トップが語る、「いま、伝えたいこと」

　父のお通夜と密葬も済んでとりあえず会社には出社しています。それでも、いろいろな雑事があり、母や妹と電話のやりとりをしているのですが、疲れが出ることを心配していた母が意外に元気でホッとしています。その代わりと言っては何ですが、私がどうも調子が出ません。とりあえず、数日間はスケジュールをキャンセルしてもらったので、人にお会いすることはほとんどないのですが、それでもやることはいくらでもあるのですが、手がつかない状態です。
　前回も書きましたが、父は肉体的、物理的な制約がなくなっていろいろ楽しんでいるようです。さすがだと思うのは、いましかできないことをきちんと要求してくることです。葬儀が終わった翌日、とても親しくしている友人から申しわけなさそうに電話がかかってきました。どうも、私に直接アプローチしても、上記のような状態で通じないので、直感力が優れた友人の所に父がメッセージを伝えに行ったようです。
　「忙しいだろうと思うのだけど、どうしても舩井先生が勝仁に伝えろと言うから電話しました。『最後の７年間は病気で好きなモノが食べられなかったから、俺が好きだったものを代わりに食べてくれ』、とおっしゃっています。『亡くなってから１週間ぐらいはまだこの世の感覚が残っているので味わえるけれど、それ以上経つと味が分からなくなるから、急いで欲しい』とおっしゃっている。」と言うのです。

　これには笑ってしまいました。その電話を受けたのが、グループの社員を集めた全体朝礼の直前だったので、思わず朝礼で社員の皆さんに披露して、大笑いをしました。そして早速、昨日の夜はステーキを食べに行きました。最初はせっかくだから高級店に行こうと思ったのですが、最初に電話した店は満席で予約が取れませんでした。そのとき、ふっと思ったのは、そう言えば父は和牛の高級店よりも食べごたえのあるサーロインステーキが好きだったことを思い出しました。
　一番、よく覚えているのは２０年ぐらい前に船井総研のツアーでニューヨークに行ったときのことです。小山政彦前社長に父と一緒にブルックリンにあるステーキハウスに連れて行ってもらいました。そこは昔ながらアメリカのボリューム感のあるステーキを食べさせてくれる店で、６０歳を過ぎていた父が１ポンド（４５０グラム）ステーキを簡単に平らげていたのには少し驚きました。だから、高級店はやめて、昔ながらのボリューム感のあるステーキを食べさせてくれる店に行ってきました。
　電話をくれた友達にメールを打ったら、「先生がとても美味しかった」と喜んでいると返事が返ってきました。そして、次に思いついたのがお好み焼きです。あんまり一緒にお好み焼きを食べに行ったことはありませんが、自分でお好み焼きを焼いて食べるのが好きでした。そこまでは無理なので、普段はお昼を食べないのですが、先ほど会社の近くにある大阪の有名なお好み焼き店がやっているお店に行って、豚玉をいただきました。
　その店では普段はスジ焼きとかモダン焼きとかを食べるのですが、やっぱり大阪のお好み焼きの定番は豚玉です。そうしたら、ソースや青のりも自分で好きな様に分量を調節するような形で出てきて、やっぱり本格的だなあと感心しています。とても混む店なので時間を外し午後２時過ぎにひとりで行ったので、ゆっくりと父と心の会話を楽しみながら久しぶりの大阪の伝統の味を楽しみました。
　そうすると、父が本当にお好み焼きソースの味を楽しんでいるのが感じられました。あんまり食べることに関心を持っている人ではありませんでしたが、長い間、好きなモノを食べられていなかったので、私が代わりに食べることで本人も楽しむことができるなんて、何かとても不思議ですが、とても納得感を持てるし簡単なリクエストでホッとしています。
　そこまでやって気がついたのですが、もしかしたら父は私に原稿のネタをくれたのかなあと思います。深い話はもう少し落ち着かないと書けそうにないので、美味しいものを食べるぐらいがちょうどいいですものね。明日は北海道だからジンギスカンでも食べてこようと思います。
　最後になりましたが、この場をお借りして、ご弔慰を様々な形でお送りいただいていることに対して、御礼を述べさせていただきたいと存じます。
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