トップが語る、「いま、伝えたいこと」

御衣黄（ぎょいこう）

　熱海の西山（来宮駅から１km余り上手（かみて）。標高１００ｍぐらい）にあるわが住まいは、敷地約１０００坪、建物約３５０坪、オフィスと４世帯が住んでいます。約数百坪の庭があります。
　この土地を入手したのは、７０才になり、船井総研を辞めてから、いままでの都会暮らしを離れて、東京にそんなに遠くないところで、自然を満喫しながら人間や人生のことを考え、徒然説法や著述にいそしみたい…と思ったからです。お二人の方から土地を売ってもらいました。
　一人は有名な日本画家の藤島博文さんです。約４００坪の土地と１８０坪の建物がついており、この建物は、いまオフィスとして活用しています。あとのお一人の土地は、藤島邸に隣接しており、数百坪の土地と古い別荘風の建物がついていました。
　この建物をこわして、いまの私宅などを建て、４世帯が住んでいます。質素な住いですが、ここを気に入ったのは、庭に榊が１０本以上あること、桧（ひのき）や杉が何十本もあること、その他、四季それぞれに花を咲かせる木や草が多いこと、十種以上の小鳥が常に来ること。そして何よりも温泉があることなどでした。それにあんがい便利なのです。品川からなら「ひかり」で３０分。「こだま」で４０分くらいで熱海駅に着きます。
　わが家は山の中ですが、熱海の海岸まで歩いて２０−３０分で行けること。熱海駅から車をとばすと１０分前後、タクシー料金も１０００円そこそこというのも、うれしかったことです。
　家を建て、引っ越してから数年たちますが、その後半の３年くらいは私は体調を崩していました。その原因が今年１月に分り、３月に無事手術にも成功し、近々に元気になりそうなのは、この土地が、イヤシロチであったことと、ここにいるとなぜかストレスが消えることなどが幸いしたように思います。
　ところでここに住んで気づいたのですが、数百坪の庭に桜の木が７本あります。
　一つはオフィスの庭にある「１０月桜」が１本で、毎年１０月に花を咲かせ、３月末まで目を楽しませてくれます。
　二つ目はふつうの「染井吉野」が１本です。三つ目は「八重桜」が４本で、４月中下旬に満開になります。あとの一つは「御衣黄（ぎょいこう）」という珍しい桜が１本で、４月中旬にみどり色の花を咲かせます。めったにない桜とのことです。
　庭にある梅や桃、椿などの花とともに、この四種類の桜は特に私が大事にしている花の咲く木です。
　ところで、今年、この桜の咲き方が異常というか、非常に長期間、私を楽しませてくれました。
　

「八重桜」の下にて

　まず去年（２００９年）９月２０日ごろから「１０月桜」が咲きはじめ、まだ咲いています。５月まで咲きそうです。
　「染井吉野」も３月２３日に開花し、４月１０日時点ではまだ花盛りでした。全面的に葉桜になったのは４月２０日ごろです。
　「御衣黄」が４月８日に開花し、先週まで、きれいな緑の花を見せてくれました。
「八重桜」はいま満開です。
　気候の関係で、このように長期間、桜が花を咲かせてくれた理由は、私にはよく分るのですが、常識的に言いますと、どう考えても「びっくり」です。天変地異が心配されますが、ともかくいまの私にとりましては幸せな「びっくり」です。
　９月から、多分５月まで、ふつうの家の庭にある７本の桜が、いつも１本以上が常に咲きつづけ、そして楽しませてくれていたなんて、ぜいたくなことは、今後はないだろうと思い、きょう、このＨＰに記事として記すことにしました。
　もともと農家に生れ、自然が大好きというよりも、幼少時から自然のフシギさにびっくりさせられつづけ、大学も農学部を出た私ですが、「自然にはきびしい掟がある。人間も自然の掟にしばられている。だから人間は、できるだけその中で自由にたのしく生きるべきだ」という京大時代に身につけた「くせ」を満喫させてくれるように、手入れのほとんどしていない自然の庭であるだけに、今年はあらためて、自然との上手な付きあい方を考えさせられました。
　とはいえ、今年のわが庭の桜は、本当に体調が完全でない私に「幸せ」を与えてくれました。うれしいことでした。「びっくり」とともに報告しておきます。
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