トップが語る、「いま、伝えたいこと」
円高が進んでいます。アメリカ時間の12日に1ドルが7か月ぶりとなる128円台を付けました。要因はアメリカの先月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で6.5%の上昇で1年1か月ぶりの7%割れだったことです。市場の予想通りだったようですが、先月比でみると0.1%の上昇で、引き締め効果がかなり出てきているのは間違いないようです。ただ、専門家は大きな要因が原油価格の下落だったので、まだまだ油断して引き締めを緩められる段階ではないとコメントしていますので、このまま円高傾向が続いていくことにはならないで、近いうちに揺り戻しもあるような気がします。
12日の日本市場では、今週に開催予定の日銀の金融政策決定会合で先月に続いて、金融緩和措置の緩和に向けてさらなる動きがあるのではないかという見方が広がっていて様子見の様相が広がっています。アメリカ市場はCPIが予想通りで安定してきたことを受けて強気で取引されているのに比べて、金利が上がることや日米の金利差が縮小することによる円高への懸念から積極的に買い上がる流れにはなっていません。昨年は市場との対話の主役はFRBだったのですが、年初はどうも日銀がその役割を担っていきそうな雰囲気になっています。
黒田総裁は4月の任期前に退任するのではないかという見通しも広がっていて、10年続いた黒田時代の総決算をする動きが加速していくのかもしれません。従来は4月以降の新総裁の下で実行されるとみられていた政策変更の流れが前倒しされているという風に考えればいいのではないかと思っていますが、サプライズを起こしながら市場との対話をするのに長けている黒田総裁の手腕に期待して見守りたいと思います。そして、次期総裁は黒田時代の遺産に縛られることなく新しい金融政策を示していく流れになれば、市場との対話は成功なのかもしれません。
昨年末の予想では、今年の日本株式は緩やかに上昇していくのではないかという見方が多かったように思いますが、いまのところは年央までは修正する動きが強まるのではないかという意見が大勢になってきたように思います。投資は自己責任ですので、他人の意見に左右されない独自の見解を持つことが大事だと思いますので、金融から見た世の中の流れを感じてみていただくことを習慣にされるのもいいのかなと思います。
今回ご紹介する本は、『ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件』(日経BP)です。著者の藤井保文氏は株式会社ビービットというUX(ユーザーエクスペリエンス:ユーザー体験)を中心に活動しているコンサルタント会社のCCO(最高コミュニケーション責任者)兼東アジア営業責任者をされています。累計22万部のベストセラーとなった『アフターデジタル』シリーズなどの著作があります。アフターデジタルとは、徐々にオフライン(リアルの世界)とオンライン(デジタル上の世界)の垣根がなくなっていくという理論であり、本書もデジタルが主流となる世界について書かれたものとなっています。
タイトルにあるジャーニーシフトとは、顧客提供価値が時代によって変容、具体的にはスマートフォンの普及などで可能になった『行動支援』へ主軸を置く時代になった事を示す言葉です。多くの企業が急速なデジタル化により、過去の成功体験が再現性を無くし、新たな方法を見つけていく必要があるのが現代です。このような転換期での舵取りに失敗した企業が多くのものを失うのを、日本人は間近で見てきたのでよく知っています。
藤井氏は日本を『デジタル後進国』とバッサリ切り捨てられており、まだまだ他国に比べるとその分野で後れを取っているようですが、その分我々には多くのビジネスチャンスが残されている、とも言えます。読み進めていくと、スマートフォンが生まれたことで可能になった新ビジネスの形、一度限りで終わらない、寄り添い続ける、サブスクリプション等の顧客を離さないモデル作り。機能性が飽和している時代だからこそ、意味性が持つ価値の重要性。多くのヒントを得ることができ、興味深いです。
しかし、日本の企業は海外の事例をまねてみたり、成功体験を参考にビジネスを始める事が多いですが、日本の市場に沿った形に変化させなければ成功は難しいとも述べられています。本書は日本と比較すると『デジタル先進国』と言えるインドネシアの事例などを参考にしながら解説されていくのですが、この独自の仕組み、文化に沿った発達の背景は、非常に興味深いです。2018年に書かれた最初の『アフターデジタル』では、世界一のデジタル先進国である中国の事例を中心に書かれていましたが、東南アジアにもその動きは広がっていることがよくわかります。
既存の流通チャネルに大きな問題(ペインポイント)を抱えている後進国の方が、デジタル対応をしやすいという面はありますが、日本ならではの違ったデジタル対応をしなければいけないことがよくわかりました。ジャーニーシフトを起こすためには、どんな価値を社会に提供するのかをまず決めなければならないという視点は、ビジネスの新しい境地を感じさせてくれます。新しい時代への方向転換、その中で適切な道へ進んでいく方法を考えるヒントになる一冊なのではないでしょうか。
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2023.01.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】すぐに幸せになれる理由 (※佐野浩一執筆)
2023.01.16:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】アフターデジタル社会への適応 (※舩井勝仁執筆)
2023.01.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】新しい断捨離の時代 (※佐野浩一執筆)
2023.01.02:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】繁盛店の生き残り策 (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |