“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2010.05
ギリシア問題の末路

 世界の市場が揺れています。下落に次ぐ下落、何と日経平均は本日(5月25日)9,500円割れ、4月の11,400円からわずか1ヵ月足らずで、2,000円、率にして20%近い下落です。これは何も日本だけでなく、世界中の株式市場が崩れてきているのです。ニューヨーク、欧州、アジア、中国、ロシア、例外なく世界中の株が下がってきています。
 いったい何があったのでしょうか? 
 元凶は、ユーロ、ギリシアで起こった金融危機の広がりが全世界に及んできたのです。
 ギリシアなんてEU域内のわずか2.6%の経済規模、日本のGDPに比べたら30分の1の規模です。なぜ、小さなギリシアがこれほどの影響を全世界に与えることになったのか? すべてはユーロ、ギリシアが加盟するユーロ圏、並びにユーロという通貨の問題が元凶なのです。そしてこのユーロの問題は、救いようのない迷路に迷い込んだように、もう二度と出口に向かうことなく、放浪に放浪を重ね、最終的には崩壊という大爆発に向かっていくのです。

ユーロ導入のメリットを謳歌した結果…
 そもそもユーロ創設は歴史的に壮大な実験だったのです。国家が違った国々が通貨を統一するというかつてなかった試みでした。様々な動機があったと思いますが、戦火を繰り返してきたヨーロッパ地域の統一の夢や、米国に対抗して強い経済圏を構築すること、また東西統合したドイツの肥大化を恐れた周辺諸国の意識など、多くの理想や思惑の元に創設されたのです。通貨を統一すれば、そのすべての国々は通貨発行権を放棄するわけですし、自国の中央銀行、日本でいえば日本銀行の権利を放棄して統一した中央銀行を作るわけですから、まさに思い切った試みだったのです。
 そしてその試みは上手く成功して、ユーロ圏のゆるぎない発展を感じさせることもあったのです。しかし、リーマン・ショック後の経済の混乱とマイナスに陥った各国の経済状況の中で、いよいよその大いなる矛盾が頭をもたげてきた、今はついにその矛盾の大きさからユーロは内部崩壊に向かってきているのです。

 これは日本のケースで考えると、たとえば日本と韓国を中核としてアジア地域、べトナムやインドネシア、フィリピン、マレーシアあたりのASEAN諸国を一まとめにして統一通貨を作ったと想像すればわかりやすいと思います。ユーロ圏に当てはめると、日本はドイツ、韓国をフランス、その他の国々をギリシアやスペイン、イタリアなどと考えてみるとどうでしょうか? 日本と韓国は強いですが、フィリピンやインドネシアはまだ、日本や韓国の経済には追いつきません。
 しかしながらこのようなアジアの通貨統合が起こったとすると、まず、日本などの輸出型の経済の国にとっては為替の変動の問題がなくなります。すると好きなようにアジア地域に輸出が増えるというメリットが起こります。
 現実にユーロ圏の創出においてドイツは、ユーロ域内の輸出が大幅に増えたのです。ドイツマルクを使っている時に比べて、為替変動がないということは圧倒的に有利だったわけです。また通貨統合をすると、その統合された比較的国力の弱い国、アジアのケースで考えるとフィリピンやベトナムですが、これらの国は通貨が日本や韓国と一緒になると、その強い通貨圏に入ったということで、信用が上がるのです。強い国と一緒の通貨を持てたからです。これが現実にユーロ圏では起こりました。ギリシアやスペイン、イタリアなどがユーロを導入したということで、一気にそれらの国の信用が上がったのです。信用が上がるということは、いわゆる資金、お金が借りやすくなるわけです。また外からの投資が増えるわけです。自分のこととして考えるとわかりやすいですが、強力な保証人がついたと思えばいいでしょう。銀行はあなたに強力な保証人がついたことを確認して、今までの数倍も資金を融通してくれるようになったのです。
 これがギリシア、スペイン、ポルトガル、イタリアで起こったことです。要するに、実態以上に信用力がつき、その結果として身の丈に合わない借金ができるようになり、現実に多額の借金をしたと思えばいいでしょう。ギリシアなどはユーロ圏の傘に入ったことで、独仏や英米などからも多くの借入が簡単にできるようになり、また、これら独仏や英米の銀行はこぞってギリシアなどに資金を貸し込みました。また様々な投資をしたのです。
 この借入金で消費して、ドイツなどから輸入しまくり、好況を謳歌、これはドイツなどにとっても好都合だったわけです。輸出好調、物が売れるからです。この資金の循環と経済の拡大でユーロ圏の諸国はすべて恩恵を受けたのでした。ユーロ導入のメリットだけをお互いに享受したのです。

