トップが語る、「いま、伝えたいこと」

　熱海に越してから新幹線「こだま」に乗る機会が増えました。こだまに乗っていると、各駅で「ひかり」や「のぞみ」に追い抜かれます。今まで私はおよそ１５年間、東京に住んでいたので、ほとんど「ひかり」や「のぞみ」に乗っていました。鈍行の電車（こだま）に乗ってみて初めはおどろきました。東京から熱海まで行くのに、新横浜で１本、小田原で２本くらいひかりかのぞみに抜かれるのです。普通、１番早い電車に乗ると、品川から熱海まで２９分で到着するのですが、「こだま」に乗ると大体４０〜５０分はかかってしまいます。その時間の差が、最初は無駄な時間のように思え、いらいらしました。それに追い抜かれるのは、おもしろくなかったのです。
　ですが、慣れてくると、鈍行も案外いいなと思うようになりました。移動時間を長く取れるおかげで、「鈍行人生」というか、その無駄と思っていた時間を過ごすのがうまくなりました。「考えごと」をするようになったのです。いままでは考えるといってもどんなことも本当に瞬間的答を出していましたが、熱海に転居してからは、大事なことをゆっくり考える癖がついてきました。たとえば「私の今生の使命と役割は？」とか、「世の中の大きな流れは？」といったことです。
　また、いままでいかに「考えてこなかったか」にも気づきました。「考える」というのは理性の問題です。私は永年、直感の人生を送ってきました。しかし最近では、考えることによって少し理性的になってきたような気がします。いままでは感性と直感で１日に５０も１００も意思決定をしてきたような「直感＆感性人生」でした。ゆっくり考えることは、まったくなかったように思います。
　おかげで、人間の特性である考える良さに気づきました。感性にしたがってあるがまま・なるがままに生きるというのが私のモットーです。これでそんな大きな失敗もありませんでした。それはそれでよかったと思っています。
　ですが、人間には理性という長所があります。せっかく人間として生まれてきたのですから、この長所を活かしはじめたのですが、分ったことは確信を持てるようになったことです。考えてみればこれまでの私は、直感と理性のバランスが取れていなかったようです。いまそのバランスがとれ始めたように思います。これからは多分、失敗は無くなるでしょう。
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