が高いのが現状です。それに比べて株式は、インフレと共に価格は上がっていく傾向が強いのでいまの環境下においては有利な商品ということになります。
私は、トランプ政権に対しては、安全保障の面などでは心配していますが、やっぱり経済面は得意分野のように思います。12月の日本の消費者物価が3.0%増になったという発表もあり、インフレの流れが定着していくのは間違いありません。借り入れが起こしやすい政府や企業にとってはいい環境ですが、一般消費者にとっては決して優しい環境ではありません。日本も含めて成果中で与党政権が惨敗しているのは、庶民のインフレに対する怒りから来ているものだと感じますので、その辺りの舵取りが難しいのかもしれません。
賃上げを進めていくことは大切ですが、賃上げを伴うインフレは格段に制御が難しくなるのは、10%近いインフレをなかなかコントロールできなかった数年前の欧米の例から考えても明らかです。日本の政策当局がこの流れに対してどのように対処していけるかが試されている局面に入りつつあるのだと思います。大きな方向で考えると、無借金経営ではなく、実質の返済金額が下がっていく銀行借り入れをして、有効な設備投資を積極的に進めていけるかどうかが勝利の方程式につながるのだと思います。無駄遣いは論外ですが、企業体力を強くする投資をいかに進めていくかに挑戦していただければと思います。
今週は、朝倉慶先生の『トランプ・インフレが世界を襲う』(ビジネス社)をご紹介したいと思います。前述のようにトランプ再選の背景には、4年前と比べて生活は楽になったのかというトランプ大統領の投げかけが大きく影響していると思います。理論的に考えると、バイデン政権の政策が原因でインフレになったわけではありませんが、庶民感情はそうは取りません。アメリカでは急激なインフレにより国民の不満が高まっており、トランプ氏はそれを強(したた)かに利用して選挙戦での圧勝に繋げたようです。
インフレによる国民の不満、それをうまく拾った事によって選挙で躍進という形は、日本でも頻繁に起こるようになっています。各市町村で若手の政治家が当選し、国政でも国民民主党が圧勝。トランプ氏に近いやり方を実行した兵庫県の斉藤知事が大幅な逆境から再び知事に返り咲いた事も記憶に新しいところです。そのようなインフレによる政治構造の変化、トランプが与える影響と今後どのような政策を推進していくのかを前提とし、本書では朝倉先生の鋭い視点によってそれらを読み解かれていきます。
イーロン・マスク氏など、トランプに近い周囲の人間が与える影響についても触れられ、それらを総合的に勘案すると、やはりインフレは避けられない、という内容になります。またアメリカだけではなく、ヨーロッパや中国についての記述もあり、より幅広い知識を得る事も可能です。日本の現状と、インフレの展望についても多くのページが割かれています。雇用の流動化など、最悪の結末にならないために必要な方策が列挙されており、とても参考になる可能性のある内容です。
トランプを主題としながらも、世界各国のインフレ事情について書かれた本書。これからの時代の展望を先読みしていく為にも、ぜひ目を通すべき一冊なのかもしれません。朝倉先生は、かなり以前からのインフレ論者です。日本の財政状態から考えると、インフレになるのは必至であり、それに対する対処の必要性をずっと述べ続けておられます。日本のデフレの闇は深く、なかなか実現しなかったのですが、明らかにトレンドが変わったことで朝倉先生の時代がやってくるようにも思えます。
実は、コロナ禍前はアメリカでも二度とインフレの時代にはならないのではないかと超一流のエコノミストたちが真剣に議論をしていて、私もどちらかというその立場でした。間違っていたことになりますが、経済が明らかに新しいステージに入ったことを確認し頭を切り替えるためにも読んでおくべき本だと感じます。
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2025.01.20:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】魂の深いところへ (※舩井勝仁執筆)
2025.01.13:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】新境地への挑戦 (※舩井勝仁執筆)
2025.01.06:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】漫画思考 (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |