トップが語る、「いま、伝えたいこと」
世界的に株価というか金融商品価格の調整局面が続いています。コロナ禍でのバラマキ政策や、淵源をたどるとリーマンショックからの回復のための異次元の金融緩和の影響でじゃぶじゃぶに供給されたお金の行き先として全般的に上がり過ぎていた金融商品価格を適正な水準に落ち着かせることが、インフレとの戦いにおいて重要なポイントであるというFRB等の金融当局の意志が明確に感じられ始めていることが原因だと思っています。
言葉を選ばずに言えば、トランプ政権や安倍長期一強政権の下で、株価を上げるために強引に進められていた金融緩和策の修正こそが金融当局の意志かもしれないということをマーケットが理解しつつある局面だと感じます。
行き過ぎた円安に対抗するために日銀が為替介入を行いました。マーケット関係者は、逆にこれでひとり金融緩和政策を続ける日銀の敗北が確定したと喜んでいるという見方もありますが、私は個人的には円安を是正するという意味ではなく、アメリカ国債の売却をするための大義名分として為替介入を口実にするという意味でいい政策だと思っています。債券価格は下がっていますが、為替差益という意味では日本政府が持っている外貨準備としての米国債を売っても為替差益が取れるのであればマーケットに大きな影響を与えない範囲でいい判断だと思います。
アメリカや日本の金融当局は、意外に大きな力を持っているのではないかと私は思っています。それを証明したのがトランプ大統領や安倍総理だったと思うのですが、いまは強引なリーダーがいない分、その巻き戻しに入っているステージだと思っています。ただ、トランプや安倍時代に金融当局の力が結構あるということがはっきりしたことで、ヘッジファンドなどのやりたい放題をコントロールすることが可能であるということも証明されたようにも思えます。FRBや日銀がどこまでこの力を使うかは未知数ですが、私は中央銀行にマーケットが勝ったジョージ・ソロスの時代の再現はないような気がします。
作家の村上先生といえば、時期的にタイムリーなのは今年も惜しくも受賞を逃しましたがノーベル文学賞関係で毎年話題に上る村上春樹先生ですが、今回はあえてもう一人の村上、村上龍先生の本を取り上げてみました。紹介するのは『希望の国のエクソダス』(文藝春秋)、本書は2002年に発売された小説です。「エクソダス」はモーゼの出エジプトのことで、そのタイトルで映画も作られていますが、老人支配で未来がない日本から中学生が逃げ出していくという意味で使われています。
ストーリーを簡単に紹介すると、不登校など既存の世界に希望を見いだせなくなった中学生たちが大人に対して反乱を起こし、『希望だけがない国』の中に自分たちの理想の国を作りだす、というものです。注目したいのは、20年以上前に出版された本書が、現在の日本と似たような世界を作りだしている、という点です。停滞した日本、一発の銃弾が人を動かし、それがきっかけで大きく変わる社会。
物語の中ではではインターネットを通じて、若者が大金を稼ぎ、大きな力を持つようになっていきます。アメリカの大企業などのように、既存の日本人にはない発想で、あっという間に世界を塗り替えていくのです。主人公であるフリーライターの大人の目を通し、価値観の違う中学生たちが理解のできない範疇で世界を変えていく。変革の当事者ではない主人公に感情移入して、未知の存在のような中学生が世界を変えていく様を眺めるのは、どこかワクワクすると同時に、自らが取り残されていくことによるある種の恐怖感のようなものを感じ、それは実際の社会でも世代間のギャップにより我々が同様に味わっているものに近いのではないでしょうか。
最終的に小さな未来都市ができあがり、そこには若い世代の王国ができあがっていき、老人世代はそこから自然とはじき出される。これはもしかしたら、未来の日本の姿なのかもしれません。作中で取り上げられたサッカーの日本人選手の海外への大量流出など、村上先生にはジャンルを問わず先を見通す力がある。しかしそれだけではなく、村上先生は執筆にあたり、様々な業界について非常に綿密な取材をおこなっていたようで、その事がどこか未来予知のような完成度を持たせたのでしょう。未来を知るためには様々な視点から広く物事を知る必要がある、勉強の大切さを改めて学ぶことができました。
若者の反乱も現実になるのかは定かではありません。しかし、それを実現に移せる土壌は既に出来上がっている、それは間違いないのではないでしょうか。
小説で書かれているような世界、さらには舩井メールクラブや「ザ・フナイ」誌上で先生方が書かれているようなロシアや中国が覇権を取っていく世界に個人的にはあまり住みたいとは思いません。そうならないように、私たち中高年も「この星に生まれてきた わたしたちの約束を思い出す」ことが大切だと思います。友人の山内尚子さんが、10月23日に東京で「まなひまつり2022」を開催されます。中高年にもわかりやすい方法で、これからの社会に適応するための心構えを教えてくれるイベントだと思っています。
なにか感じるところがあれば、ご参加をご検討してもらえればと思います。講演される先生方も親しい方ばかりなので、私も参加させていただいて大事な気づきを得たいと思っています。
=以上=
2022.10.24:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】日本という希望 (※舩井勝仁執筆)
2022.10.17:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】いまこそ、共感 (※佐野浩一執筆)
2022.10.10:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】エクソダス (※舩井勝仁執筆)
2022.10.03:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】躾と人財 (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |