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トップが語る、「いま、伝えたいこと」

このページでは、舩井幸雄が(2014年1月19日の舩井幸雄の他界後は舩井勝仁が)いま一番皆様に知ってほしい情報をタイムリーにお伝えしていきます。
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2006年11月21日
日本人は、どうして「富士」が好きなのか

 熱海の私の家からは富士山は見えませんが、車で数分も走ると、晴れた日は富士山の実によく見える十国峠などがあり、時々ワイフと眺めに行きます。
 富士山を見ると、それだけで嬉しくなるからで、ワイフなどは、その姿からよいエネルギーをもらうのか一挙に元気になります。我が家の各部屋には富士山の絵や写真が必ず一枚以上あります。
 ともかく夫婦二人とも、富士山が大好きで、新幹線、飛行機、車などで富士山の見えるところを通る時の話題は、100%といっていいくらい富士山が中心です。これは私たちだけかと思っていたのですが、最近、日本人の過半数が、どうやら私たちと同じようだ・・・と気づきました。
 日本人は富士山が好きなのです。というより「富士」が好きなようなのです。
 なぜか? 形がきれいだから。連峰、秀峰だから。日本で一番高い山だから・・・いろいろあるでしょうが、日本人の感性に合うのでしょう。
 外国人も、好きらしいから、人間の感性に富士山は合うのかもしれません。
 ところで、私の知人で、大学教授の竹林征三さんは、土木工学の権威です。「ダムの神さま」とも言われていますが、京大の後輩にもなる人で、親しくつきあっています。
彼が最近、近著を送ってくれました。『風土工学の視座』(技報堂出版刊)です。
 その21ページと22ページに「富士学の思い」という文章がありました。
 工学博士の彼らしい文章です。私の家内は、こんなむつかしい本は読みそうにありませんが、このホームページの私の文は読んでくれます。ワイフに読ませたいだけでなく、日本人の富士好きの人にも読んでほしく、少し長いのですが紹介します。
 ちなみに竹林さんの現在の本業は富士山のすぐ近くにある富士常葉大学の教授です。

 風土不二である。十人十色の人々が町町(まちまち)で展開してつくり、つくられてくるのが風土である。町町は人々が集まってつくる空間的構造であり、多様そのものである。その代表的なものが「お江戸」であった。お江戸八百八町は街街の多様性を表現する象徴的な言葉である。町町の多様性のスケールとしては百の単位がふさわしい。したがって百町百色である。
 十人十色の人々が百町百色の街街でつくり、つくられる風土は、十と百の組み合わせだけの多様性がある。風土は十と百の掛け算の多様性がある。したがって千風土千色である。表現を変えれば風土不二である。不二は富士に通じる。
 富士は不二である。富士山はわが日本の風土のシンボルである。富士山を見立てた○○富士と称されている山は、北は北海道から南は沖縄まで全国に実に3百数十座ある。それだけに止まらず、日本人が何らかの形で足跡を残したところ、千島列島から東南アジアや南洋の島々にも見立ての○○富士をつくってきた。
 富士山は日本人の精神的風土の象徴である。それらの多くの見立て○○富士はあるも、それぞれ同じものはない不二なのである。その根源のルーツの富士山は当然不二の本山なのである。
 富士は不死である。盛岡の周辺に生まれ育った者にとって故郷のシンボルは岩手山である。繊細な石川啄木の感性に「故郷の山はありがたきかな」といわせしめたのは南部片富士・岩手山である。
 富士見十三州といわれてきた。富士山が見えるだけで、ただただ「ありかたいのである」。かつて、子供のころ大台ヶ原から富士山が見えたときの感激は忘れられない。木曾の御岳山が噴火したとき、伊吹山から三筋の噴煙の立つ御岳山とそのさらに奥に富士山の頂が見えた、このときの感激も忘れられない思い出である。
 成層火山コニーデの美しい裾野は大自然がつくった芸術品である。科学技術の進展はその美の法則(大自然の秩序)を順次解き明かしつつある。古くより多くの文人・画家等がその美を歌や版画等で表現してきた。葛飾北斎の富嶽三十六景等多くの傑作が残されている。富士山は第四紀に出来た活火山のシンボルであり、地球の歴吏からすれば出来たての最も若い山であり、いつまた噴火しても不思議でない。また大沢崩れ等日々その山容は変化してやまない。しかし、日本人の心に刻まれた郷土の富士のありがたさは不死なのである。
 江戸城を最初に築城した大田道瀧は「我庵は松原つづき海近く 富士の高嶺を軒端にぞ見る」という和歌を天皇に奉じたと伝えられている。下る坂道で望む富士山は天下一品で江戸っ子の自慢である。
 足利健亮の仮説によれば、徳川家康のゆかりの地、駿府城、江戸城、そして家康が遺言で遺体を納めろといった久能山は富士見の地であり、家康は「富士山が見える地」にこだわったのではないかという。富士見の地を不死身の地に見立て、武将にとって理想の地と定めたのではないかという。秀吉が最後の城地を求めた伏見の地は同じく不死身の地ではないだろうか。富士は不死に通じ、富士見は不死身に通じ、不死身の地は天下人が理想とした地なのである。
 家康が見た夢、瑞兆「一富士・二鷹・三茄子」とは、富士見の理想の地で「不死身」の天下人・「鷹」となって天下泰平の世を「なすぶ」・成し遂げるということなのである。富士のもつ大変なポテンシャルに圧倒されるのである。
 富士の地は環境防災の学びの最適地である。また、富士の地は生態環境の学びの最適地でもある。風土「不二」「不死」「不尽」の地が富士である。富士は風土工学研究の最適地でもある。富士学と風土工学とは不即不離なのである。
 富士の話は「不尽」(ふじ)である。富士にちなむ話は尽きぬ「不尽」でもある。
 最後は回文で話を閉じることにする。回文とは前から読んでも、後ろから読んでも同じである「言葉あそび」である。回文は不尽でもある。
 「凱風快晴」の赤富士も素晴らしいが「虹二重」の富士も決して劣らず素晴らしい。
  『虹二重 吉時 年月 経た富士に』(にじふたえきつじ としつき へたふじに)
 富士の地は不二・不死・不尽の地であり、富士をたたえる言の葉
  『富の士・不二・不死・不尽の譜』(ふのじ ふじふじふじのふ)(転載ここまで)

                                            =以上=

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