トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄の遺志を引き継ぐ舩井勝仁と佐野浩一が、“新舩井流”をめざし、皆様に「いま、伝えたいこと」を毎週交互に語っていきます。
毎週月曜日定期更新
2024年9月16日
自分探しという呪縛 (※佐野浩一執筆)

 自分が本当に輝ける場所を見つけたい……。
 自分をもっと活かせる仕事がある……。
 自分の人生、このままでは終われない……。

 様々な理由で、多くの人が「自分探し」をしたことがあると思います。
 自己啓発本を読んだり、海外に行ったり、自己分析ツールの力を借りたり……。とくに若い人ほど、あるいは若いころに、いろいろ試してみた経験があるのではないかと思います。就職活動のころは、躍起になって「自分探し」に没頭する人も少なくないのではないかと思います。
 でも、正直なところ「これだ!」という自分を見つけられた経験って、おありですか?
 読書にしても、旅行しても、研修やセミナーにしても、その瞬間、いやその日くらいは新しい自分に出会った気がして道が開けたような感覚を持ったとしても、あっという間にいつもの自分に戻ってしまう……。残念ながら、こうしたことの繰り返しだったという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか? もちろん、私もその1人です。
 いま、「うつ」をはじめ、様々なメンタルの問題で悩む人が増えてきています。その結果、自分を責めたり、自己否定してしまい、さらに自分で自分を苦しめてしまう事例も少なくありません。だからこそ、カウンセラーとして、今回のことを書きたくなったのです。
 よく「自分らしく生きよう」ということを言う人がいますが、私は自分らしく生きなくていいではないかとさえ、思うことがあります。
 山あり、谷あり……、自分が好きになったり、嫌いになったり、自己承認できたり、自己否定したり、そんな紆余曲折が人生であり、それこそが“普通”であって、そして、それらが全部、自分自身、つまり「自分らしさ」だと考えた方が、悩まなくて済みます。
 そもそも、自分らしさ満載っていう人は、なかなかいないのではないでしょうか?
 自分らしさと幸せはイコールではなく、自分らしく生きていて幸せな人もいれば、自分らしく生きているわけではないけれど幸せな人もいます。
 いま、イキイキしている人たちは、自分らしさが見つかったからイキイキしているわけではないと思います。もちろん、いろいろやっていくうちに、自分らしくなっていったという人はいるとは思いますが、「自分探しをして明確な自分が見つかった!」と言って、幸せになった人はあまり見たことがないようにも思えるのです。
 「カウンセリング」に関わっていると、この「自分探し」に悩んでいる方もけっこう多いと感じています。でも、1つの結論を言うと、「自分探し」のゴールは、自分が見つかることではなく、自分探しをやめることじゃないかと考えるようになりました。
 「自分とは何か?」
 きっと、この問いは、人生を終えるまでよくわからないんじゃないですかね……。
 たまたま高い能力を持って生まれたとしても、単に上手にできるからとやっていたら、生活していけるようになったという場合、その能力を「自分らしさ」だとはとくに感じていないように想像します。
 仕事をするうえでは、自分らしさはそれほど重要ではなく、社会や組織のなかで求められることをやっていくことのほうがはるかに重要です。「石の上にも3年」という格言がありますが、この言葉がそのことをよく表しています。
 自分らしい生き方として、そして、自分の能力を最大限に活かす方法として、独立起業というものがあります。でも、一説によると起業後の失敗確率は94%。やはり、その道にも相応の苦労があって、それを「自分らしさ」だと断言できる人もおそらくいないでしょう。
 にもかかわらず、「自分探し」が終わらない主な理由は、まず、自分探しには決して終わりがない……からだと思います。
 「自分探し」をしていないときのことを考えてみます。このときは、きっと、人生や仕事、日々の生活において、迷いや悩み、不平や不満、あるいは不安をあまり感じていないときではないでしょうか? でも、それらを自覚したときに、「自分探し」のスイッチが入ります。ということは、人生全般を眺めてみると、そうした迷いや悩みがなくならない限り、「自分探し」は続いていくものです。
 だからこそ、自分で「自分探し」をやめるための線引きでもしない限り、終わりがない……と結論しておく必要があります。
 2つ目の理由は、「自分探し」がライフワークになってしまっていることです。ライフワークとは、一生を通じて取り組む仕事や活動のこと。「自分探し」がライフワークになっていると、当然ながら、自ら進んで止めようとする機会は絶対に訪れません。
習慣化された言動は無意識に行うことのため、意図的に止めるように自分を持っていかない限り、「自分探し」を続けてしまうことになります。
 3つ目の理由は、「自分探し」への期待値が高すぎることです。