限度を超えた借金は返済不可能という現実
 ところがリーマン・ショック後、すべては逆転、経済は縮小の流れとなりました。そうなると今までのプロセス、資金循環はすべて裏目になって、今度は大きく信用を供与しすぎたことが問題となってきたのです。資金を供与した独仏から見ると、ギリシアなどに資金を貸し過ぎた、投資しすぎたということです。また資金を借りたギリシアなどの諸国からみると、大きすぎた借金に気付いたが、もう手遅れで返すことができない額にまでなっていたということです。
 借金もある程度なら返せますが、一定の水準を超えれば返せません。これは我々の日々の生活や経験でもわかることで、借金地獄に陥ってしまえば、悪循環でもう地獄に落ちるしかないわけです。唯一の救済手段は個人なら自己破産、法人なら債務免除か債権放棄というもので、簡単に言えば、借金が行きすぎれば<返せません>と手を上げるしか救いようはないのです。よくサラ金などで借り過ぎて何とかしようとしているうちに借金地獄に陥っていくという話がありますが、国の借金も同じで、限度を超えれば、もう救いようはなく、唯一の解決方法は借金棒引きしかないのです。

 そしてギリシアもスペインもポルトガルもイタリアも、このような限度を超えた借金を背負っていると思えばわかりやすいと思います。要するに彼らとすれば返済を続けようとすれば、とんでもない苦労を続けなければならないのです。
 たとえば今回ギリシアは、IMF(国際通貨基金)の指導のもと、緊縮財政のプランを実行しようとしています。ギリシアは勤労者の4分の1が公務員というとんでもない国ですが、この給与を3割カット、ボーナスもカット、消費税は19%から23%へと引き上げです。
 みなさんならどうですか? ボーナスがなくなり、3割カットの給料では、実質5割近い収入減でしょう。みなさんだったら耐えられますか?
 そして問題はさらにその後なのです。今回のIMFのプランですと、このような5割に近い収入減を耐えて、5年間頑張ったとしても、実はギリシアの借金は少しも減ることなく増えるというのです。
 このIMFのプランですと、ギリシアの公的債務の対GDP比は、今の120%から、このプランを実行してギリシア国民が耐えるだけ耐えてとしても150%に上昇するのです。要するにギリシア国民はもう一生苦労するしかないのです。借金地獄から抜けることはできないのです。

現在のシステムの崩壊は時間の問題
 1998年、ロシア危機が起こりました。この時ロシアはデフォルト宣言、借金棒引きを宣言したのです。その結果、ロシアに投資していたヘッジファンドをはじめ膨大な損失が発生して金融危機が起きました。有名なLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネージメント)(=アメリカのヘッジファンド)などの金融危機で米国はじめ、金融パニックを起こしたのはロシア危機が原因だったのです。
 その後どうなったか? 
 借金の棒引きに成功したロシアはあっと言う間に経済の回復をみたのです。何とロシアの株式市場はその後10年間で時価総額は100倍にまで上昇したのです。
 どっちがいいですか? 借金を払おうと苦労する方がいいか? 「払えません!」とデフォルト宣言した方がいいか? わかりますよね。

 今、ギリシアはじめ、PIIGSと呼ばれるポルトガル、スペイン、イタリア、アイルランドなどの国々は内心、借金を返しきるとは思っていないでしょう。膨大な国債を発行して日本や中国に購入してもらっている米国も借金を返す気などさらさらないでしょう。お金を貸した経験のある人ならよくわかるでしょうが、借金は借りるまでは借り方が低姿勢ですが、いざ借りた後は立場が逆転するのです。なんといっても借金した方が強く、貸した方は頭を下げて「返してください」と懇願するしかないのです。
 そして今欧州で起こっているこのユーロ危機というのは、この借金の棒引きができないところに悲劇があるのです。仮にギリシアがデフォルト宣言でもして、「借金は払いません」と宣言されると、途端に独仏や英米の銀行が潰れてしまうのです。ですからギリシアにデフォルト宣言されるわけにはいかないのです。ギリシアも早くにデフォルトしたいでしょうが、とりあえず資金を貸してくれるのならポーズだけとっておとなしく借りておこうというわけです。いつまでも耐乏生活が続けられる国民ではありません。
 来るべき日はやがてきます。連鎖的に国家のデフォルトが頻発して、ついには現在のシステムが崩壊に至るのです。とりあえず今回は、中央銀行であるECB(欧州中央銀行)がお金を刷りまくって、それに米国の中央銀行であるFRBも協力して、何とか収めてくるでしょう。現在の混乱は早晩収まると思います。しかし、そんなことを繰り返しているうちに世界は規模を数倍にしたマネー経済の崩壊、ハイパーインフレへの道へはっきり向かって行くのです。

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(※朝倉慶氏は、(株)船井メディア企画の『朝倉慶の21世紀塾』でも詳しい経済レポートやCD情報、セミナーを開催、お届けしています。よろしければご活用ください。)


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朝倉慶氏最新著『裏読み日本経済』(徳間書店刊)『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月に発売された、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が好評発売中。さらに2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)から発売。

『朝倉 慶の21世紀塾』を2009年2月より開始(主催:(株)船井メディア)
朝倉氏の最新情報を【A】レポート、【B】CDマガジン、【C】セミナーから学べます!
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 船井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を船井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に船井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)を発売。

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