トップが語る、「いま、伝えたいこと」
株式会社本物研究所という、少し変わった名前の会社を長く経営してきました。
「本物研究所」。
あらためて文字にしてみると、なかなか大胆な社名です。
では、そもそも「本物」とは何なのでしょうか。そんなことを、最近あらためて考えるようになりました。「いまさらですか?」と言われてしまいそうですが、これが考え始めるとなかなか深いのです。
本物と偽物。
以前なら、その境界線は比較的わかりやすかったように思います。
本物の絵画と贋作。
本物のブランド品とコピー商品。
本物の宝石と模造品。
ところが、AIがものすごい勢いで進化しているいま、この「本物と偽物」の境界線が急速に曖昧になってきました。
AIがつくった写真は、本物の写真とほとんど見分けがつきません。
AIがつくった文章を読んで、「いい文章だなあ」と感動することだってあります。
音楽も、映像も、声もそうです。
少し前までなら、「これは人間にしかできない」と思っていたことを、AIはいとも簡単にやってのけます。
では、AIがつくったものは「偽物」なのでしょうか。私は、そう単純な話ではないと思っています。むしろAIの登場によって、私たちは初めて本気で、「本物とは何なのか?」
と問われ始めたのではないかと思うのです。
私が「本物」という言葉を考えるときは、いつも舩井幸雄のことを考えます。
舩井は、「本物」という言葉をとても大切にしていました。
世の中がこれから大きく変わっていくなかで、本物が残り、本物が支持され、本物の時代になっていく……。そんなことを何度も語っていました。
では、舩井幸雄にとっての「本物」とは何だったのでしょう。
私は、単に「品質がいいもの」という意味ではなかったと思っています。
もちろん品質は大切です。しかし、それだけではない……。
自然や人に無理をかけない。
使う人を幸せにする。
つくる人も幸せになる。
長く付き合うほど、そのよさがわかってくる。
そして、世の中全体を少しよい方向へ動かしていく。
舩井幸雄が惹かれた「本物」には、そんな共通点があったように思います。
だから、舩井が「これは本物だ」と言うとき、商品のスペックだけを見ていたわけではありません。「これは世の中をよくするだろうか」という、もっと大きな物差しで見ていたのではないでしょうか。
ここが、とても大事だと思うのです。
では、本物かどうかは、いったい誰が決めるのでしょう。
専門家でしょうか?
メーカーでしょうか?
研究者でしょうか?
口コミでしょうか?
インフルエンサーでしょうか?
それとも、本物研究所でしょうか?
私は、最終的には「時間」が決めるのだと思っています。
一時的に売れるものはあります。
一時的に注目される人もいます。
一時的に「すごい!」ともてはやされる情報もあります。
けれども、本当に価値のあるものは、時間が経っても価値がなくなりません。むしろ、時間が経つほど、その価値がよくわかってくる……。
人間も同じですよね。
最初はとても立派に見えたけれど、長く付き合ってみると「ちょっと違ったな」という人もいます。逆に、最初は目立たないけれど、何年、何十年と付き合ううちに、「この人は、本当に信頼できる人だな」とわかってくる人もいます。
本物とは、ある意味、「時間」という試験に合格したものなのかもしれません。
そして、AI時代にはもう一つ、大切になることがあると思っています。
それは、「何を言ったか」以上に、「誰が言ったか」が問われる時代になるということです。AIに「感動的な文章を書いてください」とお願いすれば、それなりに感動的な文章を書いてくれます。「経営者らしい挨拶を書いてください」と頼めば、立派な挨拶文もつくってくれます。私自身もAIを使いますし、その能力には驚かされることばかりです。
でも、だからこそ思うのです。同じ言葉でも、誰が言うかによって、まったく重みが違うものです。苦労した人が語る「大丈夫だよ」と、何の経験もない人が語る「大丈夫だよ」は、同じ言葉でも違います。失敗した経営者が語る「挑戦しよう」と、教科書を読んだだけの人が語る「挑戦しよう」も違います。言葉の後ろには、その人が生きてきた人生があります。AI時代になればなるほど、この「言葉の後ろにある人生」が価値を持つようになると思っています。これはAIには簡単につくれません。
これから世の中には、「本物らしいもの」が猛烈な勢いで増えていくでしょう。
本物らしい文章。
本物らしい映像。
本物らしい専門家。
本物らしい商品。
本物らしい会社。
だからこそ、私たち自身の「見分ける力」が、これまで以上に必要になります。
では、どうやって見分ければいいのでしょうか。
誤解を恐れずに表現するとすれば、私は、そんなに難しく考えなくてもよいと思っています。
たとえば、その人は、言っていることと、やっていることが一致しているだろうか?
その商品は、売れればそれでいいという発想でつくられていないだろうか?
その会社は、お客さまだけでなく、社員や取引先も大切にしているだろうか?
短期的な利益だけでなく、10年後、20年後のことまで考えているだろうか?
そして何より、それによって、人や社会は少し幸せになるだろうか?
私は、この問いがとても大切だと思います。
考えてみれば、「本物研究所」という名前は、とても重たい名前です。自分たちで「本物」と言ってしまっているのですから……。だからこそ、私たちは「これが本物です」と断定する会社ではなく、「何が本物なのかを、ずっと考え続ける会社」でなければならないと思っています。
創業10年目に、本物研究所は「本物」を“ほんもの”と意図的に表記することに決めました。“ほんもの”とは、舩井が定義した「本物」を基本とし、そこに“私たち”がこれまでも求めてきた領域を具体的に表現し、重ね合わせています。商品はもちろんのこと、サービス、情報、人財、場、そして夢……を含めて、新しい定義としての“ほんもの”を世の中にお伝えし、広げていくこととしたのです。
さて、昨日まで本物だと思っていたものについても、新しい事実がわかれば、もう一度考えてみる、自分たちの常識を疑ってみる、新しい技術にも目を向ける、新しい考え方にも耳を傾ける……。そのうえで、自分たちなりに調べ、体験し、考え、判断する……。
「研究所」という言葉が社名についている意味も、実はそこにあるのかもしれません。
舩井幸雄からは教えてもらえなかったけれど、あらためてそう思えるのです。
完成しない。
決めつけない。
常に研究する。
これは、いまの時代にとても大切な姿勢だと思います。
私はAIの進化を、それほど悲観的には見ていません。むしろ楽しみにしています。AIによって、これまで人間が膨大な時間を使っていた仕事が、一気に効率化されるでしょう。
新しいアイデアも生まれるでしょう。医療や教育、環境問題など、さまざまな分野で大きな可能性があります。だから、「AIか、人間か」という二者択一ではないと思っています。AIにはAIの得意なことをやってもらえばいい。そのかわり人間は、「何のためにやるのか」を考える……。AIが「How」をものすごい速度で答えてくれる時代だからこそ、人間は「Why」を考える……。
何をつくるのか?
誰を幸せにしたいのか?
どんな未来をつくりたいのか?
そこに、人間の仕事が残るのだと思います。
ところで、舩井幸雄が生きていたら、いまのAIをどう見たでしょうか?
そんなことを、ときどき想像します。
おそらく、かなり面白がったのではないでしょうか。新しいものが大好きな人でしたから、誰よりも早くAIを使っていたかもしれません。そして、たくさん試したあとで、
「佐野くん、これからはますます本物の時代になるよ」
そんなことを言ったような気がします。
AIが進化すればするほど、「“ほんもの”らしいもの」は簡単につくれるようになります。だから逆に、“ほんもの”の価値が上がります。
本当に信頼できる人。
本当に人を幸せにする商品。
本当に社会をよくしようとしている会社。
そして、自分自身の言葉で、自分自身の人生を生きている人。
そんな存在が、これまで以上に求められる時代になるのでしょう。
では、“ほんもの”は誰が決めるのか。
専門家でも、AIでも、ましてや誰か偉い人でもありません。最後は、一人ひとりが、自分の感性と経験と良心を使って決めていくものなのだと思います。
そして、その判断が正しかったかどうかを、最後に「時間」が教えてくれる……。
AIによって、何でもつくれる時代になりました。だからこそ、私たちはもう一度、「これは、本当に人を幸せにするのだろうか」と問いかけたいと思います。
その問いを忘れないこと。
それこそが、AI時代に「本物」を見つける、もっともシンプルな方法なのかもしれません。
感謝
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役会長ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 あたみ・パンダの森ほいくえん 学園長 株式会社ヴォイス 代表取締役会長 他 1964年8月5日、大阪生まれ。大阪府立北野高等学校、関西学院大学法学部政治学科卒業。 大学卒業後13年間、私立中高一貫教育校の英語科教員として従事。2001年4月、株式会社船井総合研究所に入社。舩井幸雄より「人づくり法」の直伝を受け、企業幹部向け研修「人財塾」として体系化、その主幹を務め、経営者向け、社内研修向けに150回以上の講演、研修を実施した。2003年4月、株式会社本物研究所を創設し、代表取締役社長(現在会長)に就任。商品の「本物」、技術の「本物」、生き方、人づくりの「本物」を研究、開発し、広く啓もう、普及活動を行う。また、2008年にライフカラーカウンセラー認定協会を、2012 年5月には株式会社51 Dreams’Companyを、2015年9月に株式会社51コラボレーションズを設立。(2023年本物研究所と合併)さらに、2015年1月、舩井幸雄の思想、哲学を世に広めるために、公益財団法人舩井幸雄記念館を設立し、代表理事となる。2021年2月には、株式会社51メディカルを創業。そして、2022年11月、小規模保育事業B型として、「あたみ・パンダの森ほいくえん」を設立。学園長に就任。 2026年6月にヴォイスグループ5社を経営統合し、代表取締役会長に就任。現在に至る。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく 幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた 船井幸雄のすべて』(成甲書房)、『本物の法則』(ビジネス社)※船井幸雄との共著、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(きれい・ねっと)※舩井勝仁との共著、『幸せになる働き方の法則』(創藝社)、『舩井幸雄の魂が今語りかけてきたこと』(ヒカルランド)※矢山利彦氏、舩井勝仁氏との共著がある。 講演は、年間講演、研修多数。会社経営、学校経営、幹部育成、健康、食育、カウンセリング、話し方など、幅広いテーマで多数の講演を行っている。 |











株式会社船井本社 代表取締役社長



