 とくに、「自分探しの旅」にその傾向が強いと思いますが、非日常的な経験・体験は、基本的には日常に戻ればその効果は薄れていきます。書物やYouTubeなどを活用して「自分探し」を成功させるには、それなりの工夫と努力が絶対に必要です。そういう意味では、「自分探し」への期待値は適正か低いくらいでちょうどいいと言えます。
 結局のところ、「自分探し」で悩むより、「いま、ここ」を意識することが大切な気がします。そして、「今ここ」といえば、やはり「マインドフルネス」です。
 いま、この瞬間の出来事に意識を向けて、呼吸に集中し、何も判断せず、評価せず、とらわれずに、ただありのままの自分に注意を向けます。
 そして、それを受け入れる……。
 邪念が浮かんできても、「あ、邪念が浮かんだ……」と確認して、すぐに呼吸に集中し直します。
 実は、これを繰り返しやっていくことで、いろんな気づきが生まれてきます。それは、明確に言葉にできるものもあれば、そうでないものもあります。でも、それこそが、「自分自身」なのかもしれませんね。そのうち、「自分探し」をする必要がなくなります。
 なぜなら、解決策も自分自身もすでに自分の中、自分の引き出しの中にあって、外に答えを求めないでいいとわかってくるからです。
 最後に、これは書こうかどうかずいぶん躊躇ったのですが、やはり書かせていただくことにしますね。
 もしいま、自分自身のレベルが5だとしましょう。そして、これからレベル10を目指していくとします。この場合、きっと、自分の強みを活かしたほうが圧倒的に有利です。 
 これは、いわゆる「長所伸展法」ですよね。
 では、同じくレベル5の状態から、レベル100を目指すとしましょう。少しイメージしてみてください。これだけ遠い、大きな成長を求めてしまうと、もうはっきり言って、今までの強みなんて通用しなくなると感じられませんか?
 「自分らしさ」をベースにしてしまうと、レベル100には到達し得ないことを、感覚的に誰しもがわかっているのです。もちろん、日々の努力や積み重ねが大事なことは、承知しているつもりです。でも、このレベル100を達成した人も世の中にはたくさん存在します。きっと、その方たちは、「自分らしさ」とはまったく全く関係ないやり方であったり、思わぬチャンスを得たり、まったくの別分野にアプローチしたりしてきている……。
 大きな夢を叶えるためには、「自分らしさ」という呪縛から抜け出すことも必要なんだと思います。あの大谷翔平選手だって、メジャーリーガーになるというとてつもない夢を叶えるために、とてつもない努力を重ねたはずです。でも、「自分らしさ」や「自身の長所」だけで勝ち得たとは、とうてい思えないのです。
 栗山英樹監督との出会い。世の中や専門家は、是か非かの真っ二つの見解……。
 そして、監督は「二刀流」の背中を押した……。
 そう、結局は、これも「天のはからい」。
 自分らしさの延長線上ではない……。

 「いま、ここ」を見つめること。
 結局は、「天のはからい」と知ること。
 そして、自分らしさの枠をはみ出すことが必要なのでしょうね。
 
 すると、自分のことで悩まないで生きていけるのかもしれませんね……。
                          感謝

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2024.09.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】人間失格 (※舩井勝仁執筆)
2024.09.16:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】自分探しという呪縛 (※佐野浩一執筆)
2024.09.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】沈む日本 (※舩井勝仁執筆)
2024.09.02:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】長所伸展法の夜明け前 (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長
1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。
2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了)
著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。
佐野 浩一(さの こういち)
株式会社本物研究所 代表取締役社長
株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長
公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事
ライフカラーカウンセラー認定協会 代表
1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。
著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。
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