トップが語る、「いま、伝えたいこと」
近年、「ウェルビーイング経営」に関して、いろんな場面で耳にし、目にするようになってきました。なにか大きな改革を……と、経営者として心が焦る感覚を持ちつつも、とても身近に解決の糸口があることを、「Harvard business Review」のある記事を読んで、気づきました。ナタリー・コーガン氏が書かれた「ウェルビーイングが高まる、驚くほど効果的な6つの習慣」より引用、まとめをし、考察を入れながら書き進めていきます。
働く人のウェルビーイングは、個人だけでなく組織の問題でもあることは間違いありません。そこには、仕事の量や柔軟性、上司、チームの文化、社風などを含め、多くの要因がウェルビーイングに影響を及ぼしています。
だったら、やはりそれは会社全体としてのアプローチが必要じゃないか……という議論になるわけですが、個々それぞれの「エモーショナル・フィットネス」とウェルビーイングの向上のために毎日実践できる、シンプルかつ科学的根拠に基づく習慣がいくつかあることを知りました。
「エモーショナル・フィットネス」とは、「自分自身」と「自分の思考および感情」、そして「他者」との間に、より支援的な関係を築くスキルである……と定義されています。フィジカル・フィットネスが、筋肉や運動能力の向上に対するアプローチであるとすると、「エモーショナル・フィットネス」は、感情面へのアプローチ。対処能力を高め、苦しみやストレス、圧迫感を軽減してくれるものと考えてよいと思います。
結論から言うと、ある意味、とてもシンプルな方法論を、継続的に行っていくということです。もちろん、それらを組織やチーム全体としての取り組みとして、個人に落としこんでいくという展開も考えられると思いました。
@自分の様子を毎日確認する
「今日の自分はどんな調子だろうか」「どんな気分だろうか」と自問します。その答えに対して判断を下したり、すぐに「修正」したりする必要はありません。ただ自覚するだけで大丈夫です。
よく、自分の機嫌は自分で取りなさい……といわれますが、まさにそのことです。ただ、忙しさのあまり、あるいはそうした習慣があまりにないせいで、自分の感情にすら気づいていないで、知らぬ間にそれがたまりにたまって爆発させてしまうような事例も少なくないようです。
実際にやってみると、「なんか今日はすこし塞ぐ感じがするなあ」とか、「今日はかなりイライラしているぞ」などと感じることがあります。しかし、そうすることで、面白いことに気持ちがなんとなく楽になっていることに気づくのです。
実際、経営者やマネージャの立場としては、職場で感情を爆発させるわけにはいかないので、自分の中に溜め置いてしまっていることがよくあるようです。そうした感情の存在を自覚することで、逆に、コントロールできる方向に変化していくということです。
A一日の間に数回、短時間で質の高い休憩を取る
仕事から離れて、エネルギーの補給と充電につながる何かをすることだと定義されていました。ここでは、「質の高い」というのが最大のポイントで、たとえばネット上でいろんな記事を読んだり、スマホでSNSをチェックしたりするのも、この本質からは離れています。ましてや、そこから先のスケジュール確認をしたり、やることリストをチェックしたりすることなどは、これには含まれません。
ちなみに、学生時代は、40〜50分ごとの授業の合間に、10分ほどの休憩時間がありました。私は、高校時代も、校庭に出て友人とキャッチボールをしたりしていました。どうやらこれは「正解」だったのですね……。
そもそも休息を取らないと、脳がうまく動いてくれません。人間の脳が最良の状態で機能し、ストレスの蓄積と圧迫感を防ぐためには、90〜120分に一度の休憩が必要だとされています。マイクロソフトが最近実施した大規模な調査では、会議の合い間に5〜10分の休憩を取ることで、溜まったストレスと圧迫感が大幅に減少して集中力が高まることが判明しました。
仕事から離れる手段としては、外に出て短い散歩をすることが勧められています。散歩によって気分が高揚し、集中力とモチベーションが高まり、継続的に実践すれば健康面でも多くのメリットがあるというわけです。昼休みにまとめて……と思いがちですが、できれば、毎回、外に出てみるのがいいのでしょうね。
B「アクセプタンス」を実践する
「アクセプタンス」とは「受容」のことです。そして、それには2つのステップがあります。1つは、状況を明確に認識し、事実に焦点を当てること。2つ目は、ストレスと困難をあまり感じることなく一歩前進できる方法を決める……ということです。
これは、「7つの習慣」でも習った記憶がありますが、要するに、「自分でコントロールできること」と「コントロールできないこと」をまず分けて考えること。コントロールできないことでいくら悩んでも、それは時間のムダだということですね。
「アクセプタンス」の2つのステップを実践することで、自分でコントロールできる物事に意識を集中させ、どれほど些細でも生産的な行動を起こせるようになると言います。その小さな進捗によって、脳に前進感がもたらされて、気分がよくなり、ほかにも実行できる有効な行動を見出す意欲が生じやすくなるということです。
これは、ぜひ組織やチームで推奨し、あるいは一日の全体の流れに組み入れて、実践していくことも考える必要があると強く感じました。
C同僚とのつながりを優先する
同僚と電話で話したり、一日の中で同僚に初めて会う時、心からの熱意を持って接するよう、意識できているか……。案外、大事にされていないですよね!
本物研究所では、朝の全体朝礼で1分間の瞑想のあと、「チェックイン」の時間を取っています。どれだけ有効に働いているかは、まだまだ検証の余地はありますが、そのときに感じたことや考えたこと、体の具合などを共有することは、とても重要なことだと認識しています。
一方、いきなり議題に入りがちな会議においても、まずは自分の感じていることや、最近起きたよい出来事などを各自に話してもらうことから始めると、よい展開が得られると聞いたことがあります。まだまだ弊社でも研究、実践の余地があることを痛感しています。
いずれにせよ、好むと好まざるは別として、人間本来が持っている人間同士のつながりを「感じる」ことは、ウェルビーイングにとって大いに重要であるということです。ストレスと不安を軽減させ、自分の気分を高めて相手の孤独感を減らすことができるようです。
D感謝する習慣を持つ
毎朝または毎晩、感謝することを3つ書き出す……というのもありです。日記にこうした感謝の内容を記すというのは、あちこちで紹介されていますよね。
舩井幸雄も、「肯定・感謝」をいつも推奨してきましたが、感謝思考を養うことは、ウェルビーイングにとても有益です。しかも、いまのように不確実で混沌とした時代にはとくに効果的だとされています。なぜなら、不確実性は実は極度のストレスをもたらし、エネルギーを消耗させるからです。人間の脳がもっとも対処しにくいものだと考えられています。
不確実性により極度なストレスを感じると、人は危険やリスクばかり探し当てるようになります。社内で意見を求めた際、リスクにばかり集中してしまう展開を体験をされている方もけっこういらっしゃいますよね。脳が、闘争、迷走状態に陥ってしまい、下手をすれば集団的にそうした状況になることもあるという証拠です。
感謝する習慣を持つことで、前向きな気持ちになり、優しくなり、ポジティブで有意義で気持ちが安らぐ物事に注意を向けるように変化するようです。困難に直面すると、そこにしか目が行かなくなるものですが、実は、それはごく一部であって、全体を占めているわけではないことに、なかなか気づけないのです。だからこそ、感謝によって、精神的エネルギーを高め、レジリエンス能力をそこから高めていく必要があります。
E仕事から離れる
舩井幸雄のように、「仕事が趣味だ」と言い切れる人は、本音を言うと、そう多くはないと思うのですがいかがでしょうか?
やはり、人は仕事から離れて、休息をとることが求められます。仕事から離れ、自分の好きな活動に費やすことを実践するとよいと思います。好きな趣味に時間を割くことです。私の場合は、大好きなプロ野球を観戦することですが、近年はスマホのアプリによって、全試合が観られたりします。これは大きいですね!
もちろん、読書やガーデニング、音楽鑑賞に楽器演奏、絵を描いたり書に親しんだり、クリエイティブな活動に身を投じるのもメチャクチャ大事です。
仕事以外の時間の「自分」を意識することで、仕事がより充実していくということだと、私は理解しています。
たいへんな状況に陥ると、仕事のことばかりに目が行きがちです。
でも、「仕事はあなたのすべてではない」のです。
仕事に一生懸命取り組みたいなら、そしてなんらかの成果をつかみたいなら、仕事以外に楽しめることを意識的に行えたらいいですね。
少し遠回りすることが、実はそれがもっとも「近道」を選択している可能性があるということ。
「急がば回れ」です……。
感謝
2023.10.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】親孝行の意味 (※舩井勝仁執筆)
2023.10.16:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】心・技・体 (※佐野浩一執筆)
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舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |