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今月2日のこのページに「いつ脱稿できるか分らない本」という文章を書きましたが、先週脱稿できました。われながらびっくりしています。
題名は『激変時代 いよいよ到来。これからの「にんげん」のあり方』くらいにして徳間書店から出す予定ですが、発刊を楽しみにしておいてください。
おそくとも6月中には書店に並ぶと思います。
つぎはその第五章の一部です。これは大事なことなので、ぜひお読みください。
第一章で紹介したKさんが、レターをくれました。それをここに紹介します。私はこの文章の内容を理解し、納得し、正しいと確信も持てますので、これを本書だけでなく、私のホームページ上にも紹介しようと思っています。そうなると私の責任になります。
最近の市場について
3/17のベアスターンズの破綻を底にして、日経平均は11,691円から、5/7の14,208円までおよそ2ヶ月弱上がり続けましたが、いよいよ戻り高値をつけたようです。最近では、かなり楽観的な市場関係者のコメントが目立ってきました。日く〈金融危機は峠を越えた〉、〈すでに年後半の景気減速は3/17の段階で相場に織り込まれ、相場も景気も底を打った〉、との考え方が主流となりつつあり、今後は回復をみるだけ、という見解です。また、仮に景気は今年くらいはもたついても、株式相場はすでに底をつけた、との主張です。そのデータとして、昨年12月からの上昇率は日本の相場が各国と比べても、抜け出ている、との事です。確かにこの2ヶ月弱の上げは、率にして21.5%で極めて大きいものでした。しかし、世界的な株価暴落の波乱の中で昨年からあれだけ大きく崩れた日本の株式市場が本格的に戻り基調に入れるものでしょうか? どんな相場も一本調子で動くものではありません。昨年10月から5ヶ月下げ続けた相場がほんの2ヶ月弱戻しても、大勢下げ相場の中の単なるあや戻りであることは明らかだと考えます。相場というのは大きなトレンドが発生したら、ちょっとやそっとでは変わるものではありません。ましてや今回は世界的な変動です。証券関係者や強気のエコノミスト、アナリストの考えは全く理解できません。まさに5/9のSQに向けられた上昇の株価操作が終了し、新たに元の厳しい下降相場へ戻ると確信しています。
この間、様々な対策がなされ、効果を奏しているものもあります。主にはFRBの政策によるものですが、検証していきます。まずは証券化商品の担保受け入れによる国債の貸し出しによる融資です。ベアーの破綻から証券化商品の投売りを恐れたFRBは住宅ローンだけでなく、現在ではその他の証券化商品の担保としての受け入れを拡大しています。これにより第2のベアーの発生は抑えていますが、肝心の住宅ローン債券の価格をABX指数でみてみますと、ダブルAクラスで20円くらい、またトリプルBクラスだと8円足らずで一向に上向く気配はありません。むしろ下がっています。またCDOの取引は、ほとんど成立しません。買い手は皆無ですから。要するに問題の先送りです。一方で、米国のSEC (証券取引委員会)がG7の要請に基づき証券化商品の保有残高や損失額の開示を義務づける方針を打ち出しました。これに歩調を合わせ、日本の金融庁も大手銀行に対して、サブプライムなど証券化商品の開示と損失の公表を要請しています。SECや金融庁が厳しく迫れば、一気に大問題が露呈します。
これに関連して、エピソードを紹介します。ドイツ銀行のアッカーマン総裁は、〈金融危機は去った〉と発言しました。またイングランド銀行(英中銀)は5/1金融安定化リポートで〈サブプライムの損失は過大評価されている〉と指摘しました。これらを受け、5/1付けのレポートでドイツ銀行の日本のアナリストは、〈中央銀行の主張を信じるべきだ。今や、米国債などの安全資産にこだわらずにクレジット資産、株式にシフトすべきである〉と書いています。
一方、ドイツ銀行はレバレッジドバイアウトローン(企業買収ローン)を550億ドル保有しています(世界総額2000億ドルのバイアウトローンの27.5%)、この内200億ドルの売却の方針を固めています。表向きの強気とは裏腹に資産売却を急ぎたいようです。また、ドイツ銀行日本支社は金融庁から証券化商品に関しての注意を受けました。同じ証券化商品を顧客によって、違う値段を指摘して損失をごまかしていた、という指摘です、要するに作った人間しか訳がわからないわけで、市場性がありませんから、簿価に基づいて顧客ごとに適当な値段を言っていたわけですが、まさに、本当にわからないわけです。正確に値段をだせ、といわれても当惑するしかないでしょう。
またFRBは一日あたりの資金供給を拡大し、月間の供給枠も拡大させました。さらには、特に欧州中銀、スイス、フランスヘの供給枠をかなり拡大させているようです。スイスには40−60億ドルだったものを120億ドルに拡大させました。どうもUBSに供給されているようです。これら一連の動きを見ますと、次なる危機は欧州から起こってきそうです。ベアーからの連鎖危機を一端は収め、さらに様々な予防策を水面下でこうじているようですが、どうも第2の問題が欧州からいきなり吹き出てきそうな雲行きです。
今まで何度も報告してきましたように、CDS(※)市場は大きな爆弾を抱えた巨大なデリバティブ市場です。もし世界の金融が破綻するような事態が起こるとすれば、ここにひびが入ったときですが、先日CDS市場の最近の想定元本が入ってきました。それによりますと、2007年6月の45兆ドルに対して、12月には何と、62兆ドルまで拡大しているとの事です。ついにアメリカのGDPの5倍に膨れ上がりました。4年間で20倍です。景気後退となれば、倒産が増加しCDS市場に影響するのは必至です。それをはっきりわかっているFRBは何とか、くい止めようとなりふりかまわず政策を出しています。また民間も一緒で〈危機は峠を越えた〉の大合唱です。ポールソン財務長官も〈金融市場は沈静化しつつある〉と発言しました。IMFの発表したサブプライムの損失100兆円はどこかに消えてしまったようです。
最近の世界中の株、為替、商品市場などは、同じように一方方向に動く傾向があります。これはひとつの巨大な資金が動く方向に引っ張られる為と考えられますが、たとえば、ゴールドマンのアナリストが原油200ドル説を発表しましたが、これなどは将来の方向を示唆した考えと思います。いずれにしても世界中の株価の戻りとドルの巻き戻しの流れは終了し、株安、ドル安、商品高のスタグフレーションの動きに戻り始めると考えています。
(※CDSとは、クレジット、デフォルト、スワップの略で、債務不履行や倒産の時に備えた保険のことです。 (船井))(転載ここまで)
いかがですか。心を引きしめて時流を読みましょう。
=以上=
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