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アメリカの金融政策が転換されました。アフター・コロナの状況での厳しいインフレ曲面が続いていたことに対応して、一気に利上げをしてインフレ抑え込みを最優先していたものを転換して、通常の2倍に当たる0.5%の利下げを先週FRBは決定して実行しました。年内にもう何度か都合0.5%、そして来年も合わせて1%程度の利下げをしていって、最終的には通常の金利レベルだと考えられている2.9%程度まで下げていくのではないかというのが現在のところのマーケットのコンセンサスになっているようです。
アメリカのマーケットは、今回のFOMC(公開市場委員会)での利下げが0.25%なのか、0.5%なのかで意見が分かれていて利下げ当日の株式相場は下がって終わりました。ただ、考えられていた中では大きな利下げだったにも関わらず、日本の株式市場がどちらかというと円安傾向になったことを好感したことと米景気のソフトランディングを織り込む傾向が強くなったこと等により大幅に上げたことを機に世界的に株価が上昇する流れを作り、その流れに乗る形で翌日の米株式マーケットは各指数が史上最高値を付けるところまで上げて終わりました。
2週間前に書いたように、植田日銀総裁に続いてパウエルFRB議長の手腕をマーケットが認めて、金融政策について及第点を付けたことがマーケットの上昇に反映されていると考えてもいいのではないでしょうか。ただ、アメリカの足元の景気は決して手放しで喜べる状況ではないようです。厳しいインフレの結果、物価が高騰している状態で定着してしまい、貧困層はより厳しい状況に置かれていて、日本よりはかなりの高値とはいえ最低賃金で働いている人たちは家を確保するのも厳しい状況になってきているようです。また、都市の治安悪化が著しく、テレワークの普及もあって大都市からの企業の撤退が相次ぎ、商業不動産マーケットは悲惨な状態になっているようです。
そんな中で、あまり希望の持てない大統領選挙が戦われていて、どちらが勝っても金融政策的な観点から見ると、問題が多いものが打ち出される懸念が大きくなっています。FRBはその懸念への対処も念頭におかなければいけないという変数を抱えていると考えなければならないのだと思います。
日本の株式マーケットに関しては、足下は徐々に安定した動き(日経平均が年内に4万円)を模索するようになるのだと思います。自民党の総裁選挙が行われていて、誰が勝ってもすぐに解散総選挙という流れになるとは思いますが、それでも自公の与党で過半数割れは想像しにくく、そう考えると比較的安定した政権運営を期待できると思います。日銀の金融政策に安心感があるということと合わせると、外からの影響で大混乱する可能性はまだまだ残りますが、長期投資をしている方にとっては絶好の買い場がしばらくは続くと考えてもいいのかなと思います。
今週紹介するのは、異例の小説ですが新堂冬樹著『シン人間失格』(ビジネス社)です。
実は、本書は『ザ・フナイ』で連載されていた新堂先生の小説を単行本化したものです。作家として二つの顔を持つ事で有名な新堂先生ですが、本書はゴリゴリの『黒新堂』。裏社会関係というよりは、性格の破綻したインテリ芸能人である主人公の暴走劇という内容で、主人公の森田は表向きの顔は非常に温和な教育の専門家です。その部分だけを切り取れば『白新堂』に登場しそうな人物ですが、その裏側は非常に闇深いもので、新堂先生の作家としての二面性が組み合わさったような森田ですが、とにかく黒寄りに描かれています。下衆という言葉がよく似合う、似合いすぎる、人間として最低の主人公。破綻した性格、異常な性欲、その上でケチ臭く、異常に高い向上心と完璧なまでの自己中心主義で小説でなければ登場し得ないほど最悪の人格があぶりだされています。
帯に載っている『何度も原稿を破り捨てそうになった』という編集A女史のコメントが示すように女性からすれば、いや男性視点でも嫌悪感しか残らないような、まさに人間失格な彼ですが、強烈な生命力を持ち最後まであの手この手で折れずに生き続ける姿は、終盤になると清々しささえも感じてしまうレベルです。ここまで強烈なキャラクターを生み出せる新堂先生の力量は流石だなと感心するほかありません。
謀略を張り巡らせ、他人を陥れる事を厭わず、成り上がっていく森田。非常に悪知恵の働く彼ですが、欠点である堪えきれない性欲に起因するピンチに何度も見舞われ、その度にそこまでするかという方法で切り抜けていく。簡単に言えばその繰り返しのような話です。血を分けた家族にすら容赦せず、ただひたすらに自らの利益の最大化を追い求めていくその姿。現実に存在するならば、あまりお近づきになりたくはない森田ですが、創作の中の存在であるから許される、と思いたいものです。
ちょっとネタバレ気味になってしまいましたが、この小説が『ザ・フナイ』に連載されていた理由(現在も新堂先生の新しい銀座の夜の世界を舞台にした小説『雛鳥は夜に羽ばたく』が好評連載中です)を考えながら、生理的に受け入れられないと言う方も間違いなく多いであろう小説ですが、楽しんでいただければと思います。しかし、好きな方はとことんハマる事のできるそんなタイプの小説である事は間違いないでしょう。きれいごとだけを伝えているわけではない、船井本社グループの新境地になっていけばいいなあと思っています。
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2024.09.23:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】人間失格 (※舩井勝仁執筆)
2024.09.16:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】自分探しという呪縛 (※佐野浩一執筆)
2024.09.09:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】沈む日本 (※舩井勝仁執筆)
2024.09.02:【いま 一番知らせたいこと 、言いたいこと】長所伸展法の夜明け前 (※佐野浩一執筆)
舩井 勝仁 (ふない かつひと)
株式会社船井本社 代表取締役社長 1964年大阪府生まれ。1988年(株)船井総合研究所入社。1998年同社常務取締役 同社の金融部門やIT部門の子会社である船井キャピタル(株)、(株)船井情報システムズの代表取締役に就任し、コンサルティングの周辺分野の開拓に努める。 2008年「競争や策略やだましあいのない新しい社会を築く」という父・舩井幸雄の思いに共鳴し、(株)船井本社の社長に就任。「有意の人」の集合意識で「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続けた。(※「にんげんクラブ」の活動は2024年3月末に終了) 著書に『生き方の原理を変えよう』(2010年 徳間書店)、『未来から考える新しい生き方』(2011年 海竜社)、『舩井幸雄が一番伝えたかった事』(2013年きれい・ねっと)、『チェンジ・マネー』(はせくらみゆき共著 2014年 きれい・ねっと)、『いのちの革命』(柴田久美子共著 2014年 きれい・ねっと)、『SAKIGAKE 新時代の扉を開く』(佐野浩一共著 2014年 きれい・ねっと)、『聖なる約束』(赤塚高仁共著 2014年 きれい・ねっと)、『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(朝倉慶共著 2014年11月 ビジネス社)、『智徳主義【まろUP!】で《日本経済の底上げ》は可能』(竹田和平、小川雅弘共著 2015年 ヒカルランド)、『日月神示的な生き方 大調和の「ミロクの世」を創る』(中矢伸一共著 2016年 きれい・ねっと)、『聖なる約束3 黙示を観る旅』(赤塚高仁共著 2016年 きれい・ねっと)、『お金は5次元の生き物です!』(はせくらみゆき共著 2016年 ヒカルランド)がある。 |
佐野 浩一(さの こういち) 株式会社本物研究所 代表取締役社長 株式会社51コラボレーションズ 代表取締役会長 公益財団法人舩井幸雄記念館 代表理事 ライフカラーカウンセラー認定協会 代表 1964年大阪府生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒業後、英語教師として13年間、兵庫県の私立中高一貫校に奉職。2001年、(株)船井本社の前身である(株)船井事務所に入社し、(株)船井総合研究所に出向。舩井幸雄の直轄プロジェクトチームである会長特命室に配属。舩井幸雄がルール化した「人づくり法」の直伝を受け、人づくり研修「人財塾」として体系化し、その主幹を務め、各業界で活躍する人財を輩出した。 2003年4月、(株)本物研究所を設立、代表取締役社長に就任。商品、技術、生き方、人財育成における「本物」を研究開発し、広く啓蒙・普及活動を行う。また、2008年にはライフカラーカウンセラー認定協会を立ち上げ、2012年、(株)51 Dreams' Companyを設立し、学生向けに「人財塾」を再構成し、「幸学館カレッジ」を開校。館長をつとめる。2013年9月に(株)船井メディアの取締役社長CEOに就任した。 講演者としては、経営、人材育成、マーケティング、幸せ論、子育て、メンタルなど、多岐にわたる分野をカバーする。 著書に、『あなたにとって一番の幸せに気づく幸感力』(ごま書房新社)、『ズバリ船井流 人を育てる 自分を育てる』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)、『私だけに教えてくれた船井幸雄のすべて』(成甲書房)、船井幸雄との共著『本物の法則』(ビジネス社)、『あなたの悩みを解決する魔法の杖』(総合法令出版)、『幸感力で「スイッチオン!」』(新日本文芸協会)がある。 |