船井幸雄グループ社員の、日々もの思い、考へる
このページは、船井幸雄グループスタッフによるコラムページです。
日々仕事をする中で感じていることなどを自由に語ったページです(このページでは、便宜上、船井幸雄を“船井会長”と呼び、敬語表現を使わせていただいています。ご了承ください)。
名前:高岡 良子
このところ、立て続けに、東京を離れて自然のなかで過ごす機会がありました。
ひとつは、大分県中津から程近い耶馬溪(やばけい)です。豊前海(ぶぜんかい)で取れる鱧(はも)料理で有名な老舗料亭「筑紫亭」の名物女将、土生(はぶ)かおるさんの御案内で、108年前の創業以来の古式ゆかしい筑紫亭のたたずまいと、新鮮な鱧をあじわったあと、耶馬溪(やばけい)を訪れました。
耶馬溪一帯の森は、中津出身の福澤諭吉が原生林のままの美しい広葉樹林を保護するために、300万部のベストセラーとなった『学問のすゝめ』の印税をつかって一帯の山を買い取ったおかげで残された貴重な森で、この季節、緑陰を滴(したた)らせていました。この豊かな森から流れ出る山国川(やまくにがわ)の水が豊前海に注がれて、身の柔らかな品のよい味の鱧をはぐくむというのです。海の恵みの豊かさは、流れ注ぐ川の源流である森の豊かさに起因する、という生態系が生み出す「ほんもの」を考えさせられました。
つぎは、北海道釧路湿原の人工物が全くない大自然です。梅雨のない北海道としては珍しく雨が多かったせいで増水した釧路湿原は、当日は、30度近い真夏のような日差しとなり、みずみずしい新緑の色を保ったままのさわやかな樹木と草々でおおわれていました。生まれたばかりの子ジカや、エゾシカの群れを何度も目にしました。中学2年の娘とネイチャーガイドの橋口さんの操るカヌーに乗り、湿原の探索と、屈斜路湖から流れ出る釧路川上流の川くだりをワクワクしながら堪能しました。道路以外の人工物が全くない、という光景は、ほんとうにすばらしいものです。
また、自然と一体になって、動植物と調和し共生してきたアイヌの人々の心にもふれることができました。アイヌという言葉は、「にんげん」を意味する言葉で、本来誇り高い言葉なのですが、明治以降の心無い人々の差別によって、現在では「安易に口にしてはいけない言葉のようになってしまっている」との悲しい話を耳にしました。私は9歳のとき、偶然の機会にアイヌ民族の記録フィルムを見た日から、アイヌ文化には、ずっと心惹かれるものを感じ続けてきました。すべての動植物とつながっていることを認識し、すべての存在に尊さを感じてきたアイヌ民族の人々の面立ちは、明治以降に残された写真などを見ても、皆たいへん気高い雰囲気を発しています。私たち日本人の心のなかにも、原日本人とも言われるアイヌ民族の「自然と共生する心」は脈々と息づいているように感じます。
釧路と阿寒で出会った、アイヌ民族の心を受け継いだ二人のすばらしい方たちと、私と娘は今回、友だちになりました。一人は、塘路(とうろ)の諏訪良光さん、もう一人は、阿寒の藤戸竹喜(たけき)さんです。諏訪さんは、ムックリ(口琴)の名手でトンコリという楽器のすぐれた製作者でもあり、藤戸さんは、世界的に有名な木彫家です。 おふたりの、人間愛にあふれたお言葉と存在感につつまれて、心があたたかく、あつくなりました。
そして三つめは、富士山の懐(ふところ)に抱かれた河口湖の近くにある赤松の原生林です。東京から2時間足らずで来られるところとは思えないほどの、清明な空気と野鳥の澄んだ声、赤松の森から漂う深々とした香り……この森につつまれ、深呼吸するだけで、心と体が生き返るようでした。
これらの経験から私が感じたことは、「人工物のない自然こそが、ほんものの満足を生み出す」ということでした。
中津の鱧料理しかり、北海道の自然とそこに住まう人たちの心栄えがしかり、富士山のふもとの赤松の森がまたしかり……です。
船井幸雄は、「ほんもの」という言葉が今のように使われだす前から、「ほんもの」の価値を認識し、ほんものが持つすばらしさを説いてきたわけですが、人工物であふれた現代の物質文明のなかでは、このような「ほんもの」を生み出す母体こそが、「自然」なのではないでしょうか? こころに深い満足感を与えられるもの――それがほんものです。
「自然」「自然と調和するもの」に勝る「ほんもの」はない、とさえいえるのではないか……この3つの体験から得た私の感想です。
お知らせ : 『ザ・フナイ』読者の皆さまと、連載・特集に御寄稿くださる皆さまとの交流・勉強会「ザ・フナイのつどい」を企画しています。
第1回目は、河口湖・赤松の原生林のなかでおこなわれる「緑陰セミナー」。8月21〜22日に1泊で、森の中の別荘風の建物を借り切って、古歩道(フルフォード)ベンジャミンさんの最新情報に耳を傾け、とことん語り合います。
第2回目は、2009年3月号に御寄稿くださいました筑紫亭の土生かおるさんと、築108年の筑紫亭と鱧料理を五感で味わい、中津の文化・歴史と自然を堪能する勉強会です。10月中旬を予定しています。
くわしくは、椛D井メディア0120-271-374まで。
ファクス:03-5769-3200/E-mail:info2@funaimedia.com でも受け付けています。
1周目:「淀のお墓と赤ちゃんの泣き声 (テーマ:私からみた船井幸雄)」
2周目:「心に花園を (テーマ:ひそかに続けている私の習慣)」
3周目:「健康のクセづけについて (テーマ:船井幸雄グループに入って変化したこと)」
4周目:「大事にすると安心できる (テーマ:船井会長と山本富士子さんに学んだこと)」
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10周目:「求めよさらば与えられん、叩けよさらば開かれん(私から皆さんにお伝えしたいこと)」
11周目:「日の出の効用(テーマ:私から皆さまにお伝えしたいこと)」
12周目:「忙しいときこそ (テーマ:船井会長や娘の本から教えられたこと)」
13周目:「思考エネルギー (テーマ:私から皆さまにお伝えしたいこと)」
14周目:「神さまは私の恋人 (テーマ:私から皆さまにお伝えしたいこと)」
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16周目:「結婚20年を振り返って (テーマ:私から皆さまにお伝えしたいこと)」
17周目:「初めてのインド旅行 (テーマ:私から皆さまにお伝えしたいこと)」
18周目:「過去の断裂を修復して (テーマ:最近私が感じたこと)」
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