トップが語る、「いま、伝えたいこと」
かつて舩井幸雄は、「ツイていないときは、新しい意思決定はしない方がいい」と言いました。「まずは、ツキのある商品やサービスである程度売上げを上げて、ツキのある状態にしてから、意思決定する」ことが大事だということです。
山あり、谷あり……。20年、経営に関わっていると、まあよくもこんなにいろんなことがあるもんだ……と思います。包み隠さずに言うと、逃げ出したくなることもありました。しかも、舩井の言葉どおり、うまくいってないときの判断は、うまくいかないことが多かったと記憶しています。
「やっぱり、経営の神様だ……」
つくづくそう思います。
「長所伸展法」を論ずる際も、舩井幸雄は面白い表現をしています。基本は、「売れている商品やサービスは、自社の長所なのだから、それを伸ばす手立てを打つことが業績を上げるコツ」だと……。ただ、「なかなか長所が見つけられない」「どんぐりの背比べ状態で、どれも似たようなもの……」という場合へのアドバイスが、言い得て妙だなって思うのです。「よく見てみると、1つくらいはマシな商品があるでしょう。商品で見つからなければ、ツイている人でもなんでもいいから、少しでもツキのあるところを探して、それを伸ばすのです!」ということ。つまりは、じっくり立ち止まって、深呼吸して、じっくり腰を据えて見つめてみなさい……ということなんですね。このあたりは、舩井が、微笑みながら書いているように思えてしまいます。
でも、思えば、こうしたことができるくらいに冷静であれば、きっと糸口を見つけられると思うんですよね。そういう意味では、よく「心・技・体」と言われますが、「心」ってとっても大事だと痛感します。
経営者だけでなく、いまのストレスに満ち満ちた社会、あるいは時代のなかで、誰もが「心を整える」ことは最優先されるべき対象かと思います。
一般的に、よく「心・技・体」と言われます。武道をはじめ、スポーツ界でよく使われますよね。最高のパフォーマンスを発揮するためには、精神力、技術力、体力のバランスが取れていることが重要だと言われています。
ちなみに、自律神経は、この3つのうちの「心」にあたりますが、実は「心」だけを整えようと思っても、なかなかできるものではない気もします。
いくら類まれな技術や仕事力を持っていても、あるいは強靭な精神力を備えていたとしても、実は、体の調子が悪ければいい結果はなかなか出ないようです。まず整えるべきは「体」なのかもしれません。そして、「心」へのアプローチ……でしょうか。
舩井幸雄のコンサルティングのエピソードとして、象徴的な事例があります。
カンタンに言うと、つぎのとおりです。
ある経営者が、業績アップのご相談に来られました。ところが、お話を聴いてみると、どうもその方の一番の課題は「健康面」だと感じたそうです。そこで、あるサプリメントを紹介したところ、その後、幸いにも健康に自信を持たれるようになり、さらにその後、業績までもが回復していったのだそうです。
実は、こういうケースは山ほどあって、そうした経緯から、「本物研究所」をつくろうと考えたのだと、弊社の創業時に舩井から聴かされました。
体調、健康の課題は、なにかを「選択」する際にも影響を及ぼすようです。
人生を左右するような重要な選択は、体調がいいときにしたほうがよいのでしょうね。体の調子が整っていれば、馬力がありますから、いろいろなことを調べたり、多くの人に意見を聞いたりできます。
逆に、体調が悪いと、情報を集めることも、人にアドバイスを求めることも面倒臭くなり、「もう、いいや」となってしまい、情報不足などから選択を誤ってしまうことが多くなります。
一方、「心」への対処ですが、忙しいときや心がざわついているときは、自律神経の乱れを念頭に置いておいたほうがよさそうです。これまた、大事な選択はしないほうがいいのかもしれません。舩井幸雄は、忙しさを逆に謳歌していたようですが、なかなか私のような凡人には難しく思えます。
忙しいときというのは、どうしても仕事が雑になったり、いつも当たり前にやっているチェックをし忘れたり、普段では考えられないようなミスをしがちです。落ち着いているときには、当たり前に聞き流せる言葉にも、敏感に反応してしまったりします。また、そんなときこそ、「迷い」が生じることを多いかもしれません。立ち止まって、深呼吸したほうがよいのでしょうね。
「迷い」があると自律神経が乱れます。交感神経と副交感神経がバランスよく働いて、自律神経が整っていれば、「迷い」は少なくなります。
実は、ある専門家が伝えていたのですが、「迷い」と自律神経というのは、表裏一体なんだそうです。ましてや、いまの時代、世の中は「選択肢」にあふれています。経営だってそうです。不確定要素ばかりが増え、新たな方法論やツールもどんどん生まれてきています。
そういう意味では、昔と今のいちばんの違いは「選択肢」の多さでしょうね。
メールが世に登場した時代、連絡や確認は、電話、ファックス、手紙などから、一気に変化していきました。でも、そこに様々なSNSが登場してきて、さらに複雑化していきます。この人はLINE、この人はMessenger、この方はメール、あの方はWeChat……。人によって、通信手段(ツール)が異なります。
コンビニでジュース1本買うのにも、「現金」「ICカード」「キャッシュレス決済」……、しかも、「ICカード」「キャッシュレス決済」にいたっては、これまた山ほど種類があるわけです。ここでも、実にたくさんの選択をしないといけません。いっそのこと、全部キャッシュレスにしてくれればストレスはかからないのですが、日本はまだまだそこまで行きませんね……。
でも、これって、「豊か」なのでしょうか?
これって、「便利」なのでしょうか?
自律神経を整える……という観点でとらえると、まったくいいことがありません。先述したように、選択肢が多ければ多いほど、「迷い」が生まれ、それがストレスの要因になるからです。
「世の中全体が交感神経優位」をもたらす環境になっています。
とはいえ、いきなり無人島に行って、デジタルデバイスも一切持たずに生活することは不可能です……。ですから、勇気を持って、取捨選択することが急務なんだろうとしか、いまは言えません。「増やす」より「減らす」方向で考え、行動することが、「迷い」を減らし、ストレスを減らす重大な選択なんだろうと思えます。
いずれにしましても、「心・技・体」の充実は、人生における重要で大きなテーマです。まずは、「体」を整え、そして「心」を整える……。そのために、ストレッサーとなり得るものを取捨選択して、減らしていく……。
なかなか現実味を帯びない議論であることはわかっているのですが、だからこそ、具体的行動に落とし込み、着手する必要があるとも痛感します。
感謝
2023.10.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】親孝行の意味 (※舩井勝仁執筆)
2023.10.16:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】心・技・体 (※佐野浩一執筆)
2023.10.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】真面目な元同僚 (※舩井勝仁執筆)
2023.10.02:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】エモーショナルフィットネス (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |