“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2010.01
グーグルVS中国

 「邪悪になるな!(Don’t be evil)」 グーグルの社是、モットーは自由な検索、ネット社会の構築です。中国政府からの常軌を逸した検閲にも我慢を続けてきましたが、もう堪忍 袋の尾が切れたというわけです。
 「我慢できない、撤退も辞さない」と中国政府と全面対立というよりは、すでに中国での事業拡張を放棄して自らの道を歩んでいくことを決めたようです。世界中の企業が注目し、発展市場と位置づけ、なんとか中国市場に参入していこう、ないしは大きく事業を伸ばしていこうと必死なのに、グーグルは何とこの、中国から撤退しようというのですから驚きです。
 「検閲されたのでは我々の求める本当の事業はできない、事業を始めた原点に戻ろう、たとえ大きな中国の市場を失っても、世界中のネット利用者はわかってくれる。彼らの信頼、本当の検索ルーツこそが我々の目指す道なのだ!」と言わんばかりです。
 待ってましたとばかりに、アメリカ政府も全面的にグーグルを応援、グーグルの発表に合わせて、ハワイ訪問中だったヒラリー・クリントン米国務長官は特別に声明を発表、グーグルがサイバー攻撃を受けた件について、「非常に深刻な懸念と疑念を抱く、中国政府からの説明を求める」と発言、にわかに米中がきな臭くなってきたのです。米メディアはこの問題について、グーグルの潔い態度を絶賛すると共に、グーグルが受けたというサイバー攻撃には中国政府関係者が関与していたと報道しています。しかもこれらサイバー攻撃を受けた米企業は20社を超えるというのですから尋常ではありません。中国が国家として不正な攻撃をアメリカ企業に仕掛けたと言わんばかりです。

ネット管理を巡り、まっこうから対立する中国とアメリカ
 米議会も勢いづいてきました。人権問題を追及し続けている急先鋒のナンシー・ペロシ下院議長はグーグルの行為に対して「表彰もの」と絶賛、自由な検索が大事で、グーグルの行動はアメリカ企業の手本になるという認識を示したのです。
 面白いことにまるで筋書きでもあったかのように、堰(せき)を切ったかのごとく中国攻撃が始まったのでした。確かにくすぶっていた貿易問題、知的所有権の問題、米中間には解決が必要とされる懸案は山のようにあるのです。しかし、オバマ政権ができて以降、オバマ大統領のソフトムードと一緒になり、緊張緩和、融和政策が続いていたのでした。9月は胡キントウ中国国家主席のアメリカ訪問、11月はオバマ大統領の中国訪問となって、まさに米中の蜜月時代の到来を演出していたのでした。「米中は戦略的なパートナーである」との共通認識がなされたと見られていたのです。
 グーグルは中国政府のネットの検閲を排除、天安門事件やチベット、ウイグルの問題など自由に公開しようという行動に出たのです。こんなことを中国政府が許すわけはありません。明らかに中国に喧嘩を売って自ら出ていこうとしている確信犯です。その確信犯に米国政府、並びに議会がエールを送っているのです。中国のネット上では「グーグルが撤退すれば中国のネットは闇の世界になってしまう」とグーグル支持が広がる一方で、「グーグルは中国の実情を理解していない」と批判も出てきているのです。中国政府の方針は一貫しています。当たり前のことですが、「ネット管理は治安維持の生命線」との基本方針で、ネット規制など緩めるはずもないのです。人民日報は今回の騒動に対し「インターネットの管理が国家の安全を保障する」と主張しました。
 元々、中国とアメリカは受け入れられない部分があるのです。圧倒的な国家管理で社会の安定を優先する中国と、民主主義を世界中に広め、ネットの自由な活用を目指すアメリカは水と油で、交わるはずがないのです。そして今その全面対立が始まるきっかけが作られたのです。

アメリカが強気でいられる理由
 今回の事件はおそらく歴史的な意味を持つようになるでしょう。というのもこれはアメリカ側が仕掛けた明らかに中国に対する挑戦であり、オバマ政権発足直後から続いていた対中国の融和政策の放棄であり、新たなアメリカの新方針を見せるデモンストレーションであることは明らかです。今までオバマ政権発足後は、アメリカは中国に対して弱越しでした。米国債の問題があるからです。アメリカはその巨額の借金、ファイナンスを中国に頼ってきたわけです。中国は米国債の一番の買い手です。中国が米国債を買ってくれなくなったら、アメリカの国債は当然金利上昇をなって暴落、アメリカ経済は大混乱、ひいては世界経済が取り返しのつかない局面に陥っていくのは必至なのです。ですからアメリカは中国におもねって緊張緩和を演出、米中蜜月を装っていたのです。それがこの突然の変化です。いったい何があったのか? 何を考えているのか? ここがポイントなのです。
 グーグルは中国政府に喧嘩を売りました。これはもうグーグルは中国から撤退してもいい、他で事業を拡張するからいいよ、と中国に三下り半を叩きつけたのです。そしてこのグーグルを全面支援するアメリカ政府、議会、世論も実は同じ覚悟、ないしは方向を見ていると思った方がいいかもしれません。今のアメリカの状況で中国に喧嘩を売るということはすなわち「売れるものなら売ってもいいよ、米国債買いたくなければ買わなくてもいいよ、好きにすればいい!」との覚悟のもとなのです。

 何故、アメリカは中国にこんなに強く出るのか? 実はこれこそがアメリカの本性なのです。元々中国などと融和する気などさらさらない、アメリカは覇権国家です。ドルという基軸通貨を持ち、金(ゴールド)を大量に持ち、穀物をはじめとする資源も豊富、いざとなれば一番強い国家です。昨年自動車販売でもアメリカは中国に抜かれました。このままでは多くの人達が思うように、ますます13億人を有する中国が発展して、あらゆる意味でアメリカにとって代わる、まさに中国は今の勢いで覇権を奪いとりにくるのに違いないのです。アメリカはそれを許すことはできません。今の流れで黙って中国の大発展、それに伴う覇権の移動を許すわけにはいかないのです。
 「両雄並び立たず」いつかはこの2大国は対決せざるを得ないのです。中国もアメリカもそのことははっきり意識しているはずです。そして喧嘩には仕掛けどころがあるのです。全面的な喧嘩、対立を目指すのはまだ先でしょうが、今回の事件は、アメリカ側としては、もうすでに中国は国家としてのピークに至っており、これから収集のつかない混乱に陥る可能性を見ているに違いありません。今、日の出の勢いの中国にどんな混乱が? 懸念材料が? と思うでしょうが、まさに日の出の勢いだから出てくる混乱に目をつけているのでしょう。中国のこれから起こる問題は?
 まさにヒートする経済が起こす、インフレです。先週中国は預金準備率を0.5%引き上げて金融を少し引き締めようとしていますが、この程度のことをしても恐らく全く効果はないでしょう。中国の不動産価格の上昇は異常で、一部の都市では月に10%近く上がるというのですから尋常ではありません。米シンクタンクAEIは年頭のレポートで今年世界の一番のリスクを中国のインフレ圧力と報告したのです。すなわち食料品をはじめとする中国国内物価の急騰、それによる混乱の始まりをみているのです。実際石油をはじめとする資源価格は上がり続けています。いつ最終商品に対しての激しい需要がヒートする状態になるかわからないわけです。日本国内の様子ではデフレでピンとこないでしょうが、勢いのある中国のような市場では一度供給不足状態になれば、あっと言う間に価格が急騰状態になるのは避けられないでしょう。需要が大きすぎるのです。今年の世界をみると年初からの世界的寒波の到来でエネルギー価格は急騰しました。

インフレの波は中国から?
 FRBのバーナンキ議長はマネーを有り余るほどに印刷しましたが、まだアメリカ本土ではインフレは起きていません。というのも有り余ったマネーは中国やブラジルへの投資という形になって新興国にバブルを輸出している形となっているからです。ですからこの流れの延長上にインフレがあり、今回世界中を覆うことになるであろう激しいインフレの波はまず、その発展の一番手の中国から火が上がるというわけです。そして仮に中国の物価が制御できないようになると、いよいよ世界経済のコントロールが難しくなる、と考えているのです。13億人の人口は巨大な力の源泉ですが、反面、一度歯車が狂った場合はコントロールが効かなくなるのです。物価が急騰して食べられなくなる人達が溢れる事態を想像してみてください。それが中国全土で発生したら? 中国で景気を冷やすための金融緩和はできません。8%成長を義務づけられているのです。失業者の氾濫は許容できません。いざ物価が上昇したら舵取りが極めて難しいのです。そしてシンクタンクAEIはそのことを予見しているのです。
 それだけではありません。米当局とも近い情報サービス会社、ユーラシア・グループは「2010年の最大のリスクは米中関係」と報告したのです。もう完全にシュミレーションはできていると言っていいでしょう。アメリカはこれから来る世界的な未曽有のインフレが襲う混乱を意識し始めているのです。それが中国から発生すること、そのことが世界経済の方向性を不確実にかつ難しくすると思っているのです。今、世界は新興国の爆発的な需要に助けられ、景気回復の足取りを歩もうとしているように見えます。その機関車の中国についにインフレの波が押し寄せ、結果、経済政策に支障を来たし、収集不能の状態に陥ると思っていることでしょう。ですからそれをみて、今、対中国政策の舵を切り替えたのです。そろそろ喧嘩を始める時、これから大混乱になって中国が弱ったときにアメリカは中国に対して牙を剥くでしょう。その時の役者はオバマかヒラリーかはわかりません。「肉を切らして骨を絶つ」、アメリカは自らの犠牲が伴うのはわかりきっています。戦うということは自らも傷つくのです。アメリカは覚悟を決めたのです。そして準備を始めました。勇ましいグーグルの姿はアメリカ国家そのものです。ついに、米中、生き残りをかけた覇権争いの幕は開いたのです。

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船井幸雄・朝倉慶氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月に発売された、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が大好評発売中!!

『朝倉 慶の21世紀塾』を2009年2月より開始(主催:(株)船井メディア)
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 船井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を船井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に船井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)を発売。

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