トップが語る、「いま、伝えたいこと」
円安が止まりません。再び160円台に突入して一部専門筋の間では170円台になる可能性も言われ始めています。相場とは面白いもので、この観測筋という人がこれぐらいはあるかもというアドバルーンを上げて、これを目標に相場が動いていく傾向があります。最近までは168円もと言われていたのが、少し切りあがってきたようで政府日銀の為替介入次第ですが、まだ円安が続くのかもしれません。160円台が定着してくると金利が上がってくるという懸念が強まってきます。実際にauじぶん銀行が新規の住宅ローンの優遇レートを、同行が2015年に住宅ローンに参入して以来はじめて上げるというニュースが大きく流れています。
ある意味、企業に対する貸し出しレートなども上がってくることが予想され、いままでの経営者によっては最適なインフレは進むが金利は上がらない状態から、調達金利も変動するという当たり前の状態が復活していくことになります。問題は、金利がある世界をいまの大企業や中堅企業の経営者が経験したことがないということです。大きく見れば、インフレで実質的な返済金額は下がっていくのですが、借入を計画するときの返済コストは確実に上がり、大きな決断をしなければ借入れをして新規事業はできないことになります。デフレの時代はそれが幸いしたのですが、インフレの時代は給料を上げていかなければ生き残れなくなるので、新規事業参入の決断ができなければ中期的に見れば負けていくことになります。
経営者に限らず、私たちは新しい時代に適合するための頭の切り替えが必要になります。例えば、高齢者で貯めた預貯金という金融資産で余生を過ごしていこうという計画を立てていた人は、インフレの定着によって資産の目減りに対応しなければならないということになります。そうすると、預貯金ではなく株式や投資信託などの資産運用を考えなければいけないことになりますし、デフレの時代のようにいつまでも節約で乗り切るという発想では上手く生きていけなくなります。相場の世界は甘い世界ではありませんが、それなりの勉強をしていただいて生活防衛に頭を切り替えていかなければいけないのかもしれません。
ただ、あまり悲観的になり過ぎるのもどうかなとも感じます。100円を切るような円高時よりも日本国として大きく考えれば対処の方法はいくらでもあると思います。まず、輸出がしやすくなるのですが、ご自分の分野で何が海外に売れるかを考えてみるのはいかがでしょうか。海外に売り込まなくても多くのインバウンドの観光客が来てくれるようになり、その消費は7兆円になり、輸出産業として考えると半導体を超えて自動車産業に次ぐ2番目に大きな産業になりました。これは、実はイタリアやフランスなどのヨーロッパの大国が経てきた道であり、先人の遺産を使って稼がせてもらうステージに国が成熟してきたということだと捉えて、ここで自分ができることを考えてみるのはいかがでしょうか。
第2次安倍政権が始まってまだインバウンドが始まりだした頃のことですが、大阪の寿司屋に入ってびっくりしたことがあります。
小さなカウンターには中国人の家族連れが座っていたのですが、大将が下手な(失礼しました)英語で家族連れを大笑いさせていました。大笑いする度に高級なネタを注文していたのが面白くてしばらく観察させていただいていたのですが、大阪商人のたくましさを垣間見た思いです。舩井流ではいいところを見つけ出してそれを活かすのが基本ですので、この大将に見習って遠慮なく儲ける道を考えていただければと思います。
今週は佐藤芳直著『恩送り』(径書房)を紹介させていただきます。現在の日本は、社会や経済面では斜陽傾向にあります。以前のような経済的な強みは失われ、少子高齢化は年々加速し、未来に希望を見出すのが難しい状況は日々悪化しています。そんな中で、船井総研時代の大先輩で当時は上場会社としては最年少の取締役になられた佐藤先生は、日本が持つ独自の文化や礼儀正しさ、長い時間をかけて築き上げてきた信用、世界中から尊敬と関心を集めるそれらを大きな強みとして見出し、それは『恩送り』によって作られたものである事を説いています。
日本に多くの観光客が訪れる理由、他人を思いやれる行動が賞賛される理由、それらは全て、その素晴らしい文化がもたらしているものです。『情の世界』という言葉が本文中に出てきますが、いまでもそれは色濃く残っており、それによって一見非合理のようで、実は合理的である社会が生み出されているのは、この国で過ごしていれば誰もが実感する事はあるでしょう。優れた道徳観や知性を多くの人が共有し、個人ではなく集団で生きる事ができる、これを広い範囲で実行できるのは、日本の特異性であり強みとなると考え、恩送りによって未来へと繋いでいく事ができれば、まさに理想的な循環です。
しかしいまの時代、それらは少しずつ失われつつあるモノでもあります。どうやって継承していくのか、恩送りを続けられるのか。相応しい形を模索するという方法も考えられますが、最も効果的なのは、自分が恩送りの意識を忘れずに、佐藤先生のように発信し続ける事で広めていく事でしょう。後に続く人の事を考えて善く生きる、祖先からの積み重ねの上に今の自分がある。祖先から頂いたものを未来へと受け渡していく事は大切な使命である、それを肝に銘じて生きていく、そんな意識を持っていきたいと改めて思わせてくれる一冊でした。
佐藤先生には「ザ・フナイ」の200号に登場していただいて、舩井幸雄のことを存分に語っていただきました。父が一番愛した愛弟子だったことは自他ともに認める大きな存在ですが、舩井幸雄ならいまの時代言うであろうことを、ある意味格調高く代弁していただいている本だとも言えるので、ぜひお読みいただければと存じます。
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2024.07.22:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】だれかのため→だれかを思う (※佐野浩一執筆)
2024.07.15:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】日本文明と科学 (※舩井勝仁執筆)
2024.07.08:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】老荘思想と舩井幸雄 (※佐野浩一執筆)
2024.07.01:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】恩送り (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |