“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2014.04
株高は終わったのか?

●2014年初から低迷する日本株価
 年初から株価の動きがぱっとしません。「バイ・マイ・アベノミクス」と外国人投資家に対して日本株への投資を呼びかけ、昨年12月の大納会には証券取引所に出向いて、「2014年もアベノミクスは買いですよ」と力強く株価の上昇を宣言した安倍首相でしたが、2014年に突入した途端に株価の低迷が始まってしまいました。
 いよいよ4月から消費税が引き上げられてその影響が懸念され、昨年上げ過ぎた株式市場が今年も勢いよく上昇を続けるのは、あまりに調子が良すぎる感じで、今までの日本経済の推移を考えれば、この辺でまた失速の可能性もあるのでは、と勘繰ってしまいます。

 そこまで悲観的に考えなくても株価が勢いよくこのまま上昇というより、株の世界では何か落とし穴がありそうな気がするものです。
 現に、まわりを見渡せば、解決の糸口の見えないウクライナ情勢、お隣の中国における不動産バブル崩壊への懸念、また円安になったとはいうものの日本の貿易赤字体質は定着して一向に輸出は増えません。多少物価が上昇してきたようですか、給料は期待ほどには増えないという気持ちでしょう。
 株価の上昇が止まったのと同時に、どうもはっきりしない経済動向に一抹の不安を感じないわけにもいきません。おそらく日本の多くの人達は、一応アベノミクスで順調に経済は推移していくとは思うが、あまり楽観的になり過ぎてしまうのもまずい、と思っていることでしょう。
 こうして多くの人々は株価や景気の動向などを注意深く見ながら、今後の推移を見守って自らの方針を決定していこうと思っているかもしれません。日銀や政府は日本経済の順調な推移を強調しているのだから、それは一応信じてはいるのだが、反面、半信半疑の気持ちもぬぐえないといったところでしょうか。
 かような情勢で今後の株価の動きに対しても一進一退を繰り返しながら、中長期的には上がっていくことになるだろう、となんとなく思いながらも、やはり半信半疑という気持ちかと思います。人間はどうしても、自分の置かれた環境、自分が目にする情報、マスコミの雰囲気などから大きな影響を受けます。その意味では、現在は先行きに対して不透明感が急速に漂ってきていると思えます。

●昨年5月から、実は株価は上がっていないが
 株価が上がったと言っても、実はこの5月になると、昨年比で全く上がっていないという状況になるのです。
 日経平均は、野田前首相の解散宣言のあった一昨年11月から昨年5月まで8,000円台から15,900円まで8ヵ月で8割も上昇しました。この原稿を書いている4月末の日経平均は14,500円近辺ですから、この1年を振り返ってみれば、昨年5月の15,000円台と比べてこの1年間、株価は全く上がっていないのです。

 昨年5月以降、株式市場に投資した投資家は、一般的に考えれば、ほとんど儲かっていない。かえって損失を被っているという状態です。
 今後、株価は本当に上がっていくのでしょうか? もうすでに上がり過ぎたのではないでしょうか? 株価が爆発的に上がっていくような景気状況なのでしょうか? 一部の報道で懸念されているように、再び失速してしまうのではないでしょうか? 先が読めない時代と言われますが、どうしても将来に確信が持てないところです。

 これら一般的なムード、雰囲気に対して私は、株価については一貫して強気で発言してきました。株価は常に動いていますし、様々な状況に左右されます。
 株式市場は「経済の鏡」と言われますが、そういう観点で株価を追っていても、あまりに目まぐるしい変動に振り回されてしまいます。
 また昨今の日本株は、ヘッジファンドの暗躍によってその変動率が異様に大きくなっています。これら諸情勢はあるのですが、私は株式市場の先行きに対しては強気で、考えは全く変わらないのです。
 私は日本中が悲観に染まっていた2012年6月、当時日経平均は8,000円台でしたが、『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を出版し、誰よりも早く株式市場が本格的な上昇に転じることを予見、世に問いました。この本の副題は<かつてこれほど中央銀行に依存した経済があっただろうか!?>と日銀によるマネーの未曽有の印刷が株式市場の爆発的な相場を引き起こすと書いたわけです。また同時に、2011年10月末の75円台で円相場は歴史的な天井を打ち、今後は40年に渡る円高トレンドが逆転して円安トレンドに突入したと述べてきました。さらにその後、『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を2013年2月に出版しましたが、安倍政権の誕生により株高円安トレンドが加速していくさまを書き、さらに昨年9月末に出版した『2014年 インフレに向かう世界』(徳間書店)の副題は「だから株にマネーが殺到する」ですが、ここでも株高、円安、並びに日銀による止まらない金融緩和の継続について述べてきました。終始一貫して私は2012年半ばから日本における株高、円安、そしてインフレへの歴史的な流れを主張してきたのです。

●日本の景気を支えている存在は……
 一方で、いずれこの結末として日本国債の暴落は避けることはできない、これも一貫して主張しています。国債の暴落というと言葉がきついですが、要は金利が上がるということ、そして大きく金利が上がるということ、これは国債の暴落と同意語です。専門的ですが、国債などの債券は金利を売買していると考えればよく、金利が急騰するということは国債が暴落するということになります。
 日本は今、国を挙げてデフレからインフレへ持っていこうとしていますが、インフレになるということは債券、いわゆる国債などの値段が下がる(金利が上がる)ということであって、仮に止まらないインフレが来ればそれは国債暴落を意味します。よく経済解説などで評論家が「金利急騰の危険性がある」と述べていますが、これは言葉を変えれば「国債暴落の危険性がある」ということであって、国債暴落だと言葉がきついので金利急騰と表現されている一面もあるのです。そういう意味では国債暴落の危険性など日本中随所で発言されているわけで、私だけが主張していることでもありません。

 株式市場ですが、まず、なぜ今年になって上がらないのか、その原因を探ってみましょう。
 これは非常に単純で、外国人投資家が買ってこないからなのです。昨年1年間、外国人投資家は日本株を15兆円以上買い越しました。一方で私は、日本では「株売却ブーム」と言ってきましたが、日本の投資家は、誰ひとり株式を買い越すことなく売り続けてきたのです。
 昨年1年間、個人投資家は8兆7,000億円、金融機関は5兆8,000億円、生損保は1兆500億円、年金基金は3兆9,600億円売り越しです。外国人投資家だけが日本株を買い、その力で日本株は上がったのです。その日本株上昇の立役者の外国人投資家が、買うどころか今年になって2兆円弱も売っているのですから、これでは日本株が上がるわけがありません。
 忘れてはならないことは、日本株の上昇は外国人投資家頼みであり、日本の景気が株高で潤ったことを考えれば、日本の景気のカギを握るのは外国人投資家で、まさに安倍首相が「バイ・マイ・アベノミクス」と叫んだように、外国人投資家に絶えず発信して投資を促す必要があるのです。これが実情です。
 いずれ日本人が本当のインフレの到来に驚き、資産の目減りを恐れて、われ先に争って株買いに走るときがくると思っていますが、現在はまだ外国人投資家頼みです。

●デフレからインフレへの変わり目のいま、政府の動きに注意
 根本的に理解しなくてはならないことは、日本国はデフレからインフレへと大きく舵をきったということなのです。これは国策の大転換なのです。ですから日銀は大胆な異次元緩和を行ったわけです。
 また年金基金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、このほど運用委員会の委員を大幅に入れ替えました。これは今後、GPIFが運用方針を大きく変えて、ポートフォリオを入れ替えて保有している国債を売却して、株式を購入していくための最終的な準備なのです。
 そしてこのデフレからインフレへの大転換の方針の下、安倍政権は手段を選ばぬ不退転の覚悟で臨んでくることを意識していなければなりません。2年で2%というように、今まではなかった大胆な政策を行ってきた日銀と同じく、安倍政権はデフレからインフレに持っていくためになりふり構わず何でも行ってくるということなのです。これは政権の浮沈を賭けた一大政策です。
 その主柱は表立って発言はしませんが、株高を演出することです。株高が止まればすべては機能しません。

 考えればわかりますが、景気がどうしてよくなったのか?
 株高が起こったからでしょう。円安になったからでしょう。すべてマネーを無尽蔵に印刷することによってもらしたわけで、この金融緩和政策は安倍政権の肝なのです。
 なぜ、年金基金で株を買うのでしょうか? もちろん株を上げるためが一番の目的ですが、実際、日本では政府が目指すインフレに持っていくことを実現させる予定なので、人々の年金を運用する基金も株式購入を拡大してインフレに備え、それと共に暴落する国債を売却していかないと危ないと考えているからなのです。国債など債券は、金利が一定期間固定されているのですから、例えば30年物国債の金利1.7%は、30年間、如何なる金利情勢になろうとも金利は1.7%に固定されるのです。これでは5%を超えるインフレがくれば一たまりもありません。全く価値のない紙となってしまうのです。
 また、日本政府はデフレからインフレへ誘導する中で人々のデフレマインドをぶち壊すことも考えています。日本人は資産運用において、あまりに保守的でリスクを嫌いすぎるのです。デフレからインフレへの転換の中ではこのような日本人の持つ臆病な資産運用マインドを破壊させる必要があります。諸外国と同じように多くの国民がリスクを取って株式を買う、その結果インフレに対応できる、こういう一大転換を行おうとしています。その一端が昨年から始まったNISA(少額投資非課税制度)の導入です。国はこうして、国策として徹底的に国民に株式購入を陰に日向に誘導していることを忘れてはいけません。

 マネーを幾らでも印刷すれば、究極的に国はインフレを作ることはできるのです。それによって膨大に膨れ上がった国債という借金もインフレの到来によって実質返済可能となるのです。2%の物価目標とか、マイルドな景気回復などという政府のアナウンスする官制情報を信じていてはダイナミックな時代の変化に取り残されることは必至です。株が上がらなくなったと思って、これで株高、インフレ誘導が終わりと思ったら大間違いです。
 安倍政権は今年7−9月期のGDPをみて、来年の消費税の再引き上げを判断します。
 ここにきて消費税引き上げの反動で景気が落ちてきていますが、このような状態を7−9月まで許容することなどできないのです。ましてや株安など断じて許容できません。あらゆる手法を駆使して景気拡大に打って出るに相違ないのです。これこそ時代の波、デフレからインフレへ動く時代の必然なのです。多くのエコノミストやアナリストは今後の物価上昇の行方や株高の到来にも懐疑的です。彼らは時代の勢いや歴史のダイナミックな動きを理解していない。そして安倍政権や日銀の不退転の覚悟がわかっていない。安倍政権も日銀も後ろを振り返りません。インフレに向かって暴走列車のように前に向かっていくしかないのです。

 一昨年の11月からわずか8ヵ月で日経平均が8割も上昇したことは述べました。これは朝鮮戦争以来のことだったのです。舩井幸雄先生が常におっしゃっていたことは時代の変わり目には「びっくり現象」が起こるということです。株価が8ヵ月で8割も上昇したのは、あの1950年の朝鮮戦争以来のことなのです。このような異常な株高の動きが平時で起こるわけもないのです。ダイナミックな変化を感じ取らなければなりません。時代の変化は人々の想像を絶するほどに急激で激しいのです。そしてそれを感じて実行できるものだけが明日の時代を作る権利を有するのです。
 株高が終わった、インフレは来ない、などとエコノミスト、アナリストの多数意見に同調していては敗残者となることでしょう。浮き草のように株が上がったら「やっぱり株は上がるな、インフレだ」、下がれば「株は難しい、やっぱり先行きはわからない」と相場に右往左往していては永遠に迷い子です。腹を決め、来るべきインフレを待って、時代に備えるべきなのです。

14/12

アベノミクス

14/11

バンザイノミクス

14/10

新刊『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(舩井勝仁との共著)まえがきより(※目次、舩井勝仁のあとがきも含む)

14/09

加速する物価高

14/08

新冷戦という脅威

14/07

新刊『株は再び急騰、国債は暴落へ』まえがき より

14/06

深刻化する人手不足

14/05

何故ドルなのか

14/04

株高は終わったのか?

14/03

ウクライナを巡る暗闘

14/02

中国ショック

14/01

ハッピー倒産ラッシュ


バックナンバー


暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/

Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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