舩井幸雄の「この人いいよ!」

このページでは、超幅広い舩井幸雄の人脈の中から、舩井幸雄がぜひ皆さまに紹介したいと思う人を、さまざまな角度からご紹介します。

「一番ありがたいことは、48才にして全然自分の限界が見えない、
これから何が起こるのか分からないということです。」

高橋 泰さんは現在、国際医療福祉大学医療経営管理学科の教授で学科長です。すばらしい肩書きとは裏腹に、面白い人生を歩まれている方です。
もともと石川県金沢市の開業医のご子息で、医学部に進学したものの、学生時代にバックパッカーとしてアメリカ・インド・中国など世界を放浪されたそうです。同時にその頃、国内でも文筆活動を武器に、当時の著名人の間を渡り歩いていたとのことです。
大学卒業後の進路について、「臨床の道に進むと、飽きる」と感じ、当時創生期だった医療情報の大学院(東京大学)に進み、博士号を取得されました。その後、アメリカのスタンフォード大学、ハーバード大学への留学を経て、37才で国際医療福祉大学医療経営学科の教授になり、45才で学科長に就任されました。

荒井義雄さん、舩井、増川いづみさん

国際医療福祉大学 医療経営管理学科教授・学科長 高橋 泰さん

自称「37才までフリーター」で、「決してメインストリートは歩いてきていない」とのことです。お会いしてみると、とにかくエネルギーに溢れ、柔和で楽しい人という印象です。
今回は、ご自身の生活の中でとても大切に考えられている、日本武道から生まれた「新体道(しんたいどう)」の稽古の前にお話を伺いました。何よりリラックスと脱力を重視したこの「新体道」が、高橋さんの体にも性格にも合っているそうです。
あくまで好きなことは貫き、それでいて社会から求められる役割はシステマティックに淡々と(それでいて精力的に)こなすスタイルは、フリーターやニートがあふれる現代の若者にとっても、生き方の参考にもなるのではないかと感じられました。実際、高橋さんの言葉の端々には学生に対する深い愛情が感じられました。
プロフィール
高橋 泰(たかはし たい) 国際医療福祉大学 医療経営管理学科教授・学科長
1959年、石川県金沢市生まれ。金沢大学医学部卒業。東京大学病院内科・麻酔科で研修。東京大学大学院医学博士課程修了。92年スタンフォード大学留学。94年ハーバード大学公衆衛生校に留学。97年4月より、国際医療福祉大学・医療福祉学部医療経営管理学科教授。2005年より学科長も兼任。公職として、日本DPC協議会事務局長、全日本病院協会広報委員、介護保険委員などを兼務。
―今回は、新体道の稽古場でお話を伺うことになりましたが、高橋先生にとって、「新体道」とはどういうものなのでしょうか?
高橋:「新体道」の稽古には、どんなに忙しくても週に1回は通うようにしています。
 「新体道」は、船井先生とも親しい青木宏之先生が、現代に生きる総合的な人間開発のために創始したものです。気功ではないのですが、これをやると体の氣の流れがとてもよくなりますね。「脱力」というか、リラクゼーションを重視したもので、武道、健康法、能力開発法などすべてを含んでいるといえますね。

新体道の稽古前の柔軟体操をしています。

新体道の稽古前の柔軟体操をしています。

―どれくらい新体道の稽古を続けていらっしゃるのでしょうか?
高橋:新体道を始めて今年で19年目になります。練習ではまず身体をほぐし、伸ばして身体を整えていくことから始めます。新体道は、全身を使って、日常の疲労や鬱屈を発散し、健康を取り戻してストレスに強い心と体をつくるというものですね。これをやっていると、人間の体の自然性のようなものが蘇ってくるんですよ。やっぱりそういうのがないと、新しい発想とか生まれてこないと思いますね。新体道をやっていると、自分が知らない間につくってしまっている自分の精神的・肉体的限界をいつのまにか超えてしまっているところがあります。
 だから日常の仕事が激務だったり、ストレスがあったとしても、週に一度新体道の稽古をやることで、それがこなせるようになっていますね。
 本当に、一週間で体がガチガチになってしまっていますからね。もともと私は体が固い方なんですよ。
(稽古中、高橋さんは、本当に一生懸命、夢中で新体道に取り組んでいらっしゃいました。)
―高橋先生は現在、お仕事では大学での学科長・教授の他に、公職として、医療制度改革に関するシステムづくりにも関わっていらっしゃるのですよね。少子高齢化の現代、これから、医療制度がどのようになっていくかとても注目されていますし、責任やストレスも大きなお仕事のように思えますが、いかがでしょうか?
高橋:まず今年の10月を例に、私の日常を説明します。自宅のある東京と大学のある那須塩原を10月は11往復しました。月曜日の東京での大学院での授業、火曜から木曜日の那須塩原での大学の授業や会議などを休講やキャンセルなしでこなし、外部で講演を4回行いました。また、その他に、4日に政策提言書を携え厚生労働省を訪れ、局長や総括審議官、課長に面談してきました。
 第1週の週末の和歌山での講演のついでに、白浜温泉、潮岬、熊野三山と高野山(世界遺産)を回りました。熊野や高野山を訪れ、神社の緊張した磁場と、高野山の柔らかい磁場の違いを体感することができました。ちなみに8月は、京都の鞍馬(くらま)から貴船(きふね)の山越えをし、そのあと下賀茂神社(世界遺産)を参拝しましたし、9月は白神山地(世界遺産)をトレッキングしてきました。最近、世界遺産づいています。
 第2週からも大学に関わる仕事以外に、今年立ち上げたNPO法人日本DPC(Diagnosis Procedure Combination=医療費の新しい計算方式)協議会の設立記念のシンポジウムを東京で主催したり、両親の結婚50周年の食事会の主催で家族と金沢に飛んだりで、結局10月は、外泊が9日、東京の外に出たのが25日でした。
 この間の主に移動中に、学科の先生の人事評価の書類作成や、学会などの査読や、雑誌の原稿の執筆、講演会のレジュメ作成などを行いました。
 更にこの合間を縫って、クラブやカラオケボックスへ6回行き、歌の練習をしました。10月の自分にとっての最大の収穫は、喉(のど)にストレスをかけずに歌うコツをマスターしたことです。
 また、新体道の稽古も時間を工面し、10月は1回も休まず参加でき、身体を緩めることができました。仕事上でのイメージづくりにも新体道がいい影響を及ぼしてくれていますね。やはり心身ともにリラックスしていないと発想は膨らみません。
 まあ仕事ではどんなに忙しくても目の前のことだけに集中して、淡々とこなしていくようにしていますので、最近「忙しい」とは思わなくなりました。「絶対にできる」と確信を持っていると、やることが多くても不思議と、期日までに全部終わらせられるものなんですよ。それは新体道の影響も大きいですね。

新体道稽古風景。真ん中左寄りの男性がNPO新体道 代表の大井秀樹さん

新体道稽古風景。真ん中左寄りの男性がNPO新体道 代表の大井秀樹さん

最大の目的は体をリラックスさせておくこと
高橋:私自身の最大の目的というのは、どんな激流の中にいても、体はリラックスさせて生活することですね。そう思ってはいても、いつも心身ともにリラックスした状態にさせておくというわけにはいかず、一週間で体がガチガチになってしまうんですがね。
自分が深く原案作りに関わった診療報酬点数表の上で、現在年間「兆」のオーダーのお金が動いている現実を認識したり、自分の発言したことが翌日にはメディアに紹介されたりするのを見ると、やはり知らないうちにストレスを身体が感じているのだと思います。それで週に一度の新体道の稽古は欠かせません。この稽古で体をほぐし、リラックスさせているおかげで、精神的にはずいぶん落ち着いてきて、焦るということがなくなってきました。
滝の中でリラックス法を学ぶ
高橋:新体道の稽古の中で、役に立っているものの一つに滝行があります。新体道には、ワカメ体操という身体を海の中のワカメのように柔らかくして、相手の人が潮の流れになって押してもらう稽古があります。滝行のコツは、このワカメ体操を滝の中でやる感じです。滝の中でがんばると、水圧に潰されます。滝の中でワカメのように水の流れに身を任せるようになると、急に滝の水圧が弱まり、すごくリラックスできるようになります。

