トップが語る、「いま、伝えたいこと」
76年目の夏。
広島市長は、「平和宣言」のなかでつぎのように述べました。
「核軍縮議論の停滞により、核兵器を巡る世界情勢が混迷の様相を呈する中で、各国の為政者に強く求めたいことがあります。それは、他国を脅すのではなく思いやり、長期的な友好関係を作り上げることが、自国の利益につながるという人類の経験を理解し、核により相手を威嚇し、自分を守る発想から、対話を通じた信頼関係をもとに安全を保障し合う発想へと転換するということです。そのためにも、被爆地を訪れ、被爆の実相を深く理解していただいた上で、核兵器不拡散条約に義務づけられた核軍縮を誠実に履行するとともに、核兵器禁止条約を有効に機能させるための議論に加わっていただきたい。
日本政府には、被爆者の思いを誠実に受け止めて、一刻も早く核兵器禁止条約の締約国となるとともに、これから開催される第1回締約国会議に参加し、各国の信頼回復と核兵器に頼らない安全保障への道筋を描ける環境を生み出すなど、核保有国と非核保有国の橋渡し役をしっかりと果たしていただきたい。」(広島市HPより引用)
一方、長崎市長も、「平和宣言」で同様のことをお伝えになりました。
「日本政府と国会議員に訴えます。
核兵器による惨禍を最もよく知るわが国だからこそ、第1回締約国会議にオブザーバーとして参加し、核兵器禁止条約を育てるための道を探ってください。日本政府は、条約に記された核実験などの被害者への援助について、どの国よりも貢献できるはずです。そして、一日も早く核兵器禁止条約に署名し、批准することを求めます。
「戦争をしない」という日本国憲法の平和の理念を堅持するとともに、核兵器のない世界に向かう一つの道として、「核の傘」ではなく「非核の傘」となる北東アジア非核兵器地帯構想について検討を始めてください。
核保有国と核の傘の下にいる国々のリーダーに訴えます。
国を守るために核兵器は必要だとする「核抑止」の考え方のもとで、世界はむしろ危険性を増している、という現実を直視すべきです。次のNPT再検討会議で世界の核軍縮を実質的に進展させること、そのためにも、まず米ロがさらなる核兵器削減へ踏み出すことを求めます。」(長崎市HPより引用)
2017年7月7日、国際連合の会議は、賛成122カ国・反対1カ国・棄権1カ国の圧倒的多数で、核兵器禁止条約を採択しました。この条約は、核兵器の開発・生産・保有・貯蔵等を禁止している(第1条a)ことから、核兵器のない世界の実現に向けてきわめて重要です。
核兵器禁止条約が発効するためには50カ国の批准が必要となります(第15条1項)。
2019年3月末現在、70カ国が署名し、そのうち22カ国が批准している状況にあります。
「唯一の戦争被爆国」というナショナル・アイデンティティをもつ日本は、「核兵器を廃絶していくべきことを、世界の人々に強く訴えていく使命がある」と高らかに謳っています。ヒロシマ・ナガサキの惨劇を人類は二度と繰り返してはならないと考えているからです。
ところが日本は、核兵器禁止条約に批准はもとより、署名すらしていないのです。この矛盾をこのまま放置していてよいのか……と、怒りがこみあげてきます。
それは、端的に言うと、「核の傘をかぶって、自国の安全を確保している」からです。
もう少し丁寧にお伝えすると、1つの理由は、核兵器禁止条約は日本の安全保障にマイナスの効果をもたらす、と考えられているからです。また、同条約が核保有国と非核保有国との対立の溝を深めているという理由もあります。
つまり日本は、核兵器の脅威に対して、いわゆる「核の傘」で安全保障を確保しようとしているのです。日本にとって核の傘とは、“もし日本に核兵器を使用するのであれば、米国の核兵器で報復する”という威嚇によって、北朝鮮や中国による核兵器の使用を思いとどまらせるという試みということになります。
「唯一の戦争被爆国」である日本は核兵器の廃絶を目指しています。にもかかわらず、安全保障上の理由から核兵器禁止条約に署名していないということです。
「核兵器の廃絶を目指す」ことは「核兵器は不要である」と主張することと同じです。対して、「核の傘で自国の安全確保を試みる」こと、これは「核兵器は必要である」と主張することと同じです。つまり、日本の核軍縮・不拡散外交をめぐるスタンスは、一方で「核兵器は不要である」と主張しながら、他方で「核兵器は必要である」とも主張していることになります。したがって、核兵器の不存在と存在を同時に求めているという点において、核軍縮・不拡散をめぐる日本外交のスタンスは明らかに矛盾しているということになります。
これまで、人類の歴史は、領土の奪い合いとそのための殺戮を繰り返してきました。もうこれ以上、人が人を殺めてはいけない……。日本に投下された2つの核で、いったんは世界中の人々が同じことを心底感じたのではないでしょうか?
にもかかわらず、アフガニスタンをはじめ中東諸国、アフリカ諸国においても、いまだ争いごとや殺戮行為は繰り返されています。
そもそも、人が人を殺すための武器は必要なのか?
より精度の高い(より多くの人を殺せて、より正確に、広い地域を破壊する)武器は、そもそも必要なのか?
1人の人間として、だれが考えても答えは一つです。
「ノー! いらない!」
これだけ高度に成長した社会の中で、いまだ成長しない決定的な弱さ……。
それは、一言でいうなら「エゴ」です。
広島市長が述べたように、「他国を脅すのではなく思いやり、長期的な友好関係を作り上げることが、自国の利益につながるという人類の経験を理解し、核により相手を威嚇し、自分を守る発想から、対話を通じた信頼関係をもとに安全を保障し合う発想へと転換する」ことこそが、人類を含むすべての生命体と、地球を含む宇宙すべてを守る最良で唯一の選択であることは自明です。そして、これこそが「エヴァ」です。
核兵器禁止条約は、たとえ同条約の締約国でなくとも、締約国の会合に「オブザーバー」として出席できると定められています(第8条5項)。日本政府は、オブザーバーとして、核保有国と非核保有国とのあいだの溝と、非核保有国どうしのあいだの溝を埋めていくという、核軍縮・不拡散外交を展開すべきだと考えます。
日本は、安全保障をめぐる問題を踏まえつつも、「唯一の戦争被爆国」として、核兵器のない世界を実現しなければならないからです。
8月6日、広島にて、9日は長崎にて、原爆犠牲者慰霊平和祈念式典が挙行されました。松井一實・広島市長も、田上富久・長崎市長も、ともに読み上げた「平和宣言」には、明確に「オブザーバー」として参加し、批准を求めるメッセージが込められていました。ところが、菅首相の挨拶には一言も触れられていなかったのが、残念でなりませんでした。
広島市長は、ヘレン・ケラーさんの言葉をつぎのように引用しました。
「被爆から3年後の広島を訪れ、復興を目指す市民を勇気づけたヘレン・ケラーさんは、『一人でできることは多くないが、皆一緒にやれば多くのことを成し遂げられる。』という言葉で、個々の力の結集が、世界を動かす原動力となり得ることを示しています。為政者を選ぶ側の市民社会に平和を享受するための共通の価値観が生まれ、人間の暴力性を象徴する核兵器はいらないという声が市民社会の総意となれば、核のない世界に向けての歩みは確実なものになっていきます。」
友人で認定NPO法人テラ・ルネッサンス創設者の鬼丸昌也さんは、こう言います。
「僕たちは、微力だけど、無力ではない」
そうなんです。
皆が持てる共通した思い。
平和で安全、安心に生きられる幸せな社会の実現……。
私たちは無力ではありません。
皆の思いと行動を、平和で安全、安心に生きられる幸せな社会の実現に向けて結集できたらと切に願い、祈り続けたいと思います。
感謝
2021.08.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】核の傘でいいのか!? (※佐野浩一執筆)
2021.08.16:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】病気を治す医者になる (※舩井勝仁執筆)
2021.08.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「いま、ここに生きる!」 (※佐野浩一執筆)
2021.08.02:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】リト (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |