トップが語る、「いま、伝えたいこと」
私は6月上旬に、明日7月7日に書店に並ぶ『二つの真実』(ビジネス社刊)の原稿を脱稿しました。
その直後、友人から、この本を監訳しないかといって『THE PROPHET(預言者)』という90年近く前(1922年)にアメリカで発売された本が送られてきました。
この本の著者は48才で亡くなり、同書を書いたのは、彼が多分39才くらいの時だと思うのですが、本に書かれている内容が、最近の私の考え方とほとんど同じと言ってもいいほどよく似ていました。
そこで、喜んで監訳を引きうけたのです。
6月23日に「監訳者の解説」を書き終り、6月25日に出版社(成甲書房)に原稿を渡したのですが、8月のお盆あけには書店店頭に並ぶと思います。
以下は6月19日に書いた同書の「まえがき」に当る「監訳者のことば」です。
【監訳者のことば】
私は感動して読みました 船井幸雄
本書は世界的に有名な本です。
アメリカの知識人家庭には、必ず一冊以上あると言われており、欧米やアラブ諸国では著者の名前と本書の題名(日本語訳では『預言者』)は、よく知られています。
本書は、1923年に英語で書かれ、“THE PROPHET”の題名でアメリカで発刊されましたが、すでに20ヵ国語以上に訳され、数十ヵ国以上で2000万人以上の人に読まれていると言われています。いまなお読者がふえつづけています。
著者カリール・ジブランは1883年にレバノン北部の村ブシャーレで生まれました。
生家が豊かでなく、というよりも貧しかったため、彼は11歳の時に母や兄妹とともにアメリカのボストンに移住しました
その後、14歳の時に一時レバノンに帰国、ベイルートで4年間の高等教育を受けたあと、19歳の時にボストンにもどったのですが、母親と兄妹が悲劇的な死をとげた事情などがあり、精神、物質面の苦労とともに多感な青少年時代を過ごしたようです。
彼は画才に恵まれ、少年時代にまず画家として出発しましたが、やがて詩作や文筆の才を発揮しはじめました。22歳の時にアラビア語で書いた散文詩が文筆家デビューのきっかけです。アタマの良い多才な人だったと思われます。
彼を有名にしたのは本書“THE PROPHET”ですが、英語での主著は7冊あり、アラビア語での著作も多数あります。
本書は、彼が15歳の時にレバノンで、アラビア語で草稿を書いたと言われており、のちに1920年から1923年までの3年にわたって、時流と考え方をとことん推敲して書きあげたのはまちがいないようです。
ちょうど、この本が出版された1923年当時、彼は画家としても詩人や作家としても絶頂期にあったようです。本書内の画をご覧ください。また英語の文体も最高レベルという評価をされています。
彼にはすばらしい恋人や苦しい愛がありました。それに加え、霊的に敏感な体質だったと思われます。また非常にアタマが良く、いろんなことを論理的に理解できた人のようです。
病身だった彼は、1931年、ニューヨークで、結核と肝硬変で48歳の若さで故人となりました。
本書内の「アルムスターファ」と実在した人間だったカリール・ジブランとの関係、オルファリーズの町の人々と彼らのアムルスターファへの態度、そして迎えに来た船…などが意味することをお考えになりながら、ぜひ本書の訓(おし)えをおたのしみください。私は感動して本書を読みました。
なお本書につきましての私の感想などは、本書末に記します。
2009年6月19日朝、東京都内のグランドプリンスホテル内の一室で
監訳者記(転載ここまで)
同書は読めば読むほど味が出る本で、考えさせられますが、生きることに安心します。すばらしい著作だと思います。
なお、船井本社の秘書室で英語など語学の得意な相部多美さんに「どう思う」と言って6月24日に同書を渡しました。もちろん英文の原本です。
以下は彼女の感想文です。なお彼女は日本語訳は読んでいないと思います。あわせて御一読ください。
船井会長は400冊近くの本を書いておられますが、英語の本を監訳したものはなかったようです。これだけ多くの本を、書いておられるので、いままでにも監訳の話があったようですがお受けしていなかったようです。今回は先日亡くなられた七田眞先生と、太田龍先生とも親交が深い方から依頼されたということで、引き受けられたようです。
ハードカバーの原著『THE PROPHET』を渡され、船井会長が初めて監訳をされた本ということで、興味を持ちました。縦26cm横20cm、厚さ2cm、84ページで構成されています。著者の描いた12枚の美しいイラストが随所にあり、高貴な絵本のような印象を受けました。さほど難しくない英単語でできているように見え、簡単に訳せるかと思いました。しかし、読みはじめると、哲学的な内容であったため腰を据えて、じっくり読むことにしました。詩的な文章で抽象的な表現もあり、西洋の宗教観がベースにあるようで、日本語に訳すのに少々難を感じました。ちなみに「預言者」とは「神の代弁者」の意味があり、「未来を語るもの」を意味する「予言者」とは異なります。
アルムスターファという預言者が、異国の地オルファリーズで故郷へと帰る船を12年間待ち続け船が迎えに来た日に、その町の人々との質問への答です。巫女、学者など様々な人が「労働について(On Work)」、「友情について(On Friendship)」など人生に関する26の普遍的な事柄に関して預言者に質問を投げかけます。それについて、預言者は深く静かに簡潔に真理を説いていきます。26の項目からその時、自身の心が共鳴するものを選んで読むと、胸に響くものがあると思います。
女性という視点から、愛(On Love)、結婚(On Marriage)、美(On Beauty)について関心をもちました。そして個人的には、自由(On Freedom)、苦しみ(On Pain)、死(On Death)について関心を持ちました。「物事はすべて表裏一体である」ということや、「孤独」、「悲愴感」というものを本を読んで感じました。
例えば、喜びと哀しみはいつも一緒にやってくるので、決して切り離して考えることはできない。喜びは悲しみの素顔。笑いの湧き出る井戸は、涙で溢れる井戸でもある。悲しみがあなたの存在を深く、えぐればえぐるほど、そこに喜びを満たすことができる。葡萄酒を受ける杯は、かまどで焼かれた杯。心を癒す楽器も、小刀でくりぬかれた木。
嬉しい時に、自分の心の奥を覗き込むと、かつてはあなたを悲しませていたものが今は、喜びになっていることを知るでしょう。悲しくてどうしようもない時、心の奥を覗くと、かつては喜びであったことに、今は涙を流していることに気づく。喜びも悲しみも連れ添っているので、喜びが悲しみに優るとも、またその逆とも言えない。
生命の中に求めてこそ、死の答えを見つけることができる。死について知りたいのであれば、精一杯生きること。夜目が利くフクロウは昼間は盲目であり、闇について話すことはできても、日差しの神秘を知ることができず、光について話すことはできない。川と海が一つであるように生と死は一つのもの。どちらか一方しか知らずして、もう一方をも知ることはできないのだと思いました。
このうえなく自由な者が、その自由をまるで手錠や足かせのように思っている。自由になれるのは、自由を求める気持ちが足かせだと知り、自由が目的地ではないと気づく時。日々の労苦、困窮、悲歎が消える時ではなく、それらが取り巻いていても縛られなくなる時。昼に心配し、夜に悲しむことがあってこそ、自由になれる。
捨て去りたいほどの、煩わしさは、背負い込まされたものではなく、自らが選択したもの。振り払おうとする不安も、自分自身の中にあるもの。望んだもの、忌み嫌ったもの、愛しんだもの、求めたもの、逃げたいもの、これら全てのものが絶えず、光と影のように絡み合い対になっている。影が消える時、残った光は新たな光のための影となるでしょう。自由がその足かせとなるものを失うとき、今度はその自由自身が、より大きな自由にとっての足かせとなる。
苦しみの多くは自ら選んだもの。自身の中の内なる薬師が病んでいる自分を癒そうとして盛った苦い一服。薬師を信じ、その薬を沈黙と静穏のうちに飲み干しなさい。その手がどんなに耐えがたく厳しくみえても、実際は見えない優しい手で導かれている。薬師が差し出した杯で唇を焼いても、それは神聖な涙で濡らした粘土でこしらえたもの。
というように、著者特有の比喩表現で分りやすく、美しく深く真理を表現しているので、心に沁み渡りました。
信仰(宗教)についてなど難しくみえたテーマに関しても、何度も読み返したくなるようなハッとする表現で書かれていました。道徳を極上の着物と思って身にまとう者よりは、むしろ裸のままでいるほうが良い。真の自由には止まり木や、金網は必要ではない。毎日の生活が信仰であり、神殿である。もし神を知りたいのなら、謎を解こうとするのではなく、自分の周囲を見渡すこと。
師は弟子に知恵を授けているのではなく、信念や愛を授けている。賢明な師は、自分の英知の住処へと呼び寄せるのではなく、あなた自身の英知の扉へと導くでしょう。天文学者は、宇宙に関する知識を話すことはできても、それをそのまま与えることはできない。音楽家は歌って聴かせることはできても、リズム感や声を他者に享受することはできない。数学者は度量衡の世界について語れても、そこへ導けない。自分の翼を他の者に貸すことができないように、物事の捉え方はその人だけのもの。人は皆一人で立っている。
孤独を恐れ、耐えきれなくなる時、人は唇に居場所を求める。孤独の静けさが丸裸の自分をむき出しにするため、一人が怖くて話し相手を探す。しかし多くを語る時、思考は止まる。思考は空間に生きる鳥、言葉の籠のなかではその翼を広げても飛べない。
いつの時代も、性差、国境を超えて人は皆、物事に意味を見出そうとし、教えを乞うのだと思いました。そして預言者、アルムスターファ自身も孤独であるように人は皆、孤独なのだと思いました。
その孤独を拭ってくれそうな結婚に関して、夫婦は共に生まれ、常に一緒ですが、束縛せぬよう空間を保ち、神殿を支える柱のように、近づきすぎず共に立っていなさい。弦楽器の弦が、それぞれ一本ずつ張られていながら、共鳴して一つの曲を奏でるように、という文章があり、理解が深まりました。
「預言者」と言えば「10年来、金融・経済を語ってきたが、そろそろ預言者になろうと思う。占い師や呪い師が世の中で大切である。金融や経済の先読みは、近未来予測であり、まさしく占いだからである」と述べている副島隆彦先生を思い出しました。
そして、預言者になろうとしている副島先生が船井会長のことを、近未来予測をすることができる占い師であり、呪い師だと述べています。船井会長は、経済予測から、自己啓発、哲学的な話もするので、預言者なのかもしれません。いつの時代も姿、形を変え預言者は存在するのだと思います。
この本と、船井会長の発言では類似点があるようにみえました。例えば、オール肯定、プラス発想、必要・必然・ベストという言葉。自分の置かれている現状や境遇が苦々しく思えたとしても、それは必要・必然・ベストであり、ピンチはチャンスであること。
今を精いっぱい生きることで、今はまだ見えていない対にある何かを見出せる。これも、船井会長の言う「目の前にある仕事を一生懸命にやろう」ということに通じるのではないかと思いました。
病を知ることで、健康のありがたさを知り、老いを知ることで若さの尊さを知るように、全ては表裏一体なのだと再認識しました。失ってはじめて気づく、だいじなものがあります。失った時は既に遅く、後悔は先に立たないので、大切なものを失わぬよう日々現状や周囲に感謝して、今を精いっぱい生きてみようと思いました。
機会があれば、原著もお読みください。今回、原著を読ませていただき、原文で読み、感じることの良さを経験させていただきました。また、どんな日本語訳の本になるのか大変たのしみです。
美しい言葉で綴られた、美しい本を読むことができたことに感謝いたします(転載ここまで)。
カリール・ジブランというすばらしい人がおり、“THE PROPHET”はすばらしい著作です。
日本語版が出たら、よろしく。
=以上=
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