トップが語る、「いま、伝えたいこと」

　わたしは、長年経営コンサルタントを業としてきましたので、いろいろなタイプの経営者に出会いました。すべてのことをお金に換算してしか考えられない人も多くいました。彼らはお金を生むのが仕事です。ですから、一時といえどもお金を生まないところにお金の投資をしたり、お金の動きを停止させるのはいけないという発想です。
　たとえば不動産にしても、自宅を作ってもお金にはならない。このようなところにお金を使うのは１番ムダだと考えます。たしかに、それはその通りだと思います。多くの経営者がそういう発想で生きています。お金のためには何を犠牲にしてもかまわないという発想の人には慣れてはいたのですが、最近ではそれは少し違うのではないかと、感じるようになりました。
　人それぞれ価値観が違いますから、なんでもいいのかもしれませんが、もっと根源から考え、意思決定をしたほうがいいようだと思うようになりました。根源的にものを考えると、余裕が必要だと思えてきます。それで調和が取れるからで、世の中で一番必要なのは生成発展と調和だからです。
　先日、あるホテルに宿泊しました。そこは全く客室に余裕がありませんでした。ビジネスで訪れた人がただ眠れたらいいという目的だけに造られたホテルでした。例えば、これはあっても無くてもビジネスには関係無いのですが、少し庭があったりするとその場の雰囲気が全く違ってきます。自宅でいえば、応接間というのは、無くても生活はできます。それでもやはり、ないよりはあったほうが「ゆとり」があっていいものです。　人生も同じで余裕のあるほうがいいと思います。機能本位で余裕が無く、能率追及型オンリ−の生き方は、「自然」の子である人間には合わないと思うのです。
　コンサルタントの立場から見て、一つの目的に向かって経費などをとことん切り詰めて…というのが１番良い経営の方法なのですが、それだけでは全く余裕が持てません。　やはりこれからは多少は余裕も持てるような経営体をつくるのがいいように思います。個人を見てみると、一人一人が一生懸命悩み、悲しみ、また喜び、生きるようにできています。このことからも造物主は本当に上手に人や世の中を創ったと実感します。
　各自がそれぞれの立場によって様々なことを経験し、目的を持って生きることは大切なことですが、しかし最終的には、もっと根源的にみて人はどう生きるのが１番いいのか、何が１番大事なのか、本当の意味での自然の摂理はなにかを考えながら経営も人生もおくった方がいいと思うのです。
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