トップが語る、「いま、伝えたいこと」
「ライフカラーカウンセラー認定講座」において、カウンセリングの基本は、「受容」と「共感」だとお伝えしています。
ところが、この「共感」。なかなかむずかしいものでもあります。
「共感」できた!と思い込んだら大間違い……。
それは、自身の経験、体験と結び付けて、クライエントの話した内容と似たものを心や頭のなかでリサーチし、そのときに「自分」が感じたものを探り当て、それを「共感」としているケースが多いのも事実。
人間である以上、言葉を中心としたコミュニケーションが多くを占めるわけですが、同じ言葉でも、その人その人によって、感じ方、捉え方、使い方が違っているのです。
たとえば、「悲しい」という表現。
同じように思える事象でも、それを「悲しい」という人もいれば、「悔しい」という人もいます。「残念だ」という人、ときには「寂しい」という人だっています。
つまりは、私たちは、この「言葉」によって、相互理解や認識を大いに左右されているというわけです。
そう、私たちは「言葉」で捉え、「言葉」で考えています。
さて、なにかアイデアを考えてみるとき、私たちの多くは「名詞」で考えることが多いようです。とりわけ、ビジネスにおいては、この傾向が強まります。
次の「スマートフォン」はどういうものであるべきか、ネットワークでつながる時代の「自動車」とはどのような使い方をするべきか、これからの「ソーシャルネットワークサービス」に何が可能か……、といった具合です。
しかし名詞で発想を始めた瞬間に、ある種の固定観念に縛られることを自覚しておいたほうがよさそうです。そうして、自分自身が持っているイメージや発想に知らぬ間に囚われていくのです。細田高広氏の著作『コンセプトの教科書』によれば、この「名詞」こそが固定観念の正体だと伝えています。
トイプードル、ヨークシャーテリア、ハスキーにチワワ……。
犬には実にたくさんの種類があって、「名前」で区別されています、もちろん、当たり前のことでもあります。でも、それを猫やたぬきと混同してしまうことはまずありません。犬や猫という「名詞」を覚え、使うことで、私たちは世界中のあらゆるものの「区別の仕方」を覚えていきます。区別されたエリアに、名前というラベルを貼って情報処理をスムーズにしているのです。
それは脳の優れた認知機能である一方、認識を単純化しすぎてしまいステレオタイプなものの見方につながるという副作用もあると言われています。
とても面白い事例が間近にあります。
2007年、当時のアップルコンピュータは社名から「コンピュータ」という名詞を外しました。その後、アップル社は、iPhoneやApple Watch、AirPodsなどのコンピュータに縛られないプロダクトを立て続けに世に問うてきました。この躍進ぶりを見れば、名前(名詞)を捨てる決断こそが、いまのアップル社を築いたとも言えるのではないでしょうか。
そう、名前、つまり名詞による分類(区別)こそが、思考の硬直化を生み、新たな発想を阻害してしまっているということです。
思い込みって案外おそろしいものです。
冒頭に触れたカウンセリングの世界でも、クライエントが抱えている人間関係の課題についても同じことが言えます。人に対して「こういう人だ」というレッテルを貼ってしまった瞬間に、人はその人をそういう人としてしか見られなくなります。「よくない状況」と思った瞬間から、起こることすべてがその「よくないこと」に連鎖して、その後起こることすべてが「よくない状況」としてしかとらえられなくなってしまうということもあります。実は、これが、「マイナス発想」の正体でもあったりするのですが……。
少し横道にそれました……。
ビジネスにおいて、そうした固定観念や思い込みから自由になる方法を教わりました。
世界的なデザイン会社アイディオの共同創立者のひとりであるビル・モグリッジ氏は、「名詞ではなく動詞」をデザインするべきだと述べています。
人の「行動」に焦点を当てることで、既存のパラダイムから解放されるというのです。実際アイディオ氏のデザインチームは、行動を観察するところから新しいアイデアを生み出してきました。
たとえば、朝食の場面を丁寧に観察した結果、「パンを食べる」前に「トーストしたパンを並べる」という何気ない動作を見つけたとします。そこから、パン立てになるトースターの蓋をつくってしまおうという発想を引き出すことができました。
ネットフリックスのドキュメンタリー番組「アート・オブ・デザイン」のなかで、ある玩具デザイナーが、「名詞」ではなく「動詞」で問うことの重要性を語っています。
美大生に「新しいコップをデザインしよう」と投げかけても、なかなか新しい発想は生まれません。しかし、コップ⇒『水を「運ぶ」もの』と定義したとすると、「スポンジ素材に水を吸収させて運ぶ」といった形状にこだわらない自由なデザインが飛び出すのだそうです。
小学生とのワークショップでのユニークな事例もあります。
新しいスクールバス……。つまり、「スクールバス」という名詞で考えると、せいぜい色違いのスクールバスが描かれる程度に収まってしまいます。ところが、スクールバス⇒『通学する新しい手段や方法』を問うと、発想が突如大きく変化します。
ロケットを使って空を飛ぶ、通学路をアトラクションにする……など、ユニークな提案が生まれてきたのです。
コップを「水を運ぶ」へ。
スクールバスを「通学する」へ。
問いを名詞から動詞へと置き換えるとき、自ずと問いの重心がモノからヒトにスライドします。昨今、ユニバーサルデザインなどもよく似た発想だと思いますが、人間を中心にしたデザインの大切さが語られ、具現化されてきたように思います。ここにきて、さらに発想を自由にするべく、「動詞」で問いかけることの意義があちこちで確認されるようになってきたと思われます。
たとえば、「HONDA」は、どうしてバイクや車を開発、製造する企業なのに、ジェット機の開発を進めたのでしょうか? それは、上述してきたように、「移動する」という動詞で考えていたからに違いありません。それは、「モビリティカンパニー」という定義にも起因します。同社によると、「モビリティを通じて移動と暮らしの領域で『すべての人に生活の可能性が拡がる喜びを提供する』という目標を掲げたからにほかなりません。
ナイキ社も面白いですね。「ランニングシューズ」の未来を見つめることから、「ランニング」へとシフトすることで、私も活用していますが、「Nike+」(ナイキプラス)というデジタルサービスを生んでいます。走りのデータを記録し、共有することで、私たちが走る目的や意味合いまでも変えてしまったとも言えます。
つくろうとするものごとの名詞を動詞に置き換えること。
私が経営する株式会社本物研究所は、健康食品類や癒しの商品、家庭雑貨などを取り扱っています。まだまだ「名詞」で考えていると痛感したのです。あらためて、「動詞」で未来を問うてみたとき、どのように可能性が広がるかを真剣に考えてみたいと思って、わくわくしています。
感謝
2023.07.24:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】「名詞」ではなく「動詞」で! (※佐野浩一執筆)
2023.07.17:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】運の掴み方 (※舩井勝仁執筆)
2023.07.10:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】汚染水放出とサステナビリティ (※佐野浩一執筆)
2023.07.03:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】古事記のものがたり (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |