トップが語る、「いま、伝えたいこと」
イギリスで開催されていたCOP26(「国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議」、略称、「気候変動会議」)は、12日に閉幕の予定でしたが、1日延長となり、13日に閉幕となりました。その原因は、議長が12日朝、新たに提示した文書草案を巡って紛糾。議長国の英国は、石炭火力の段階的な廃止に強くこだわっていたのですが、インドなどの反発が強く、当初案に比べて表現を後退させた形になりました。
首脳級会合が2日目を迎えた11月2日。
日本が「化石賞」を受賞しました。
なんとも厳しい評価です……、しかも、国際舞台で。
「化石賞」は、気候変動に取り組む世界130か国の1500を超えるNGOのネットーワーク「CANインターナショナル」が、その日の国際交渉の中で、温暖化対策に消極的だった国に与えるたいへん不名誉な賞です。今年は感染拡大防止のために授賞式は行なわれませんが、例年、この授賞式は多くの参加者が詰めかける一大イベントで、国際メディアを通して世界中に発信されます。
さて、日本の岸田総理が世界に示した内容をどのように伝えているのか……。「環境省」のホームページからその一部を引用します。
(引用開始)
岸田総理は、スピーチにおいて、気候変動という人類共通の課題に我が国として総力を挙げて取り組んでいく決意を述べました。また、先進国全体で年間1000億ドルという資金目標の達成に貢献していくため、以下4点の新たなコミットメントを表明しました。
(1)アジアを中心に、再エネを最大限導入しながら、「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」を通じ、化石火力をゼロエミッション火力に転換するため、1億ドル規模の先導的な事業を展開する。
(2)先進国全体で年間1000億ドルの資金目標の不足分を率先して補うべく、6月に表明した5年間で官民合わせて600億ドルの支援に加え、アジア開発銀行などと協力し、アジアなどの脱炭素化支援のための革新的な資金協力の枠組みの立ち上げなどに貢献し、新たに今後5年間で最大100億ドルの追加支援を行う用意があること。
(3)2025年までの5年間で適応分野での支援を倍増し、官民合わせて約148億ドルの適応支援を含めた支援を行うこと。
(4)森林分野への約2.4億ドルの支援。
(引用終了)
これだけでは、世界的に見ていったいどのようなレベルにあるのか、どこまで突っ込んだ対策を打とうとしているのか、国民にはサッパリわかりません。
日本の「化石賞」受賞理由は、首脳級会合に登壇した岸田首相が、水素やアンモニアを利用した「火力発電のゼロエミッション化」の名の下に、「石炭をはじめとした火力発電の維持」を表明したことでした。原発に対しては、何の表明もありません。記載にあるとおり、本当に「先導的」なら「化石賞」を受賞することなどあり得ません。
世界は今、気温上昇を1.5度未満に抑えるという希望を維持できるかどうかの岐路に立っています。その希望をつなぐ重要な政策が「石炭火力の廃止」です。だからこそ、グテーレス国連事務総長をはじめ主要国の首脳は、COP26が1.5度目標を実現する最後のチャンスだとして、石炭火力からの撤退を要請しているのです。
特に、議長国イギリスのジョンソン首相は、120か国もの首脳を集めてリーダーズサミットを開催し、「先進国は2030年までに、途上国は2040年までに石炭火力の廃止」と、期限付きで確実な廃止を迫ったのです。
しかし岸田首相は、石炭火力の廃止にも、1.5度目標にも言及しませんでした。しかも、火力発電が今後も必要であり、国内のみならずアジアにおいても火力のゼロエミッション化で貢献すると、世界の潮流からすると意味不明な主張をしたということです。それに対して、世界の市民社会は1.5度目標の達成を危うくするとして、「化石賞」の授与という形で厳しい評価を下したのです。
一方、オバマ氏のスピーチは気迫に満ちていました。
オバマ氏は、2015年のパリ協定締結時に米大統領を務めた。スピーチでは、各国は温室効果ガス排出削減の誓約を強化し、協力する必要があるとしたうえで、ドナルド・トランプ前大統領がパリ協定から離脱を実行したことで、「進歩の一部が停滞した」と明確に述べています。120か国以上が参加した首脳級会合を中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が欠席したことに触れ、両国が気候変動対策に関する「危機感の危険な欠如」を示したと指摘しました。「大半の国が、必要な野心に欠けている」と批判したことは、たいへん印象的でした。さらに、先進国だけでなく、中国やインドなどもリーダーシップを発揮する必要があると訴えました。
この場に、歓声を上げ、演説をスマートフォンで撮影する若者の活動家たちがいました。オバマ氏は、その思いを汲み取り、自分たちの世代にある「危機感の欠如」は不安と怒りの「真の根源」となっていると伝えました。さらに、若者たちにつぎのようにメッセージを送ったのです。
「いら立ちを感じるのも当然。私の世代は、あなた方が受け継ぐ、壊滅的な可能性のある問題に十分な対処をしてこなかった」と……。
「環境問題」解決の争点として、なぜか“除外”されていると感じる「原発問題」。地球温暖化という観点が強くアピールされていますが、核のゴミこそ、未来の地球の環境に大きな問題を残します。そして大地震に耐えられないことが実質的に証明されたにもかかわらず、あたかも安全性が担保されたクリーン電力として扱われていることに怒りを覚えます。オバマ氏が若い活動家たちに伝えたメッセージにある「あなた方が受け継ぐ、壊滅的な可能性のある問題に十分な対処をしてこなかった」のは、核の問題そのものでもあります。
以前、本稿にて、「私が原発を止めた理由」というタイトルの文章をお読みいただいた方は、お分かりのとおりです。
当時の裁判長・樋口英明さんは、2014年5月21日、再稼働していた福井県の関西電力大飯原発3、4号機の「運転差し止め」を申し渡しました。
ところが……です。
2018年3月14日、同原発は再稼働しました。
さらに、樋口さんが退官後住民側のアドバイザーとして関与された初めての原発差し止め仮処分が、この11月4日に却下されたのです。それを受けて、樋口さんがメッセージをくださいました。ご本人の了承を得て、下記に転載いたします。
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私が実質的に関与した初めての原発差止め仮処分は、11月4日広島地裁で却下されました。全ての争点について四国電力と主張を闘わせた結果、四国電力は最後の方は反論できずに黙ってしまいました(四国電力は負けを覚悟したはずです)。そこで、私はよほど悪質な裁判官でない限り勝つだろうと思っていたのですが、残念ながらこのような結果となりました。
四国電力は「マグニチュード9の南海トラフ地震が伊方原発直下で起きたとしても、伊方原発の敷地には181ガルしか到来しない」という非常識な地震動算定を行っていました。マグニチュード9の東北地方太平洋沖地震では震源から水平距離で180キロメートル離れた福島第一原発の解放基盤表面(固い岩盤)において675ガルの地震動が到来しました。四国電力は、マグニチュード9の南海トラフ地震が伊方原発直下で起きても伊方原発敷地の解放基盤表面(固い岩盤)には181ガル(震度5弱相当)しか到来しないとしました。ちなみに、震度5弱とは、棚から物が落ちることがある、希に窓ガラスが割れて落ちることがあるという程度の揺れです。なお、181ガルに合理性がない場合には基準地震動(650ガル)の合理性が失われることについては四国電力も争っていませんでした。
広島地裁は、住民側の立証責任の軽減を図った伊方最高裁判決を適用せず、具体的危険性の立証責任はすべて住民側にあるとしました。
南海トラフ地震181ガル問題についても、裁判所は「福島第一原発と伊方原発のそれぞれの地層の状況や地震の伝わり方等の正確な分析をしないまま、伊方原発の岩盤での181ガルと福島第一原発の岩盤での675ガルとを比較することはできない」としました。このようなことは四国電力さえも主張していませんでした。裁判所は住民側がその分析をせずに181ガルと675ガルを比べているので具体的危険性の立証は不十分だとしたのです。
裁判において住民側は「地層の状況や地震の伝わり方等は正確に見極めることはできないので、そもそも最大地震動(基準地震動)は予知予測できない」と主張していたのです。そのような主張をしていた住民側に裁判所は無理難題を押しつけたのです。
更に、差止めが認められるためには、住民側において、近々基準地震動650ガルを超える地震が発生することを立証しなければならないとしました。およそ地震学者にもできない無理難題を住民側に課しました。
以上が今回の決定のあらましです。とても承服できる内容ではないので、広島高等裁判所に是正を求めることにしました。
後輩が裁判官としての矜持も人としての最低限の公平感も持ち合わせていないのを見るのは大変つらいのですが、三権の中で頼ることができるのは裁判所しかありません。希望を失わずに頑張っていきたいと思っております。引き続き見守ってくださいますようよろしくお願い致します。
樋口英明
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耐震性の高さをアピールしているハウスメーカーの住宅の耐震設計の基準(約3000〜5000ガル)の7分の1から5分の1(650ガル)しかない原発を安全であると……。「650ガルを越える大地震は来ない」と支離滅裂な見解を示した電力会社側の姿勢……。
矛盾に満ち満ちています。
一方、COP26では、2011年の東京電力福島第1原発事故からの福島県の復興状況を発信する日本政府のイベントが10日に開催されました。事故後10年がたち、福島で「再生可能エネルギー」や「水素」の活用といった未来を見据えた地球温暖化対策が進む姿をアピールした形になっています。
ビデオメッセージで出演した福島県の内堀雅雄知事は、原発事故後の状況について「除染作業が進み、空間放射線量は大幅に減少した。現在は世界の主要都市とほぼ同水準だ」と強調されました。そして、特筆すべきは、「原子力に依存しない社会」に向け、40年ごろに県内のエネルギー需要の100%以上を再エネで賄う県の目標などを紹介したのです。
素晴らしい取り組みであり、未来に向けて期待が膨らみますが、これを先述したようなスタンスで参加した日本政府がイベントとして取り上げたことにも矛盾を感じますし、さらに言えば節操のなさをも感じてしまいます。
「地球温暖化」対策だけでなく、あらゆる未来の地球環境に配慮した取り組みのために、そして何より、未来を生きる若者や子どもたちのために、私たち大人が、「何を選択し、何を捨てるのか」を決めなければいけません。
「よいことは行い、よくないことはやめる」
舩井幸雄が伝え続けた「勇気」の意味です。
一人でも、二人でも共感し、「勇気」を出してアクションを起こす人が増え、「百匹目の猿現象」が湧き上がることを願ってやみません。
感謝
2021.11.22:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】魔法の質問 (※舩井勝仁執筆)
2021.11.15:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】いまこそ必要な『勇気』 (※佐野浩一執筆)
2021.11.08:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】言葉を大事にする引き寄せの法則 (※舩井勝仁執筆)
2021.11.01:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】本当に大切なこと (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |