“愛”を与えることで、ほとんどの問題は解決する。
縛られた「価値空間」から「精神的スペース」へ抜け、
自由になろう。
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加治さんご自身のこれまでの人生も波乱万丈だったようです。
まず78年に28才で渡米し、アメリカで事業を成功された一方で、アメリカで奥様が殺人事件に巻き込まれ、いまだ犯人が見つからないというショッキングな体験もされています。95年に帰国後は、作家として活動する傍ら、セラピストとして活動もされています。
舩井幸雄も加治さんには大変興味を持っており、今年の9月に発刊された『本音で生きよう』 の中で加治さんが『健康のヒントをくれた』と紹介しています。
今回は、昔から加治さんのファンで、著書もよく読んでいるという、(株)船井本社社長の舩井勝仁がお話を伺いました。 |
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勝仁:今日はよろしくお願いします。加治先生の2008年に出された、カウンセリングがベースとなっている御著書『アルトリ岬』 (PHP)はとてもいい内容ですね。
仕事でも家庭でも居場所を失った自信のない中年男が、絶望的な状況に追い込まれ、そんな時にある不思議な男性と出会ったことがきっかけで、人生が好転していく様子を描いた感動のヒーリング・ヒューマン・ドラマで、一気に読んでしまいました。
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加治将一さん(左)と舩井勝仁(右) |
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加治:ありがとうございます。でもこの本はあまり売れないんですよ(笑)。私が「この本には売れてほしいな」と思うと、売れないんですよ(笑)。その逆に、「この本はどうってことないかな」と思っていたのが、ブワッと30〜40万部売れてしまったりする。
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勝仁:そうなのですか。『借りたカネは返すな!』 (アスキー・コミュニケーションズ)などすごいベストセラーになりましたよね。
実は私も最近、『生き方の原理を変えよう』 (徳間書店)というタイトルの本を出しました。名前だけちょっと入ったような本は以前にあったのですが、自分でちゃんと書いたのはこれが初めてです。まあ、内容は加治先生の本に比べたら、全然及ばないと思っているのですが…(笑)。 |
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加治:いやいや。そうですか、では勝仁さんにとって、記念すべき第一作になるのですね。おめでとうございます。
ところで、私は作家業の傍らでセラピストとしての仕事もやっていましてね。最近ウツの人とか、メンタルな面で疲れている人たちが多くて、若年層の人でも、心の病気になる人が増えはじめました。しかし日本では精神科医はいても、セラピストというのはほとんどいないのが現状です。精神科医がカウンセリングの教育を受ける機会はほとんどなくて、むしろ薬の専門家という感じです。たとえば「少しウツっぽい」と精神科に行くと、「それではこの薬をのんでください」と言われ、「眠れない」というと、睡眠薬を渡すだけなのです。だから話して心の奥に隠れているストレスを引き出し、消し去るセラピストというのが日本にはほとんどいないのが現状なのですね。 |
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自著を加治さんに舩井勝仁が紹介しています。 |
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しかし企業は、メンタルな病気をかかえている社員が増えています。突然会社に来なくなったり、おかしな行動をとったりと。そのための損失は数兆円規模にのぼり、会社も見過ごせなくなってきているのです。私が少しでもお役に立てればという思いでセラピー(カウンセリング)をさせてもらっています。最近は、企業から、講演の声がかかることも多いのです。
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勝仁:そうなんですか。加治先生はアメリカでも長く生活をされていましたが、アメリカではセラピストはごく当り前にいるのですよね。
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加治:ええ、当り前のようにいます。日本でセラピーが盛んでないのは、形のないものにお金を払うことに抵抗がある文化が根付いているからだと思います。肉体の主人公はハート(心)だと私は思います。だからメンタルな部分をちゃんとさせないといけない。でも、そこにお金や時間をかけずに、肉体的なエステやジムなどに行ってしまうわけです。
ただ、心の状況があまりにも切実になってきたら、そうも言っていられません。私のところに来られる方はだいたい、精神科医をいろいろとまわり、薬漬けになっている方がほとんどです。散々精神科医をはしごして、たらい回しになり、それでもダメだからということで、私のところに来られる。そういう方は毎日何十種類もの薬をのんでいるケースがほとんどです。実際は、薬の効果などほとんどありません。それより副作用ばかりが目立ちます。
だから私のセラピーではまず、薬を減らし、やめてもらうことから始めるようにしています。とにかくそれが大事で、「薬なし」にするセラピーではぼくが世界一だと思っています(笑)。 |
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加治:人はなぜ心が壊れるか、ウツになるかというと、やはり「受容されていない」と感じるからなのですね。人は周りが自分を受け入れてくれないと感じると「存在不安」になります。
「受け入れてくれる」すなわち、「愛してくれている」と実感できるかどうかですが、メンタルな病気を抱えている人は、誰も自分を愛してくれていないと感じているし、その人自身からも周りに愛のシグナルを送っていません。つまり愛の交流がないわけです。この愛の交流がないと、精神的なエネルギーというものはまったく枯渇してしまうものなのですね、人間というのは。
その状態がひどくなるとウツ状態になってしまうのですが、ウツになる前に「存在不安」という状態になります。エネルギーがないから、どこにいても何か不安な状態です。仕事も暮らしも皆から疎外されているし、評価してくれない、だからやる気も出ない。それでだんだん「存在不安」が膨らみ、ウツになっていくパターンが多いのです。 |
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私のセラピーのやり方は、とにかく話してもらいます。ウツになる人は、話をきちんと聞いてもらう人がいない場合が多いのです。
ですから「お話してください」と言って、私は徹底的に聞き役になります。この人は何を求めているのか、何をしたいのか、ということをずーっと引き出していきます。
人間はわりと自分を見つめるということをしていないものですから、話しながら自分自身で自分のことが具体的に分かってくることもあります。
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勝仁:なるほど、興味深いですね。学校などによくカウンセラーの先生っていると思いますが、その方たちは、そのように話を聞いてくれたりしないものなのでしょうか? |
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加治:普通はないですね。学校や役場のカウンセラーというのは、だいたい「皆がんばっているのだから、あなたも頑張りなさい」と、頑張れコールです。
例えば、お医者さんがいて、看護士さんがいて、末期ガンの患者さんがいたとします。
そこでその患者さんから「私ってもう死ぬのよね」と言われた時に、日本のお医者さんや看護士さんは「何をバカなことを言っているのよ」と笑いとばすか、「そんなことを言わずにがんばりなさいよ」と励ますかのどちらかですね。
でも笑い飛ばされたら患者は孤独を感じます。「私のこのつらさをあなたは分かってくれない」と思って終わりです。また「がんばりなさい」と励まされると、「がんばれないから言っているんじゃないの。がんばれるならがんばっているよ」と、これもそこで終わってしまう。 それがたとえばアメリカの看護士さんだったら、こういう場合、「どうしてそう(死ぬなんて)思うの?」と問い返してくれます。すると、「あ、聞いてくれるのだ」と感じてうれしく思うものです。つまり「受容」ですね。
笑いながら「バカ、縁起でもないことを言って」などと言ってしまわないで、「どうしてそう思うの?」と、肯定も否定もせずに聞くことが大切です。すると「実は苦しいから」と患者が答える。「苦しいのね。どういう時に苦しいの?」と深く分け入っていきます。
それで相手が安心します。「自分を理解しようとしてくれた」ことが安心につながるのです。
私がセラピストとして注意して行なっていることは、肯定も否定もせず、とことん相手の本心を聞いてあげることです。話すことで本人の頭が整理され、初めは分からなかった不安の正体が、だんだんと形になって見えてくる。まずそれが第一歩ですね。 |
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加治:どういう人がウツになりやすいかというと、上昇志向の強い人がウツになりやすい傾向があります。
また、夫婦やパートナー、親子間などの身近な関係で、厳しい人がいる場合、ウツになりやすい。「あれをやれ、これをやれ」という命令、「あれをやってはダメ、これをやってはダメ」という禁止。そういうことを絶えず近くで言われると、プレッシャーで心がおかしくなる傾向があります。
私は偉大とされる経営者のご家族のセラピーも多数やってきましたが、創業者である父親というのは、やっぱりスーパースターですよね。勝仁さんの環境にも少し近いかもしれません。すみませんね…(笑)。創業者は「俺のやり方は正しいのだ」と、自分に強い自信があるわけです。そしてそれを家庭の皆に、孫にまで押し付けるわけです。
そこで子供や孫が反抗期だったりすると、家庭内暴力に発展しやすい。「じじいなんて何も分かっちゃいねえ。そんな時代じゃねえ」ってね。まあ孫はこんなふうに反抗できるだけまだいいのですが、その子供はやっぱりキツいですよ。スーパースターの父親に反抗なんてできるわけはありませんから。 |
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勝仁:ハハハ…(苦笑)。 |
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加治:それで、心が本当に崩れてしまうというケースも多い。 |
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勝仁:なるほど。まあ私の父(舩井幸雄)の場合はけっこう優しいですから、もちろん厳しいところもあるのですが。いままで一度も手をあげられたことはありませんし、自由を最も大切にするので、とりあえず間口のところは許容範囲が広いです。もちろん厳しくて、口ごたえはほとんどできませんでしたが、でもわりと自由にさせてもらえたところも多々ありました。 |
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また、父はマーケティングの関係で心理学の勉強もしていたので、そういう人の心というのも多少は分かっているのではないでしょうか。だから追い詰めないようにしてくれていたと思います。
実際、父が怒っていても、入社したての社員なんかは怒っているのが分からなかったりするのですよ。長年つとめている社員だと、「今日、ものすごく怒っている」というのが分かるのですが、まだ慣れていない人は「今日、会長機嫌良かったですよね。ニコニコしていたし」などと言うのですね。実際はものすごく怒っていたのに(笑)。そういうところがありますね。
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加治:なるほどね。まあ世間一般的な創業者で、一代で偉大なことを成し遂げ、富と賞賛をシャワーのように浴びた人というのは、一種独特の哲学を持ってしまうもので、それを変えるというのは相当な人物です。そして、まわりの人、だいたいがご家族ですが、ご家族が犠牲になってしまいます。だから私はカウンセリングするときは、ご家族の皆さん全員をみるようにしています。かかわっている全員をみることは大切な作業です。
すると奥さんは、御主人がいる前では何もしゃべらないのに、奥さん一人になるとよくしゃべったりする。また、創業者の方も、心に溜めていることがたくさんある。しかし誰にもそれを吐き出せない。チャンスがないわけです。うかつに弱音なんか吐けませんから。それをぜんぶ私に吐き出す。それでずいぶん和らぎ、また自分の立ち位置が見えてくるものなのです。
セラピストの仕事というのは、一枚一枚よろいを脱いでもらって、そして真の姿を語ってもらうことです。 |
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勝仁:なるほど。それにてしても、病んでいる人が多いということでしょうか。 |
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加治:ええ、とんでもない数です。年々増えていますよ、特に日本人は。 |
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加治:ええ、関係していると思います。日本人は考えているようで、そんなに考えていないような気がします。だから、坂本龍馬の話だって、まだ坂本龍馬がああいう英雄的なことをやったと思っている人が大半ですよ。僕の『あやつられた龍馬』 (文庫版『龍馬の黒幕』 )だって10万部しか売れていませんしね(笑)。
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勝仁:あんなに面白い本なのにね(笑)。私は4、5年前に読みましたよ。あれはぜひ読んだほうがいいと思います。私の『生き方の原理を変えよう』 の本にも書いたのですが、日本人はたしかに、自分で考える能力というのはあまりないですよね。奪われてしまっていますよね。
加治:頭が良い民族なのに残念です。学校での教育ですね。暗記ばかりで、考えられないようにさせられてきた、というのはあるのでしょうね。 |
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著書『龍馬の黒幕』 |
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勝仁:まあ先生はアメリカに長く住まれて、日本があまり好きではないかもしれませんが(笑)、この『生き方の原理を変えよう』の本のテーマは、「日本人が変わらなければいけないんじゃないか」ということで、「もしかしたら日本が変わらなければ、世界が変わらないのではないか」ということを言っています。
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加治:いや、私ももちろん日本が好きですよ。日本人は器用ですしね。『失われたミカドの秘紋』 にも書きましたが、意外と日本人が鍵を握っているのではないかと思っています。 |
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勝仁:そうですか、私も実はそう思っていて、だから「日本から変えなければいけない」と思っています。父もずっとそういう話をしていますし。父はいままでは「日本が一番優れているから、日本が変わるんだ」という論調でしたが、私はそうではなくて、「日本が一番遅れているから、日本が変わらなければいけないのではないか」と思い始めていますね。 |
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加治:なるほど、日本人というのは、とても素質があるのに、考えていない、と私は思っているのですね。例えば、「神仏合体」ってありましたよね。神と仏を合体させるなんて宗教哲学的にふざけた話だと思うのですが、それで争いにならないとしたら、それはすばらしいことですよね。たとえば、お寺の中に天照大神(あまてらすおおみかみ)とか平気でいますよね。それって、イスラム教の中にキリスト教を飾っているようなものでしょう(笑)。私の最近出した本に『失われたミカドの秘紋』 (2010年7月 祥伝社刊)というものがあるのですが、このテーマは、「漢字は聖書からできている」というものです。たとえば「船」。この字は「八に口」と書きます。不思議ですよね、「七」でも「九」でもなく「八」です。なぜ「八」かというと実は、聖書と一致します。「ノアのはこぶねに8人乗っていた」と。また、「禁」という字。なぜ、「林」に「示」で「禁ずる」になるかというと、「示」というのは、「しめすへん」で、「神」という字です。だから「福」とか「禍」などには「しめすへん」が使われています。アダムとイブがエデンの園で、「善悪の智恵の木に近づくな」と、神が命じたという聖書箇所から、「禁ずる」の「禁」という字になった、ということなのです。 |
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加治:そうでしょう? 偶然とは思えない漢字の成り立ちにはこういうことがいっぱいあって、それを私は、サンプルとして20くらい本で取り上げたかな。 |
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勝仁:面白いですね。ぜひ読んでみたいと思います。
それにしても先ほども言いましたが、日本人が一番遅れていて、分かっていないのかもしれない。でもそれをもっと深読みすると、ユダヤとか聖書などが生まれた頃から、日本人にそういうことをさせないように仕組まれていて、何千年も気づかせないように閉じ込められていたのではないか。そしてそれを変えていくのが、日本人のいまの役目になっているのではないか、と思うのですが、いかがでしょうか? |
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加治:そうですね。人というのは、自分たちのつくった「価値空間」の中に生きています。この「価値空間」は、親が作ったり、学校の先生が作ったり、テレビや新聞、雑誌などのメディアが作ったものです。「あれはいい、これは悪い」、「人生なんてこんなものだ」、「歴史はこうだ」、「勝ち組、負け組」という概念ででき上がったものを「価値空間」と言っているのですが、この「価値空間」は言葉で成り立っているので、私は「言語空間」とも表現しています。この「価値空間」は、「比較」というはかりを持っているので、常に精神的なストレスをともないます。 |
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たとえば、誰かに「あなたは仕事ができない」と言われるとしますよね。すると傷つきます。実際には、「何をもって仕事ができないというのか」と考えた時に、このつまらない「価値空間」を抜けられるのです。でも日本人は、たいがい抜けられません。「(勉強ができないというのは)テストの点数が低いからダメなんだ」などと真面目に思ったりする。そこで立ち止って、「本当に点数が低いとダメなんですか? どうしてですか?」という疑問を抱く人はごく少数です。
人間の造った「価値空間」を抜けて、「精神的スペース」と私は言っているのですが、そういう「精神的スペース」に自分の魂を置けば、まったくストレスを感じなくなりますよ、ということです。なぜかというと、「精神的スペース」では自由ですから。本当にそちらにストーンと抜けてしまえば、しばるものがなく、ストレスを感じません。自由な発想をもたらしますから、創造力などすごい能力を発揮したりもします。しかし「価値空間」の中にいたままだと、創造力とは無縁で、奴隷のように考えずに暮らすようになります。考えることといえば価値空間に合わせてどう生きようか?と、そのことばかりです。 |
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勝仁:分かる気がしますね。たとえば歴史の話で言うと、私は司馬遼太郎が大好きで、司馬さんの『竜馬がゆく』 と『坂の上の雲』 を何度も読み返したような子供でした。だからその後で、加治先生の『あやつられた龍馬』 を読んだときは衝撃でしたね。あれはある意味で「価値空間」を抜けた、といえるかもしれないです。 |
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加治:そうですね。だから出来上っている「価値空間」から抜けられたら、本当にその人の能力というのは、100倍とか1000倍どころではないほど、大きく広がっても不思議ではありません。
