トップが語る、「いま、伝えたいこと」
先週の木曜日に日経平均株価が42,000円を超えて史上最高値を順調に更新しました。政府日銀の為替介入があったのではないかという憶測も流れているようですが、アメリカの消費者物価指数が市場の予想よりもかなり上げ幅が低かったことから、アメリカの9月の利下げがかなり現実化したという見方から、一時的には157円台という急激な円高になりました。その影響やアメリカのハイテク企業が多いナスダック市場が大きく下げたこともあり、金曜日の日経平均は一時的には千円以上下げるなど、乱高下をしていますが、大きなトレンドで言うとまだまだ日本の株価は上がっていくような感じがしています。
これは、アメリカに比べれば日本の株価は大きく出遅れていて割安感が強く感じられることが大きな原因だと思います。円安の効果は企業業績には確実に出ています。日本企業は為替安になったからといって残念ながら急に貿易黒字が増やせるという状態にはありませんが、大手企業の大半は国内よりも海外での事業が大きくなっているケースが多くなっています。その場合、海外で上げた利益が円に換算されると利益額が大きくなるので、業績がよくなるという効果があります。また、NISA等を使って海外の資産に投資をするケースも増えていて、この場合でも円ベースでの評価はかなり高くなり、投資家心理をかなり強気にさせる効果があります。
また、日本株高の大きな要因としては相変わらず外国人投資家の大幅な買い越しが背景にあるのですが、コーポレートガバナンス(企業統治)改革が大きく進み、海外の投資家から見た日本の大企業への投資についての安心感が広がっていることも背景にあるように思います。日本で暮らしている一般的な感覚で言うと、円安や原油高などを原因とする悪いコストプッシュ・インフレに悩まされていて、どこの景気がいいのかという感覚を持っている方も多いと思うので、なぜ株価だけが上がっているのか、よくわからない方も多いと感じますが、着実に日本企業や日本の株式市場の改善がコツコツと確実に積み重なってきたことの裏返しだと考えてもいいのだと思います。
心配なのは、日米とも政治の行方になるのだと思います。アメリカはトランプ大統領の再選が確実視されるようになってきています。いろいろな意見があると思いますが、マーケットから見れば何をするかわからない困ったリーダーだという評価はよりマクロには定着していると思います。また、もしトランプ大統領が負けるようなことがあれば、真剣にアメリカが内戦状態に突入するのではないかということも心配されるような状態で、どちらにしても不確実な4年間を選ぶか、内戦を選ぶかのどちらがましかという選択を迫られることになります。仮にトランプ大統領が選ばれて4年間の不確実性に耐えたとしても4年後には憲法の制約で再選はあり得ないので、その時までに大きなリスクを徐々に貯めていくことになりそうです。
日本は、秋に岸田総理の自民党総裁としての任期が来ますし、世論調査等の不人気を見ると不確実性が高まっています。かといって、自民党の中に他の有力候補を見出すことも難しく、一方の野党側も都知事選の結果を見ると、野党第一党から出馬した有力候補が2位にもなれずに惨敗したこと等を見ると、果たして政権奪取や担当能力があるのかに大きな疑問符がついてしまっている状況になってしまったともとらえられます。不思議な話ですが、岸田総理の鈍感力は大きく、もしかしたら世論調査に一喜一憂せずに総裁選を勝ち抜き、来年に任期満了に伴う総選挙に突入していくというシナリオすら考えられるかもしれず、その行方は誰にも分らないとう不確実性があります。この政治の不安定さが現況の最も大きなリスクと言えるのかもしれません。
今週は、武田邦彦著『理系思想で読み解く 歴史の大ウソを打破する日本文明の真実』(ビジネス社)を紹介させていただきたいと思います。年間購読いただいている読者の皆様には今月末にお届けする(大手書店では8月3日発売予定)『ザ・フナイ』の紙面上で対談をさせていただくために読ませていただいた本になりますが、本書ではたびたび物議を醸す主張で注目を浴びる武田先生らしく普通からは少し違った視点から、日本の文明、歴史について語っています。
タイトルだけを見ると少々奇抜な内容を想像してしまいそうですが、内容は近年だけではなく、日本文明を4万年前から辿っていくという、とても本格的なもの。似たようなジャンルの本はあっても、石器のナイフや縄文土器からページを割いていくのはなかなか見られないのではないでしょうか。時代を巡りながら、日本の独自性、古くから非常に優れていた技術力について多角的な視点から見ていくのは素直に面白みがあります。何気なく知識として持っていた過去の建築物や工芸にについて、実はとても優れた技術が活用されていた事を知り、とても興味深く感じました。
ただし、紹介されているのは優れた部分だけではありません。有名な『もんじゅ』等、失敗した技術についても事細かに書かれています。そして賛否両論である遺伝子組み換え食品、地球温暖化関係についても、武田先生の著書ということで項目があり、電気自動車、リサイクル関係、昆虫食など、話題のツボもしっかりと抑えられている印象もあります。また科学や工業について、現在の問題点についても触れられており、今後、改善のための課題を提唱するなど、読み終えてみればタメになる内容でありました。
失敗例について、先生は技術ではなく周囲の環境問題であると締められています。実際、過去の技術について振り返り検証していく事で、新しい発見などが期待できれば、面白いのかもしれません。対談のために本を読ませてもらうまでは、テレビにご出演されるよくいらっしゃるタレント科学者だと思っていましたが、その知見の深さには圧倒される思いがいまではしています。素人にもわかりやすいように解説してくださっていますので、フィーリングの合う本を選んで武田先生の本を1冊読まれることをお勧めしたいと思います。
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2024.07.22:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】だれかのため→だれかを思う (※佐野浩一執筆)
2024.07.15:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】日本文明と科学 (※舩井勝仁執筆)
2024.07.08:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】老荘思想と舩井幸雄 (※佐野浩一執筆)
2024.07.01:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】恩送り (※舩井勝仁執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |