トップが語る、「いま、伝えたいこと」
景気後退がやっと現実味を帯びてきたようです。そもそもFRB等が行っている利上げはインフレを抑制するために景気の過熱を抑えることが目的で行われています。好景気が続くことに慣れてしまっているアメリカの金融市場の人たちは、利上げが止まったら来年以降金利が引き下げられて好景気に再びなるという幻想を信じてというか織り込んで、株価等はなかなか下がらずにいました。ようやく金融当局はインフレを抑えるためだったら景気後退をまったく厭わないという姿勢であるということを受け入れつつあるのではないでしょうか。
アメリカでは全米自動車労組(UAW)のストは開始から3週間が過ぎました。大統領選挙を睨んでバイデン大統領が現役大統領としてはじめてストに参加するなどの話題はありますが、テスラという電気自動車の巨人が君臨している現状では、大手3社のストを見ていても、ますますEV(電気自動車)化が進むだけで、労使共に没落していくだけだろうなという風に感じてしまいます。日本のEV化はそれこそ絶望的な状態だとザ・フナイの四天王のおひとりである船瀬俊介先生はおっしゃっていました。気になる方は、船瀬俊介先生の「EVガラパゴス」(ビジネス社)をぜひお読みください。
私は、EVに関する知見はほとんどありませんし、いまのところ自分ではEVに乗るつもりはほとんどありません。都心のマンション暮らしなので、そもそも充電設備を自宅に設置するのは難しいですし、それほど新しいものが好きなわけでもありません。ただ、自動車好きの友人の何人かはテスラに乗っていて、何回か乗せてもらったことはあります。加速感がガソリン車とはまったく違うそうで、まだまだ不便なのは事実なのだと思いますが、環境問題を真剣に考えるのならいつかは世界中の車がEV化するのは間違いないと思います。新しいものを取り入れるのに敏感な方は、ぜひ挑戦してみていただければと思います。
それにしても、日本は本当にガラパゴス化(他と交わらないで独自の発展をすること)しているような気がします。IT化やEV化、それに生成AIの利用がどんどん当たり前になっている先進国の中で、社会的にはほとんど真剣に取り組んでいる雰囲気が感じられません。ガラパゴス化が必ずしも悪いわけではないとも思いますが、金融マーケットも含めてそれで日本ばかりが損をすることからはいい加減に脱却した方がいいのかもしれません。上下巻合わせて千頁近い大著ですがウォルター・アイザックソン著「イーロン・マスク」(文藝春秋)がベストセラーになっていますので、ぜひ挑戦してみていただければと思います。
ちょっと逆張りにはなりますが、不景気がいまに至るまで常態化している日本の方が、欧米が景気後退してきたときには、慣れているというアドバンテージがあるのかなと思っています。目先の流れとしては、アメリカ市場の乱高下に引きずられるとは思いますが、長い目で見れば日本のマーケットが見直されるということもあり得るのかもしれません。為替の円安が止まりませんが、さすがに政府当局の介入も含めていまの水準よりも大きく円安になることは考えにくいので、リスクを取る勇気があるのなら日本市場はおもしろい局面にあると言えるのかもしれません。
今回紹介する本は鈴木誠一郎著「インナーブランディングのすすめ 共感され、選ばれる企業へ」(ビジネス教育出版社)です。昨今、若い人を中心に以前に比べて会社に対する忠誠心、愛社精神を持たない人が増えているというのが定説です。その状況はあまり健全であるとは言えず、会社にもっと愛着を持ってもらうというのは、経営者にとって課題の一つと言えるでしょう。それを解決するのが、インナーブランディングという方法です。
本書によるとインナーブランディングの定義は【自社の従業員を自社のファンにし、さらにファンを増やしていくためのすべての活動】という事で、まさに現代に必要とされるものだと言えます。著者の鈴木さんはインナーブランディングの普及に積極的に取り組んでおり、第一人者とも言える方ですので、その点も本の説得力を上げる大きな要因となっています。
鈴木さんは船井総研の子会社時代に在籍していたことがあり、仕事の面ではほとんど関わりませんでしたが、当時からとても優秀なIT系のコンサルタントだと尊敬していました。
本書の内容ですが、インナーブランディングの基本的な中身の解説から、その応用までを丁寧に書かれています。二年間かけて書き上げたものであるらしく、芸能、身近な商店など分かりやすいモノに例えながら解説がされていくので、頭に入りやすく素晴らしいです。
また知識面だけではなく、終盤は実際の事例紹介にページ数を多く割いている事から、様々なケースに沿ったパターンを把握する事も可能な構成です。同じ業種の会社であれば、大いに参考になるはずです。
インナーブランディングはまだまだ認知度が低い分野だと、最後にまとめられています。
しかしその重要性が極めて高い事は本書を読めば理解でき、知名度が経営者の方は先んじてその意識を社内に持ち込むことができれば、他社に差をつける良い材料、きっかけになるのかもしれません。
鈴木さんと一緒に仕事をしていた頃は、コンサルタントとして成功するためには、ある程度のはったりが必要だった時代だったので、実力の割に鈴木さんは損をしているな、と思っていました。本書も彼の真面目さがにじみ出ているような内容になっていますので、読後感がとても清々しいのが特徴だと思います。やっと時代が追い付いてきたのかもしれないなというのが私の感想です。本質的に会社の体力をつけるためには必読の書だと思います。
=以上=
2023.10.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】親孝行の意味 (※舩井勝仁執筆)
2023.10.16:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】心・技・体 (※佐野浩一執筆)
2023.10.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】真面目な元同僚 (※舩井勝仁執筆)
2023.10.02:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】エモーショナルフィットネス (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |