トップが語る、「いま、伝えたいこと」
経済産業省が「みんなで知ろう。考えよう。ALPS処理水のこと」と題したホームページをアップしています。
ご存じのとおり、福島第一原子力発電所から海洋放出される処理水に関して、お題目としては「復興を進めるために」「風評を起こさないために」とされています。
そこから、一部を抜粋します。
「ALPS処理水とは、東京電力福島第一原子力発電所の建屋内にある放射性物質を含む水について、トリチウム以外の放射性物質を、安全基準を満たすまで浄化した水のことです。
トリチウムについても安全基準を十分に満たすよう、処分する前に海水で大幅に薄めます。
このため、環境や人体への影響は考えられません。
また、海洋放出の前後で、海の放射性物質濃度に大きな変化が発生していないかを、第三者の目を入れた上でしっかりと確認し、安全確保に万全を期します。
国連の機関であり、原子力について高い専門性を持つIAEAも、海洋放出は科学的根拠に基づくものであり、国際慣行に沿うと評価しています。
また、海洋放出に際しては、IAEAの安全基準が守られているかを厳しくチェックしてもらっています。」
本当にそうでしょうか?
福島原発敷地内では、放射能汚染水はたまり続けています。
東電は、溶けた核燃料を冷やすために、毎日大量の水を原子炉に入れています。また、山側から海側に流れている地下水が原子炉建屋に流れ込んでいます。これらの水は高濃度の放射能汚染水になっています。毎日溜まり続ける放射能汚染水は、合計で100万トンを超えています。
この水は、事故で溶けた燃料棒のかけら(デブリ)に含まれる放射性物質に触れたものです。東電はこの水のことを「トリチウムを除く大部分の放射性核種を取り除いた状態でタンクに貯蔵しています」として、「処理水」と呼んでいます。
先述したホームページでは、トリチウムについてつぎのように書かれています。
「トリチウムは水素の仲間(三重水素)で、日々自然に発生しているものです。
そのため、水道水や雨水、私たちの体の中にも含まれており、「自然界にも広く存在する放射性物質」です。
トリチウムが出す放射線のエネルギーは非常に弱く、紙1枚でさえぎることができます。
トリチウムは、世界中の多くの原子力施設から海に放出されていますが、施設周辺からは、トリチウムが原因とされる影響は見つかっていません。」
しかし……、トリチウムのエネルギーは低いものの、体内に取り込んでしまうと内部被ばくのリスクがあります。このことについては、一切触れられていません。
さらに、トリチウム以外の放射性核種も取り切れていなかったことが、実は2018年夏に発覚しているのです。セシウム、ストロンチムなど62核種の放射性物質を取り除くはずの設備「ALPS(多核種除去設備)」を使用していますが、「ALPS」で処理した汚染水の8割に、基準以上の放射性物質が残っていたということがわかったのです。
そして、最近になって、ALPSで取り除くことのできない「炭素14」の問題が浮上してきました。このことはあまり知られていないと思うのです。
「炭素14」の半減期は5,730年だとされています。いったん放出されてしまうと、このように気の遠くなるような年月の間、周囲に影響を及ぼし続けます。
ご存じのとおり、炭素は、人体を含むあらゆる有機物にさまざまな形で組みこまれています。そのため、炭素14は、いろいろな生きものの身体に取りこまれることで、放射線被曝によって遺伝子を傷つける恐れがあるとされていて、このことを知ったときは衝撃的でした。
フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)発行の「放射性核種ファクトシート炭素-14と環境」によると、「炭素14」は細胞構成成分(タンパク質、核酸)、特に細胞DNAに組み込まれるため、分子の切断を伴うDNA損傷が生じ、細胞が壊死したり、突然変異が誘発したりする可能性があるというのです。
そもそも東電は、2014年に出した調査資料において、「炭素14」は検出限界以下と報告していましたが、後に再検討しています。その結果、「炭素14」の存在が浮かび上がってきたのです。しかも、IAEAの資料によると、この「炭素14」の除去は可能であるとされているにもかかわらず、スルーされています。
「炭素14」が海洋放出されれば、その影響は数万年にも及ぶとする見方もあります。
汚染水の海洋放出は、まさに、「経済」や「政治」が絡んでつくられた1つのキャンペーンであるといっても過言ではありません。
海洋放出は、経済的にもっとも安くつく選択であると、環境団体は指摘しています。しかも、汚染水を保管するタンクがなくなることで、廃炉が順調に進んでいて、原発事故はもう終わった、というイメージ戦略に役立ちます。
とんでもなくシンプルにいうと、汚染水が環境に影響がないのなら、そもそも管理して、貯め置いたりする必要がないと思いますが、いかがでしょうか?
もとを正せば、そもそもリスクが山ほどある原発という選択肢でもって、「モアアンドモア」の世の中を突き進めようとしてきたこと自体に、決定的な問題点があると考えます。
そして、「サステナビリティ」を念頭に置けば、異なる選択を考えなければいけないことも自明です。
ところで、昨今、企業価値に対する捉え方自体も、大きく変化してきています。
企業価値向上においては、「ブランディング」は必須のテーマであることは言うまでもありません。しかし、近年はそこに「サステナビリティ」も含めて議論に上がることが増えてきました。
もう長い間、企業価値は「経済的価値」を数値で表したものとされてきました。要するに、財務諸表そのものと言ってもよいでしょう。ですから、上場企業なら株価や時価総額をもって、ほぼ企業価値と同義のものとして扱うのが普通でした。
しかし、ここ数年、「非財務情報」や「非財務価値」という言葉をよく耳にするようになりました。あるいは現在の「業績」だけでなく、将来に向けた「期待」によって株価が決まるというようなイメージです。また、直近では「人的資本開示」という言葉も生まれ、さまざまなメディアでクローズアップされています。いずれも、ブランドや人材の価値、環境、社会への取り組みなど、財務諸表だけでは見えてこないものを企業価値として捉えようとする動きです。
こうした流れを生み出しているのが、よく言われるVUCA時代の到来です。将来は予測不可能なものであり、その中で確率論的な経済活動を積み上げていくことは難しくなっています。企業はこうした前提に立ち、未来がいかに予測不能で計り知れないものであったとしても、企業価値を高めていくために、新たな概念に則った「投資」をしていくことが求められているともいえます。
こうした中で、『サステナビリティ・ブランディング』の著者伊佐陽介氏は、「経済価値」に「社会&環境価値」「従業員価値」を加えた3つの価値を企業価値とし、これに「持続的成長可能性の可視化」を加えた4つの側面から、企業価値の創出を図っていくべきだと主張されています。
とても興味深いです。
「サステナビリティ」は、SDGsやESGとも、ましてやカーボンニュートラルとも違います。3つの価値を並行して高めていくには、もっと広範囲をターゲットにし、かつ私たちがもっと身近に感じられる、世のため人のための具体的活実践を展開していくということです。そして、この文脈を踏まえると、ブランディングはこれら3つの価値を統合し、持続的成長可能性を可視化するものとして社内外に蓄積・伝播させていくことを目指す必要があるということになります。
企業ももはやこうした方向に向かっているいま、国は「サステナビリティ」を無視した方向にまた歩みを進めていこうとしています。「サステナビリティ」の視点に立てば、まだまだ解決法や対策はあるとの見方も多くあります。
答えは1つではないと思うのです。
感謝
2023.07.24:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「名詞」ではなく「動詞」で! (※佐野浩一執筆)
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |