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この原稿は、7月28日(金)の正午に書き始めました。本日、日本の金利政策を決定する金融政策決定会合が開かれていて、午後にはその結果が発表になります。注目は前回も書きましたがYCC(イールドー・カーブ・コントロール:本来の意味は短期金利と長期金利の差を適正な水準に保つ政策)が修正されるかどうか。フライング気味に日経新聞の朝刊(電子版でその内容が28日の午前2時に配信された)が上限を0.5%には据え置くものの、厳密に運用するのではなく、多少のオーバーは容認するかどうかという議論をすることになっていると報じました。
この報道を受けて、長期金利は朝方に0.505%を付けて上限を超えました。一方、日銀は午前中に3月以来となる指し値オペ(今回の場合は0.5%で新発10年物国債を無制限に買い入れる公開市場操作で8429億円を買い入れた)を実行して、午前中の取引は0.5%ちょうどの水準で推移しています。為替相場も植田総裁が前任者の黒田総裁の異次元の金融緩和政策を変更するのではないか(具体的には今回のような市場操作をせずに市場に価格決定を委ねる政策に変更する。世界的にインフレ貴重なので、そうなると日本の金利が上がっていくことが予想される)という思惑で日米の金利差の将来的な縮小を意識して一時138円台を付けるなど円高基調で推移しています。
また、株価も日銀の政策変更は金利高に繋がることから大幅に下落して一時日経平均は500円以上下げて、午前中の終値は前日比437円安の32,453円で終わりました。徐々にではありますが、インフレの影響が日本の金融政策にも影響を与え始めたと言えそうです。タイミングよく7月の都区部の消費者物価指数が発表になり、前年同月比で3.0%上昇して伸び率は縮小しました。日本の場合は1200〜1300兆円と言われている国債が発行されているので、欧米のように金利を上げてインフレを抑え込むという政策がとりにくいと言われています。そろりそろりと金融政策の正常化を試しだしたということでしょうか。
気を付けたいのは、本格的なインフレが来てしまう恐れがどうなるかということになります。来年還暦を迎える私がようやく実感としてインフレを知っている最後の世代ぐらいになって、多くの日本人はインフレがどういうものか実感ではわかっていません。いままで、デフレ下での生き方だけでやってきたのを変更が迫られることになります。預貯金を含めて現金を大事にするだけでよかったのが、それだけでは資産が目減りするので投資などをみんなが考えなければいけない世の中が来るのかもしれないということです。個人的には、高いインフレになる確率はまだデフレに戻る確率より低いと思っていますが、警戒水準にはなったことを意識しておいた方がいいようにも思います。
今回紹介するのは、サム(アライコウヨウ)著『古事記転生』(サンマーク出版)です。著者は神話系YouTuberとしても活動されている方で、比較的若い世代からも支持を集めている事が推察されます。
異世界転生モノは、所謂『なろう系』と言われる30〜40代を中心に高い支持を集めるジャンルですが、本書はそれを古事記でおこなうというのは、斬新な発想であり非常に目の付け所がいいなと感じました。異世界というのは、一見若い世代に抵抗を持たれそうなスピリチュアルな要素を含んでいる単語ではありますが、それが当たり前に受け入れられているというのは、よく考えてみると面白い現象です。これを利用すれば、古事記を若者向けに簡単に布教できるのかもしれません。
物語の内容は、タイトルのままに古事記の世界に転生する主人公というストーリーです。
主人公のサムは脱サラしてバーを経営しているものの、経営が上手くいかず、厄介な常連客に悩ませられる青年です。ある日、客とのトラブルの際にナイフで刺された事をきっかけに古事記の世界へ転生してしまうという王道的な導入から始まります。決して能力が高いとは言えないナムチ(大国主命)という神に転生したサムが、様々な試練を乗り越えながら、必要なモノへの気づきを得たり、自らの負の部分を受け入れながら成長していく、という内容です。異世界転生の王道展開も経ながら、古事記の一部を追体験していくサム。最後には自らの課題を解消して、成長した姿をみせてくれます。
ストーリーとしては強調している部分等を考えると、万人受けするかは微妙なところではありますが、斬新な試みという点からは興味深い本でした。神話系の動画が好きな方の古事記の入り口としては面白いのかもしれません。どんな形であれ、若い人に神話の世界を知ってもらうのは大事なことだと思っています。漫画やアニメという方法で、もしかしたら十分に告知されているのかもしれませんが、大国主命の人間(神?)的成長がいまどきの若者の成長にかぶりながらの物語(ナラティブ)は、私にはとても面白く読めました。
そう考えると主要ターゲットは、もしかしたら中高年なのかもしれませんが、実は私の世代も古事記を十分に知っているわけではないと思いますので、楽しい試みだとも感じました。
=以上=
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |