トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2022年8月1日
Uber戦記 (※舩井勝仁執筆)

 7月のFOMC(連邦公開市場委員会)は市場の予想通り2カ月連続で0.75%の利上げを決めました。これで、2カ月で1.5%もの急激な利上げを実施したことになります。これは、レーガン政権下で10%超のインフレ退治に臨んだ伝説のポール・ボルカーFRB議長の時以来の出来事ですが、一部そのようなセンセーショナルな報道がなされますが、金融市場はかなり成熟されてきているのか、それほどの高揚感はありません。逆に、アメリカの景気後退が感じられる中で、利上げがいつストップされて、逆にいつ利下げが始まるのかがささやかれるようになり、そんな動きを先取りする形で株高円安の流れが一瞬出現しています。
 2週間前に心配していた140円台の円安は、いったんは回避されたように思います。原油価格もピークを過ぎた感があり、特に日本の悪いコストプッシュ型のインフレは少し収まる方向に動いていくような気がします。できれば、この悪いインフレがきっかけでもいいので賃金が上がっていくことで景気回復につながっていくいいインフレがやってきたら日銀の黒田総裁の就任以来の念願がようやく叶っていく方向性が見えてくるのかもしれません。今回も、金融政策の転換をするべきだという市場の要求を拒否し続けた黒田総裁の勝ちのような気がします。
 一部のヘッジファンドの中には、日本の長期金利はもっと上がっていくはずだ、さらにこれだけの財政悪化の状況を考えれば暴落してもおかしくないという見方から日本国債に対して空売りを仕掛けた勢力がいました。しかし、長期金利が落ち着いてきていることや円高傾向が強まっていることの背景に、彼らが手仕舞っていることによる買戻しの動きも影響しているのかなという気がします。1992年にジョージ・ソロス氏がイギリスの中央銀行であるイングランド銀行に仕掛けて勝利したポンド危機という事件がありました。当時と違い、いまは日米英という金融が完全に自由化したソブリン(国家)にヘッジファンドが戦いを望んでも容易に勝てない状況になっているのではないかと思います。
 これで長続きするかどうかはわかりませんが、株価も一時的には落ち着くのではないかと思います。基本的には金余りの状況は続いているので、市場は来年以降の利上げストップや利下げを織り込み始めたと考えてもいいと思います。ただ、多分行き過ぎたらそれを修正する強烈な下げ局面もあると思うので、流れを注視しておいた方がいいとも思います。

 コロナ発生以降、出前を活用することが増えた方も多いのではないでしょうか。様々な業者がありますが、非常に便利なシステムです。私も、特に先行していたUberイーツについては定期的に活用したものです。今回はそのUberについての本を紹介していこうと思います。
 『ウーバー戦記』(草思社)は、アメリカのジャーナリストであるマイク・アイザック氏によって書かれた本で、創業にかかわったトラビス・カラニック氏を中心に、Uberの歴史を紐解いていく内容です。Uberは数年前、アメリカを席巻したベンチャー企業でした。本業である配車サービスで全米、さらには世界中の移動の仕組みを変えた、と言っても過言ではない変革をもたらしました。物語の中心人物であるカラニック氏は、過激な言動で知られ、非常に奔放的だったようです。非常にオタク気質の強い人物と書かれているように、幼い頃から科学にのめり込み、社会に出てからも親友も恋人も作らずに新たな企業を創ることに熱中していました。
 最初のファイル共有サービスを生業とする会社での失敗。その後の二つ目の事業での成功。二つの経験を経た上で始まった配車サービスを生業とするUberは、非常に大きな組織となりました。あけすけに過激な内容が書かれており、非常に強引な、非合法、もしくは倫理的に問題のある手段を用いながら会社を拡大させていった様子が見てとれ、アメリカで大きな成果を上げる為にはここまでする必要があるのかという現実を知ることができます。
 大きく成長し、アメリカンドリームを掴んだカラニック氏や関係者ですが、物語としてはハッピーエンドとは言えない終わりを迎えます。爆発的に成長したUberですが、その分沈んでしまうのもあっという間でした。前述のとおり、創業者の気質、強引な手段を利用した代償というべきか、創業者であるカラニック氏は大きな資産を手にはしましたが会社を追われ、Uber自体も創業当初の勢いは見る影もない状況です。
 本書を読んでいると、日本では本業である配車サービスが上手くいかなかった理由についてもある程度理解できました。それは、海外の粗悪なタクシー事情を利用し、ユーザーを獲得して市民権を得ることで会社を拡大させていった彼らが、一定以上の水準でタクシーが整備されている日本でそれをすることは難しかったからだと推察できます。しかし違う分野、多くの人間が不満を持っている利権、ここを上手く切り崩せば多大な利益をあげることができる。そのようなヒントをもたらしてくれたのも確かでしょう。
 本書を読み、一つの成功をおさめた企業の栄枯盛衰の過程を知る。それは投資やビジネスの際に参考になるのではないでしょうか。蛇足ですが、日本でもタクシーをアプリで呼ぶのが当たり前になりました。私はまだ利用していませんが、都心で夕方の繁忙時には流しで空車のタクシーを探すのに苦労するほどになりました。カラニック氏のもたらしたインパクトはこんな形で我々の生活にも確実に影響しているようです。
                             =以上=

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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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