トップが語る、「いま、伝えたいこと」
この原稿はいつも金曜日の朝に書きます。前半部分はその時の日経新聞の電子版からトピックスを拾って書くことが多いのですが、今回はいろいろ気になる記事がありました。
まずは、9月の消費者物価上昇率が2.8%で久しぶりに3%を下回ったということです。
経営でも投資でも短期で考えるとトレンドの逆張りをするとうまくいくことがあります。いまは、みんなが値上げを模索している時なので逆に値下げ戦略を採るとインパクトがあるような気がします。銀座に出店した安売りで有名なスーパーが話題になっていますが、そういう戦略もありなのかもしれません。
次は中国株が調整局面にあるという記事でした。様々な株価を支える策を政府主導で行っているにも関わらず、あまり効果がなく、上海総合指数が年初来、安値を記録して節目の3,000に近づいてきています。10年間の指数の推移をグラフで見てみたのですが、そんなに大きく下がっている印象は感じませんでした。日本のバブル崩壊時のような極端な下げは起こっていませんが、危ない水準が近づいているのかもしれないというぐらいの観測記事です。アメリカと中国のどちらとより仲良くすべきかいろいろな意見はありますが、経済的にみれば中国の方が競合する部分が多いのでどちらかと言えばアメリカ寄りの方が正解かなと私は思っています。
一番気になったのは、日本株の予想変動率が急上昇しているというものです。昨日の「日経平均ボラティリティ・インデックス(VI)」が前日比7%高になったというものですが、これで12連続営業日続けて節目の20を超えています。VIは恐怖指数とも呼ばれていて、20を超える状態が続けば株価が暴落する恐れがあると言われています。
いまの金融はデリバティブ(金融派生商品)がほとんど動かしていると言っても過言ではないと個人的には考えています。デリバティブの価格を出す根拠に使われているのが、ブラック・ショールズ方程式というものですが、これは相場の変動率を基に計算を行うものです。
だから、VIが20を超える水準になってくるとデリバティブが暴走して相場の乱高下(こういう場合は大体暴落することがほとんどです)を起こす確率が高くなっているということになります。私は年内の相場の大暴落はなくて、悪くても日経平均で3万円を多少下回るぐらいでは持ちこたえるのではないかという意見を持っていますが、そろそろ逃げ時というかいったん手仕舞うタイミングも探っておくことが大切だと思っています。その時に、一番見ておきたい指数がVIだと思っているので、関心がある方は参考にしていただければと思います。
今回紹介する本は秋山利輝著『人生を輝かせる親孝行の心得』(PHP出版)です。昨今、親を軽視する傾向は、若い年代を中心に広がっているように感じています。冒頭に出てくる親ガチャは流行りの言葉です。自らが決めることができない、どこに生まれてきたかという環境、親によって人生が実質的決められてしまうという意味ですが、確かに敬意に欠けたものだと感じます。また毒親という言葉も本来の意味とは違う方向に使われる事が増えてきているようで、本書における使い方は若い人の感覚で見れば誤用かもしれませんが、現代ではこれに近い認識なのかもしれません。
そんな時代では、親孝行をしろと言われても、その意味を説明するところから始めなければなりません。その点について、本書は一つの答えを教えてくれるものです。同時にそれによって得られるメリットも解説されているため、若い人にも受け入れられやすい要素もあり、実践に基づいているだけに説得力があります。「親孝行の重要性をいくら説かれても、その関係が複雑であればあるほど難しい。特にその場合は、秋山さんの教えを全て飲み込むのは難しいかな」という読後の感想を、若い友人からもらいました。「それでも内容から理解できる部分を探し、受け入れていく事ができれば、親孝行が可能になる関係性を築けるとも思う」とも言っていました。
価値観は生きる年代によって変容します。尊属殺人罪(1995年の刑法改正でなくなった)が存在するなど、どのような立場や相手であっても親や目上の人間を敬うようにある種、矯正されていた時代を経験した方と、若い年代の意見が合わないことは仕方のない事です。秋山社長の意見は少数派としてならまだしも、多数派として時代に適応するのは難しいのかも知れません。丁稚奉公も、今の時代にあったやり方とは言えない。忌憚のない言い方をしてしまえば、若い年代の人からすれば秋山社長はとんでもないパワハラ社長かもしれません。
それでもしっかりと噛み砕いて説明して理解すれば、彼らもその中に生きるのに必要な要素が詰まっているという事を、きっと理解してくれるはずですし、このやり方が合っている若者も一定数は存在するでしょう。読み手によっては賛否がおこりそうな内容ではありますが、この価値観が当たり前だった時代の存在を思い出し、自らのルーツや一族の積み重ねの大切さを教えてくれる、そんな一冊でした。
本気で超一流の職人を育てることが日本を強くするという考えを持っていて、超一流の政財界人にファンが多い皇室ご用達レベルの高級手作り家具を製作する秋山木工を経営されている秋山社長には、個人的にも大変お世話になっています。本書をいただいた時に、私は秋山社長とは正反対の生き方をしていますという話しをさせていただきましたが、80歳になられたいまでも情熱をどんどん増しながら日々活躍している姿には頭が下がります。本書をぜひ若い人に読んでもらって、そこから何かを学んでいただければありがたいなあと思っています。
ちなみに秋山社長の本は中国では日本以上に大人気です。中国でも若者との接し方がわからなくなっているようです。丁稚制度で職人を育て続けるということは、日本の素晴らしさのひとつなので、じっくりと読み直したいと思っています。
=以上=
2023.10.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】親孝行の意味 (※舩井勝仁執筆)
2023.10.16:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】心・技・体 (※佐野浩一執筆)
2023.10.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】真面目な元同僚 (※舩井勝仁執筆)
2023.10.02:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】エモーショナルフィットネス (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |