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トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄が(2014年1月19日の舩井幸雄の他界後は舩井勝仁が)いま一番皆様に知ってほしい情報をタイムリーにお伝えしていきます。
毎週月曜日定期更新
2014年4月7日
失うことを怖がらない (※舩井勝仁執筆)

 東京では、待ちかねた桜もすぐに散ってしまいました。この季節、はじまりのワクワク感とともにどこか無常な気持ちを感じる4月です。入学式、入社式など、希望や喜びに満ちた明るい空気の裏に、同時に無念な思いを抱えた人や出来事があることが、頭をよぎります。秋に実を結び、厳寒の冬を越えて、春にすべて芽を出す、自然はそんな優しいだけのものではありません。力だけではなく、環境と運が左右するのです。

 ノートルダム清心学園理事長のシスター渡辺和子さんの『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎)という本のタイトルは深く心に刺さります。人は、不本意な結果に終わった場合、納得してその場所で咲けるようになるまで、しばし葛藤の時間を持つのだと思います。舩井幸雄が繰り返し訴え続けた「天職発想」はまさに、そんな迷いに足元を照らしてくれる考えです。
 父は不満が先行していると、眼力が人並み以下になり、何よりも人相が悪くなると言います。大切なことは現在の環境(仕事)について、天職発想ができるようになることです。自分の志望通りの春を迎えた方、そうでない方、どちらかの方も、果敢な気持ちで前を向いていられますようにと願うばかりです。
 
 いま、時代の新しい流れの中で、「資本主義」の在り方も大きく変容しつつあります。 父は、「資本主義は創造的に破壊する、たどり着くのは『心の資本主義の時代』ではないか」と言っていました。心の資本主義とは、有意の人たちが、それぞれ自分らしい幸福感を追求し、かつ共生してゆく考え方です。この流れで言うと、大きい意味で「既得権益」も徐々にお色直しをしてゆくと言えるでしょう。
 一般的に言うと、男性は日本人に生まれて、それなりの学歴があり、「休まず遅れず」働けば、人並みに暮らせました。常識を守り、タブーを忌避し、組織から追い出されないことが大事でした。その点で正直に言いますと、私の場合、いままでは世間の抵抗勢力(学者・マスコミ等)に叩かれるのが怖いので、行動と言動に関してささやかな自重をしてきました。
 しかし、そのような心の中の枠を思い切ってはずす時期に来たのではないかと思っています。今後は自分の信念を大切に、しっかりと言いたいことを言い、のびのびとやりたいことをやるような方向に、軌道修正をしていきたいと考えています。

 今月上梓する予定の『チェンジ・マネー お金の価値を変えるのは日本だ』(きれい・ねっと はせくらみゆきさんとの共著)の中で、いくつか刺激的な話題を取り上げました。原稿を書き進めるうちに、「こんなこと書いたら捕まってしまうかも?」と逡巡するようなこともありました。その時に、父が夢の中で、「心配ないから、書いたらいい。お前が失うものなどないようになっているから大丈夫だ。もし捕まっても徹底的に抵抗すればヒーローになって本がベストセラーになるから、却っていいかもしれないぞ」と、父はそう言って笑っていました。
 父の言葉は、一見豪放磊落な放言にも聞こえます。しかし、その意味を改めて考えてみると、「よいと思うことは決心して進みなさい。そうしないと人間として大成することはできない」という教えを、新たな形で示してくれたように思います。
 死ぬことや地位を失うこと、後ろ指を指されること、お金を失うことを怖がらなければ、何でもできる。心の中の不要なこだわりやこわばりを手放し、根っこをシンプルにする。その中の規範のバランスはまさに舩井理論の「自然(宇宙)の理」に通じることだと言えるのでしょう。

 このコラムで毎週、父が夢枕に立つエピソードを書いていると、さまざまな反響があります。「舩井先生らしい言葉ですね。声が聞こえてくるようです」というような共感をいただくこともあれば、「単なる妄想だ」「自分の潜在意識が語りかけているに過ぎない。そこにあなたが後付けで自分の都合のいいように正当化したものだ」というお叱りもいただきます。どちらも、とてもありがたい貴重な意見と受け止めさせていただきたいと思います。
 夢枕に立つ、父の言葉をやみくもに鵜呑みにするのではなく、きちんと自分の物差しで冷静に検証し、自分を制御していかなくてはならないと、いつも肝に銘じています。ただ、「子を思う親の心」の目に見えない精神的なつながりは、数々の文学作品にも登場しますし、現実の災害の時に、「危機一髪で耳元に親の声が聞こえた方に逃げたら助かった」ということは、古今東西珍しいことではないようです。
 そういう意味では、舩井幸雄の息子であるということは、私の最大の既得権益なのかもしれません。これは手放さないでしばらく使わせていただこうと思っています。父の遺してくれた大切な教えを、有意の人々に本質的に伝えていかなくてはならないという役目が私にはあるのです。大事なのは、この既得権益に感謝して、しかし決してそれに甘んじず、責任を持って生成発展していくことなのでしょう。

 西郷隆盛の「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困るもの也。この始末に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業は成し得られるなり」の精神にとても惹かれます。「西郷南洲遺訓」の中の言葉ですが、「無私」であることの大きな力を、西郷は私たちに教えてくれます。いまこそ、この覚悟を肚に落として、新たな気持で進んでいきたいと思います。
                                            =以上=

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