トップが語る、「いま、伝えたいこと」
「片付け」というと、近年の関連書籍の影響か、「バサバサと捨てる」ことが連想されてしまいます。いわゆる「断捨離」ですね……。とにかく、「捨てる」ことが苦手な私にとっては、なかなかの課題だと感じています。ただ、いろいろと本を読んだり、特集番組や動画を観たりしていると、どうやら闇雲になんでも捨てましょう……というものとは違うことを知りました。「捨ててよいもの」と「捨てないもの」に分けるのは当然のことですが、不要にも思えたり、ほとんど使っていなかったりするものだけれど、「迷ってしまうもの」が必ずたくさん出てきます。でも、この「迷っているもの」という分類をしてよいと知ったとき、ホッとしたものです。
モノには、それぞれに背景や思い出が詰まっています。それらを思うと、どうしても簡単に捨てられない気持ちになってしまいます。
もう長らく購読させてもらっている「日本講演新聞」という、「よいお話ばかり、ためになり、人生の潤いになること」ばかりが掲載された新聞です。その、2022年6月6日・第2932号の社説に、作家の五木寛之さんのことが書かれていました。少しばかり、引用させていただきます。
作家の五木寛之さんは50年以上前、20代の時に買った青い皮革の靴や、30代の時に買ったロンドン・ブーツを、今も部屋の片隅に置いているそうだ。
近著『捨てない生き方』(マガジンハウス)の中で五木さんは「私はあえて捨てません。なぜか。そのモノたちを見ると、それを手に入れたときの記憶が鮮やかに蘇ってくるからです」「取るに足らないモノでも、自分のところにやってきたという出会いから始まり、何年、何十年と共に生きてきた物語がありますから」と語っている。(中略)「古くて使えないものでも、それを見た瞬間、記憶の彼方に追いやられていた脳細胞が元気を取り戻すことも」と五木さん。「晩年は回想を楽しむ黄金の時代です」と言う。(引用終了)
同じようなことを、あの五木寛之さんが感じていらっしゃったんだと思うと、とても感激してしまいました。そして、どこかに、心の余裕と豊かさを感じます。
「忙しい」とは、「心を亡くす」と書く……。よく耳にするメッセージです。この忙しい時代、なんでもかんでもデジタル化、効率化の方向に向かい、時代の変化自体も目まぐるしく、スピードに溢れています。SNSでのやりとりが日常化し、会ったこともない、もしくはほとんど会わない人ともつながり、その数が多いことがなにかの“勲章”のようになっている気もします。
そんないまの時代だからこそ、「心の余裕」を持つことの大事さを痛感してしまいます。おそらく、先述した五木寛之さんは、「捨てない生き方」をされている一方で、きちんと自分らしい選択をして、心の余裕をしっかりお持ちなんだと感じました。
心の余裕があると、人に優しく、さまざまなことを俯瞰して見ることができます。とはいえ、この世は、「いい人」でい続けることは不可能のように思います。どうしても助けたいパートナーや親友がいて、そんな人たちに対してなら「いい人」を続けることはできます。でも、それが不特定多数になると、それはなかなか難しいと思います。
実業家で論客であるひろゆきさんによれば、「フラットに付き合えることがその人のよさのように語られることがありますけど、それって、全員に対してフラットに「どうでもいい」と思えている人の境地なわけです」とバッサリ……。またしても、毒舌に近いメッセージなのか……と思いきや、「心の余裕が欲しい」と思っている人におすすめの「ラクになれる言葉」を紹介されていました。
それは、心のゆとりは「有限だ」という言葉です。
お金や時間は、有限です。それでも、自分にとって大事な人から「お金を貸してほしい」とか、「相談にのってほしいから時間をください」と言われたら、その人のために使いますよね。でも、やはり、なにかしらのゆとりがないと、叶えられないこともあります。
でも、「心のゆとり」だって有限なんですね。
この、ひろゆきさんの言葉には、想像以上にドキッとしました。
自分にゆとりがないときは、いくらお金や時間があったとしても、相手を優先させられません。そういうときに、「時間をください」と言われても、なかなか難しいです。
ところが、「いい人」には、そうした心の余裕がなくなっていることが多いように思います。カウンセリングの講習や実践、あるいは心理の勉強をしていると、この「いい人」の多くが傷ついていたり、悩んでいたり、心が壊れそうになっている事例を多く見つけます。
一般的に、いつも心に余裕がない人は、つねに他人を優先させて生きています。自分がお金や時間がないときにも、相手のために何かしてあげないといけないと思い込んでいます。
大事な人になら、それも致し方のないことなのかもしれませんが、「大事な人(だと思い込んでいる)範囲」が広すぎると、どんどん自分自身の余裕をなくしてしまうことにつながります。冷たく感じられるかもしれませんが、私には、「本当に大切にしないといけない人」を見誤ってしまうのではないかと思ってしまうのです。
これからの時代の断捨離は、こうして膨れ上がった「大事(だと思い込んでいる)な人」を対象にする必要が生まれてきているようにも感じてしまいます。
話が「人」のことにフォーカスしてしまいましたが、どうやら、心の余裕を持つためには、このように新しい「断捨離」をしなければならないようです。1日にスマホを見ている時間は、自分でもびっくりするくらいです。ここにも断捨離の必要性を感じています。
まさに、新しい時代の、新しい忙しさ……と言えるように思います。
心のゆとりも、時間も、本当はもっと大事に扱う必要があるようです。
余裕がなかなか持てない……。
だからこそ、「余裕ある時間」を、できる限り守ることを考えてよさそうです。
そうして、できることなら、五木寛之さんのように、モノを通じて、思いに浸る……ような時間を持てたら、それは心に余裕を持ち、本当に豊かだと思うのです。
なぜなら、自分自身の「歴史」を振り返り、そこに思いを馳せるなんて、最高にロマンチックでぜい贅沢な時間だからです。
私自身は……というと、まだまだそんな振り返りができるような人生体験をまだまだ積んでいかねば……と思う、今日この頃ではあります。
感謝
2023.01.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】すぐに幸せになれる理由 (※佐野浩一執筆)
2023.01.16:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】アフターデジタル社会への適応 (※舩井勝仁執筆)
2023.01.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】新しい断捨離の時代 (※佐野浩一執筆)
2023.01.02:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】繁盛店の生き残り策 (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |