トップが語る、「いま、伝えたいこと」
先週に入ってから朝倉慶さんから何通かのレポートをちょうだいしました。
経済の短期と中期予測については、「超プロ」と言ってもいいのが朝倉さんです。
彼は3月24日のアメリカ政府発表の「不良債権の買取策」や4月2日の「時価会計の見直し法案の可決」で、いまアメリカの株価が上り、ドル高になっているのにふれ、その真実と、今後どうなるかなどを詳しく説明してくれているレポートです。
その詳細は、ここには発表しませんが、前者の結論として彼はほぼつぎのように述べています。
理論的には、この不良債権買い取りスキームにおいては、次のようなことができる形になっています。要は、金融機関の損失が巧みに米政府の損失に化けるようにできているわけです。底流に流れているのは、その考えです。やり方はいろいろあるでしょうが、複雑にすることで、世間的にはわかりづらい形に作ってあります。この金融機関の損失を米政府が肩代わりしていく、という形は、今回の危機が発生してから、断続的に続けられている作業であり、これも、その一環にしか過ぎません。米政府が損失を被るということは結局、税金、米国民に帰ってくるわけです。ドルを大量発行することで、ドル紙幣の価値の減価となって、米国民が損をするわけです。そして、今回まずいことに、このドルは世界中にまかれている基軸通貨ですから、回り回って世界中の人々が損失を被ることになります。一番酷いのは当然、ドルをしっかり貯め込んでいる日本と中国ということになるのです。
また後者については、結論として大要つぎのように述べています。
現在、米大手4行(シティ・グループ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ)だけでも5兆2000億ドル(約520兆円)もの簿外資産があり、これがほとんどとんでもない資産であるわけです。投資家としては、この資産をある程度正確に会計判断がなされなければ、状況が把握できません。ところが、これらの資産は今や、ほとんど取引が成立しない状態にあって、とても値段がついた取引を参考に時価会計をしてしまっては、酷い債務超過が、表に出てしまう、という切実な問題があったのです。<アストロミカル>天文学的な損失は、処理不能だったのです。
これらを時価会計して、その損失を一気に処理しようとすれば、米国政府としても、日本円にして400兆円近い公的資金が必要を言われているのです。現に、不良債権買い取り構想が議論になっていた時は、公然と400兆円近い資金が必要との報道がなされていたのです。米大手4行の簿外資産をみただけでも、当然、そのことはわかるわけです。しかし、今400兆円を投入して、米国債を大量発行して、ドルの暴落につなげるわけにはいきません。どうしても<先延ばし>しか選択肢はない、という判断です。
この先延ばしの判断に基づいて、すべてが進んでいるのです。1990年代、日本のバブル崩壊後における、日本政府の政策をみて、アメリカ政府は盛んに、<不良債権処理は手ぬるい、もっと会計基準を厳格にして、金融機関を処理して膿を出し切るべきだ、日本は粉飾だらけだ>と非難したのでした。2月9日、就任後初となる公式記者会見で、オバマ大統領は<行動を起こさないと、日本のように失われた10年になる>と発言しています。お笑い草とはこのことです。アメリカは日本のケースどころか、それをさらに一回り大きくして、今、一生懸命、国家ぐるみで粉飾に走っているのです。政治が酷い圧力をかけて、会計を踏みにじっているのです。そして、ついに会計審議会はポチになり下がりました。でたらめ会計どうぞ! と職場放棄したのです。4月2日、この法案通過をみて、ニューヨーク株式相場は再び急騰しました。
ブルームバーグによれば、アーサー・レビット元SEC(米証券取引委員会)委員長は、<FASB(米財務会計基準審議会)の行動が企業側から支援を受けている議員の大きな圧力に屈しているように見えるのが心配だ>と述べました。またオハイオ州立大のリチャード・ディートリッヒ教授(会計学)は、<不良債権を抱えるシティ・グループなどは、損失の50%から70%の圧縮も不可能ではない、同社は昨年、オルトA(サブプライムローンとプライムローンの中間に位置するローン)モーゲージに絡む160億ドルの損失を出したが、新ルールでは帳消しの可能性もある。バンク・オブ・アメリカも、昨年の税引き利益を44億ドルと報告していたが、新ルールでは35億ドル上乗せできるかもしれない>と述べました。その上で、教授は新ルールが銀行の財務諸表を改善する一方で、不良債権処理策の支障となる可能性も指摘しました。要するに、粉飾が容易に続けられれば、いつまでたっても不良債権処理は終わりませんよ! ということです。
今や、両面作戦でいくしかありません、粉飾、さらにインフレ政策、その間、許される額の不良債権処理、時間稼ぎがいつまで続けられるのかはわかりませんが、ドル暴落、悪性インフレという修羅場に進んでいることは間違いないようです(転載ここまで)。
私も同感です。
いまやアメリカは政官界あげて、基軸通貨ドルの没落と悪性インフレのために突っ走っているように見えます。
目先の一時しのぎのために、人類全体を不幸に導くと分っていることにとりあえず突っ走らねばならないことも分りますが、それにしてもこれがアメリカの指導者のすることかと「びっくり」です。
ともかく、これらの策を見て、喜んでいる多くの人たちの気持ちも分りますが、いまのドル高、株高が、いつまで持つのか非常に気になります。
ともかく人間が、私も含めて愚かであることは分っていましたが、それにしても考えればこれらは愚かの証明であり、少しマクロに考えれば非常にびっくりすることです。
あと一つ、すでに終った今年2月28日の古歩道(フルフォード)・ベンジャミンさんと船瀬俊介さんの講演案内とその時の講演内容、そしてお2人の対談概要のレポートを、知人からもらいました。
その内容はほぼ知っていることでしたが、やはりびっくりするレポートでした。いま世界のリーダーたちの思考や行動は、「少しおかしい」と考えた方がいいのかとびっくりしました(なお、このレポートの概要は4月20日のこのページに載せようと思っています。また全内容を『ザ・フナイ』の2009年5月号に載せたく思っています)。
=以上=
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