2005年8月、浅間の大滝における滝行

2005年8月、浅間の大滝における滝行

―滝の中でリラックスを学ぶというのはちょっと意外な感じもしますね。ところで舩井との出会いはいつ頃だったのでしょうか?
高橋:船井先生とは92年(33才)に新体道で知り合った方を通じて初めてお会いしました。その後、船井先生のオフィスに1ヶ月に1回のペースで通うようになり、気がついたら「直感力」を実感できるようになっていたという感じですね。
 96年の2月(36歳)に台湾に行った時、手がビリビリして熱くなるという体験を初めて味わいました。それで「氣というのはこんな感じか」と分かり、それから面白がってやっているうちに氣が分かるようになりましたね。また、一時期は気功を使って、五十肩や鞭打ちで首が動かない人の首をその場で動くようにしたり、そういう治療もやっていましたが、やっぱりそれは自分の務めではないと思い、今はあまりやっていません。
 40歳の頃から土地の磁場などにも敏感になり、どこが磁場が強いかというのがものすごく鮮明に分かるようになりました。現在私は、おそらく磁場に敏感な修験者のような体質になっており、それで熊野三山と高野山の磁場の違いが明確にわかるのだと思います。
 「直感力」を習熟し、頭を回さなくともイメージが自然に浮かぶようになったのが38才頃です。21世紀に入り、研究フィールドを高齢者ケアから医療制度に変えました。自然に浮かんでくるイメージに従って動いたおかげで、6年ほどで医療制度の根幹に関わる仕事を行えるようになりました。また同じ頃から、突然歌を始めました。歌は、(1)身体の中で音を反響させる、(2)天とつながる感じ、(3)喉に無駄な緊張をかけずリラックスさせる、という3つのコツを身につけたことにより、米良美一からルイアームストロングまでの3オクターブの音域を、ほぼ自由自在に使いまわせるレベルまで上達しました。
 歳月を経るごとに、自分の出来ることの範囲が広がり、またそのレベルがどんどん上がっていることを実感します。十数年前に船井先生の話でよくわからなかったことが、その後わかるようになった、あるいは出来るようになったということがいくつかあります。一方、船井先生が最近話されていることの中でよくわからないことがいくつかありますが、また何年かすればわかるようになる日がやってくるような気がします。
 今、なんとなく感じているのが、50台半ばになると、身体や喉(声の出し方)の正しい使い方や真の能力を発揮できる脳(意識)の有り様を教える能力開発の仕事を行っているような気がしています。これからの少子高齢社会が成り立つには、高齢者を支える人たちの能力が、大きく向上しないといけないですからね。
 今一番ありがたいことは、48歳にして全然自分の限界が見えない、これから何が起こるのか分からない・・・という感覚が持てるということでしょうか。これは本当にありがたいです。
―日常の激務をこなしながら、自分に余裕を持って楽しみながらお仕事されている姿が伺えますね。
高橋:基本的に、「がんばる」とか「力を入れる」とか「頭をフルに回転させる」というのは、ある段階までは必要ですが、究極的には必要がなくなることであると思っています。最終的には、リラックスすることが大切ですね。その辺が、"直感力"を大切する船井先生、"リラクゼーション"を大切する新体道から得た一番大きなことですね。
 私は人間の能力開発のようなものにも興味があるのですが、新体道は、能力開発としてもとてもいいと思います。ご興味のある方はぜひ試してみることをお勧めしますね。
―高橋さん、今日は興味深いお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました。
舩井幸雄よりのコメント
医学関係の人で、私がもっとも好きな人は、矢山利彦さん、村津和正さん、高橋泰さん、そして小山敬子さんである。
 90年代、彼は毎月、私のところへ「氣談議」に来てくれた。上記4人の人は、私の子供の年代の人たちだが、一芸に秀でている。親切で、勉強家で、会うたびに、いろいろ教えてくれる。かえがたい人たちだ。
 高橋さんはリラックスしているのだが、案外凝り性だ。記録魔でもある。ともかく好ましい超人間的な青年である。今後が楽しみな人でもある。
舩井幸雄よりのコメント
NPO新体道ホームページ: http://www.shintaido.com/
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