船井幸雄グループ社員の、日々もの思い、考へる

このページは、船井本社グループスタッフによるコラムページです。 「これからは“本音”で生きるのがよい。そのためには“本物の人間”になることが大事」という舩井幸雄の思想のもと、このページでは、社員が“本物の人間”になることを目指し、毎日の生活を送る中で感じていること、皆さまに伝えたいことなどを“本音ベース”で語っていきます。

書:佐野浩一
船井幸雄グループ社員の日々もの思ひ、考へる あの社員の一日を公開!
嫉妬の時代
2013.11.5(Tue)
社名:(株)船井本社 『船井幸雄.com』事務局&『船井メールクラブ』事務局
名前:藤原 かおり

 皆さんこんにちは。だんだんと紅葉した木々が目を楽しませてくれるようになり、秋の深まりを感じさせてくれます。いかがお過ごしでしょうか。船井本社『船井幸雄.com』事務局&『舩井メールクラブ』事務局の藤原かおりです。

 さて前回も紹介させていただきましたが、最近私が興味深く読んでいる本に精神分析家で思想家の岸田秀さんの本があります。
 岸田秀さんは、親子関係だったり、日本の官僚の問題だったり、男女の性や嫉妬、日米関係、宗教(一神教と多神教の違いなど)だったりという、私たちに身近なテーマを核心までつきつめ、歯に衣着せぬ言葉で喝破し、図星を鋭く突いていて面白いので、ハマればけっこうハマってしまうのです。
 しかも、その洞察の根底には「日本が幕末から明治に至る間、黒船に代表される欧米諸国の衝撃を受けたことで、欧米諸国に迎合し屈従する外的自己と、その迎合と屈従に傷ついた自尊心を回復しようとして誇大妄想にのめり込んだ内的自己に分裂している」という著者独自の前提があります。
 それは舩井幸雄がこれまでずっと言い続けてきた、戦後、日本はずっとアメリカの言いなりで日本はアメリカに都合のいいように搾取され続けている、という状況を十分ふまえた上での日本人の個々の精神分析なので、自分や他人を深く理解するのにとても役に立つのです。

 今回は、最近読んで、興味深かった岸田さんの著書『嫉妬の時代』(文春文庫)を紹介させていただきます。
 その目次は以下のようになっています。

まえがき 
第一章 三浦和義事件とは何だったのか
第二章 戸塚ヨットスクールと戦後教育
第三章 豊田商事にみる資本主義的構造
第四章 『積木くずし』が物語る親子関係
第五章 なぜ鹿川君はいじめられたのか
第六章 写真週刊誌が拠って立つモラル
あとがき



 この本は昭和62年に発刊されたものなので、20代や30代前半の若い世代の方々には知らない事件も多いでしょうが、当時世間を賑わわせた事件をテーマにして展開されています。
 第一章では、妻を保険金目的で殺害した容疑にかけられた三浦和義氏のことを語っています。事件の真相がクロかシロかは知る由がないとした上で岸田さんは、三浦氏が(まだ容疑がかけられていなかった頃)、美談の主人公になってはしゃぎ過ぎ、目立ち過ぎたところに注目しています。
 そしてこの「はしゃぐ」という行為が、現代人のきわめて特徴的な行動様式だ、というのです。
 「理想も正義も信じられなくなった現代、『自我』の位置を決めてくれる基軸がなくなってしまっているので、私たちは、はしゃいで目立って、人々に自分の存在を認めてもらうことによって、自我を確認せざるを得ない。
 現代ではみんながはしゃぎたがっている。だからはしゃいで目立って有名になった人は、人気の的になると同時に人々の嫉妬を買う。いくらはしゃいでも有名になれない人が大部分だから、有名になってはしゃぐ人をわれわれは羨ましくてたまらないわけです。嫉妬心からそういう人を引きずりおろしたくなる……」

 このようなことが書かれています。
 これが書かれた“現代”は、昭和62年頃だと思いますが、平成25年の現在にも十分通じるように感じました。

 また、「教育」についても、第二章の「戸塚ヨットスクールと戦後教育」で、核心をついた、ある意味シニカルな見解を述べています。これを読んで、私はビックリしてしまいましたが、なんとなく納得もできました。
 まず「教育というものは本来ダーティな(汚れた)仕事だと思っています」と述べた上で、その“ダーティさ”の理由を以下のように述べています。

 教育というものがなぜダーティなことかと言えば、それは本来、人間のもつさまざまな方向への可能性を摘み取り、抑えつけて、ある型にはめ込む作業だからです。人間を社会に役立つようなパターンに入れること、これが教育です。
 教育とは、生徒のために行なわれるものではなく、あくまで社会のためなのです。そして、どういう人間が「社会のために役立つ」かを決めているのも、生徒ではなく、教育する側です。
 その意味で、教育とは生徒に対する一種の攻撃であり、生徒は教育の被害者なのです。しかし、人間を教育しないわけにはゆきません。教育はいわば必要悪です(転載ここまで)。


 この考えは第五章の鹿川くんのいじめ自殺の問題とも根底でつながり、興味深いものでした。

 岸田さんの本は、日本の社会の(とくに歴史的な事情から不可避的に起こる)矛盾や歪みを具体的に的確に教えてくれます。
 そして、その矛盾や歪みを正すことはほとんど言及していません。歪みを正すことは大事なことかもしれませんが、国レベルのこととなると常識的に考えて、並大抵の力では実現しないでしょう(個人のレベルで考えても難しいことです)。
 と言っても、事実を知ってしまって何もしないのではなく、まずは歪んでいるものをそのまま「ああ、歪んでいるなぁ」と認めて受け入れることが大事なのだと思います。

 舩井幸雄も長年病気ですが、私は最近、舩井はもしかしたら、身をもって私たちの鏡となって、「日本はいま歪んでいるぞ。病気だぞ」と訴えているのではないかと思えてならないのです。
 だから私たち一人ひとりが、自分自身の歪みや「病気」の部分に気づき、受け入れることで舩井自身の病気も和らいでいくのではないか……などと思っているのです。
 日本の国自体が歪んでいるのなら、そこに住んでいる私たちに歪みがない方が不自然かもしれません(ちなみに岸田さんご自身も、長年の脅迫神経症がいまもまだ完治には至っていないようですし)。
 もちろん歪みのない健全な状態がベストではありますが、いかがでしょうか。


2周目:「鳥インフルエンザからニワトリを想う」
3周目:「日本の独立と個人の自立」
4周目:「資本主義について思うこと」
5周目:「“野性”を目覚めさせるには・・・」
6周目:「にんげんクラブ全国大会で気づいた“つながり”」
7周目:「歪みを正す方法」
8周目:「“グレー”からの脱却」
9周目:「“コンサバ”に思う」
10周目:「“野菜”は本当に健康にいいのか?」
11周目:「ロンドン・シティで感じた意外な“気”」
12周目:「フリーエネルギーとUFOの関係」
13周目:「最近読んでショックを受けた本」
14周目:「“寄り添う”ということ」
15周目:「“五井野イズム”に触れて……」
16周目:「秘伝のお茶と新コラム」
17周目:「偶然とは思えない3つのこと」
18周目:「「本物」は野性的!?」
19周目:「日本人の「水戸黄門」幻想」

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