私は瞑想もしますが、「精神的スペース」に魂が行くと、時間と距離がありません。時間と距離は人間を呪縛する二大要素です。 『アルトリ岬』 (PHP研究所)のテーマでもあるのですが、人間というのは、皆、勘違いしてしまっています。自分に点数をつけてしまっている。「自分はまだ30点だ」とか、まわりからも「あなたはまだ20点だから頑張れ」とか、幼い頃から言われており、自分に点数をつけて、「自分はまだ30点だから、頑張ろう、頑張ろう」とやる。しかし、だいたい頑張れなくておかしくなってしまう。
しかしその30点という点数は、いまの「価値空間」での評価なわけです。「精神的スペース」での評価では、宇宙に存在するものすべては完成品ですから、100%OKです。蚊でも草でも蛙でも、何でもいいのですが、何の努力もせずにただそこにいるだけで、100%完成されている。「精神的スペース」の価値観から言えばね。
それを、なぜか知らないけど、人間的な言語空間では、「あれはダメだ」とか、「蚊は血を吸うから嫌だ」となってしまう。何をもってダメか、ということですよね。蚊にすれば血を吸うことはいいことですから(笑)。要するに、何を善しとし、何を悪いとするかは、人間が勝手に都合よくつくった世界なわけですよ。だからその「価値空間」に縛られないで、ストーンと抜けて、その「精神的スペース」に行くことができれば、人間はみな100点、悩むことはありません。 |
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勝仁:なるほど。「精神的スペース」をあえて言葉で説明すると、どういうものになるでしょうか? |
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加治:そうですね、宇宙には、「精神的スペース」がまずあって、その後に「物質スペース」ができたということです。五次元の空間とか、そういうのは分からないのですが、最初宇宙には「精神的スペース」しかなく、そこから素粒子ができ、素粒子宇宙ができて、地球ができて、人間ができて…ということだと思います。 |
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勝仁:なるほど。それと似た話を前田知則さんという方がおっしゃっていました。前田さんは、いまから10年以上前に「動物占い」というのが流行りましたが、この「動物占い」をつくった人です。前田さんはヨガや瞑想を何十年もやっている人で、その方が先ほど先生がおっしゃっていた「精神的スペース」のことを、「ブラフマン(梵)」(=ヒンズー教またはインド哲学における宇宙の根本原理)という言葉で説明していました。宇宙にはかつてブラフマンだけが存在して、完璧だったみたいなのですね。それであまりにも完璧すぎるので、ある時退屈してしまって、「完璧でなくなったら、どうなってしまうのだろう?」という疑問を持ち、そして自分を材料に、自分を回転させることによって世界をつくり始めたということをお話されました
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だからすべての人は、ブラフマンに戻れば実は完璧で、何でも知っていて、何でもできるということです。だから自分がブラフマンであることを自覚しましょう、という話でしたね。それで瞑想法とかいろいろ教えてくれました。前田さんの瞑想で面白かったのは、普通、瞑想というと「集中しなければいけない」と思いますよね。でもこの人の瞑想は、「拡散させる」瞑想なんですね。自分の細胞を、できれば素粒子のレベルにまで戻して、そして宇宙と一体化していく、彼の言葉でいうと「ブラフマンに一体化すること」を味わうと、何でもできるようになる、ということでした。 |
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話が盛り上がっています。 |
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加治:それはすごく当たっていると思います。私も瞑想を36才の時からやっていますが、やっぱり“集中”したら絶対に入れませんね。それは瞑想をやり始めてすぐに気付きましたが、その「拡散」という言葉がイメージ的にはぴったりかもしれません。何と言うのかな、さあ入りますよと、一旦集中して、逆にパーッと拡散する、という感じでしょうかね。
ところで今年中にまた、比叡山の大僧正の小林隆彰さんと二人で本を出す予定があるのですよ。小学生でも分かるようにイラストを多く入れる予定です(『大僧正とセラピストが人間の大難問に挑む』 (ビジネス社 12月発売予定))。たとえば「宇宙って何ですか?」とか、「死って何ですか?」、「失恋はどうしてするのですか?」など、そういう質問に対して、ページをめくると、大僧正の答と、セラピストである私の答の両方が載っているわけです。 |
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加治:そうでしょう? そういう人生におけるシンプルでかつ深い質問に対して、修行60年の比叡山の延暦寺の大僧正だったら何て答えるか、またセラピストだったら何て答えるか、ということを対比させて、展開していくのですが、誰にでも読みやすい内容になっています。
どの質問についても、二人の答は絶対にお互い見せないことにしました。でも、けっこう似ているものもあるようです。質問は一般の人から受け付けたので、俗っぽいものも多いのですよ。「姑とうまくいきません。だからお盆に帰省するのがつらいです。ウマが合いません」とかね(笑)。それに対する82才の大僧正の答は、すごくハートフルで、「ウマを合わせるのは、あなたです」とか、けっこう厳しかったりする(笑)。 |
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加治:そうですね、「自分を見失っているのは、『価値空間』の中に浸っているからです。『価値空間』を抜けて、『精神的スペース』に行くと、姑さんのことが『精神的スペース』から見えるようになります。たとえば、あなたが小学生の子供から何を言われても腹は立たないでしょう? あなた自身が『精神スペース』に行って、『価値空間』を見るというのは、そういうことですよ」とかね。 |
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加治:また私の中に書きたいテーマがあります。実は『アルトリ岬』の続編なのですがね。
それは、『アルトリ岬』を読んでくれた人が、「分かった。こういう生き方をすればいいんだな」と納得してくれたとしても、でも人間って、やろうと思っていてもやれないことってあるじゃないですか。例えば、「愛情を送りなさい」とか「愛情を受け取りなさい」とか言っても、「じゃあどうやったら実際に愛情を送れたり、受けとれるの?」という実践的な部分の疑問ってありますよね。また、実際に実践してみたら、実はいろんな問題が出てきて…みたいな現実的なレベルでの具体的な方法が分からない。それについて書きたいと思っているのです。『アルトリ岬』の完結編でしょうかね。まあまだ具体的な出版の話にはなっていないのですが(笑)。 |
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勝仁:それは面白そうですね。出版されたらぜひ読んでみたいと思います。 |
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加治:私たちも含めて宇宙は素粒子からできています。私は、素粒子というのは、愛情からできていると思っています。というのは、カウンセリングの鍵は愛情で、愛情を与えると、ほとんどの問題は解決しますね。そんなわけで、愛情が精神的な、物質的な、つまりすべてのエネルギーだと私は思っているのです。
「すべては愛でできている」。だから、すべてに“根本的な愛”で接していくというのが私のセラピストとしての基本になっています。これで失敗したことはないです。副作用もありません。知識を振りかざし、小手先を使おうとすると失敗しますけど(笑)。
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勝仁:加治先生は、それをどんな人に対してもセラピーで行うことができるのでしょうか? どうしても憎たらしく感じて、愛情を与えられない人というのはいないのでしょうか? |
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加治:いないですね。もし憎らしく感じた場合は、「どうして憎らしく感じるのかな?」と考える。まだ自分が「精神的スペース」に行っていないから、そう感じるということが分かります。
たとえば、とても嫌な感じで、ずるくて卑怯な人というのがセラピーに来ることもありますよね。また、私を騙そうとしてくる人もたまにいます。
その時、「精神的スペース」に自分がいると、「ああ、この人はそういうふうにしたいのだな」と、ありのまま思えます。だから身構えるということはありません。そこに反応してしまうということは、自分が「精神的スペース」に行っていない証拠です。
たとえば、本を書いたら、書評もいっぱい出ますよね。中には「こんなのくだらない」「バカみたい」なんてのもあるわけですよ。ああいうのにいちいち反応しないじゃないですか。反応したら、そういうことを言う素人と同じレベルの空間にいる、ということですからね。私としては、「遠いアフリカか、違う星でだれか、日本語の分からない人がなにか言っていることなんだよね」という感覚ですかね。 |
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勝仁:そうですか。とても参考になりますね。それにしても、加治先生は本当にいろんな面をお持ちですね。『あやつられた龍馬』と『アルトリ岬』を同じ人が書いたとは思えません。これからのますますのご活躍を楽しみにしています。今日は貴重なお時間をありがとうございました。 |
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舩井勝仁よりのコメント
本当におもしろい対談でした。
『アルトリ岬』のテーマになっている、セラピストとしての加治先生のお話を聞くことが対談のテーマでしたが、話は多岐にわたりました。
日本にも本当の意味のカウンセリングやセラピーが広まる必要を痛切に感じました。 |
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舩井幸雄よりのコメント
この対談、すごく参考になりました。加治さんの経験、「愛情を与えるとほとんどの問題は解決する」というのと、息子(勝仁)の聞き上手さに、びっくりです。
私も創業経営者の悪い「くせ」を、ちょっと訂正できそうです。先に結論を言うのを、少しゆっくりにします。 |
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