“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2011.03
今後の経済と生き方

 まずは今回の地震で被災された方々へ心よりお見舞い申し上げます。また現在、福島原発で命がけで作業している関係者の方々、並びに被災地で懸命の救援活動されている方々へ敬意を表します。
 今回の地震は未曾有のもので何と阪神大震災の1450倍のエネルギーということです。当然、その影響も尋常なものではありません。現在もガソリン不足をはじめとして、計画停電などで日本経済は大きな影響を受けています。今後一体、この日本の経済はどのような展開になっていくのでしょうか?

今後の日本経済はどうなる?
 結論的に言いますと、これから一時的には混乱は収まっていくでしょうが、その後、来年に向けて収集のつかないインフレ状態になり、円安、物価高と混乱の度をさらに増していくことになっていくでしょう。ただ、この試練は私達は必ず乗り越えられるものです。
 今、世界中で日本を助けよう、という輪も広がってきています。さらに今までにはなかった日本全体の共存意識といいますか、みんなで協力してこの困難に打ち勝とうという動きが出てきています。ぬるま湯につかっていた日本全体でしたが、急激に気持ちが締まってきた感じです。日本人はあの終戦後の焼野原から世界のどんな国より早く復興しました。また明治維新もそうですが、維新後わずか数十年で世界に対抗できる国になりました。元々日本人の能力は高く、危機にこそ力を発揮できるのです。今までのぬるま湯から日本全体が脱するいい機会です。皆で協力して日本人の底力を見せるときではないでしょうか。

 さて経済の状況ですが、現在の混乱が収まってからが本当の激しい激動が待っていると思ったほうがいいでしょう。現在、東北地方は壊滅状態になっています。各幹線道路、太平洋側の港湾施設、まさにどこから手を付けたらいいのかという状態です。この東北地方は日本の基幹産業である自動車、半導体の部品メーカーのメッカであり、さらには農産品、水産品の国内有数の産地でもあります。今回の地震後、この工業群はまだ全く再開の目途すらつかない状態です。また農業や漁業はほぼ壊滅状態と言えるでしょう。今は自動車を作るにも2−3万点の部品がいるわけですが、これらの工場はこの基幹的な部品を作っていたところが多く、これでは日本のお家芸の自動車や半導体も作ることができません。いつ再開の目途は立つのか、さらには他に供給基地を求めることができるのかというとこれが難しい、日本の部品メーカーの技術の高さが今度は逆に代替品ができない状態となっています。
 それにさらに追い打ちをかけていくのが、東電の計画停電です。半導体などの精密さを要求され、精緻な部品を製造するには、電力の安定供給は欠かせません。この計画停電では地震では東北に比べて被害が少なかった関東全域の企業も影響を受けています。しかもこの東電の電力供給不足が今回の原発の事故で、恒常的なものになってしまったということです。
 とりあえず今回の計画停電は4月末には終了するということですが、その後、東電が地震前のような電力を供給し続けることはできません。廃棄した火力発電などを急いで復調させていますが、福島原発の大きな穴を埋められる目途はないのです。となると、この東電の管轄地域、東京都をはじめとする1都8県はもはやエネルギーの供給がほとんど今の状態と変わらない状況が続くしかないということです。この東電の管轄地域は日本の中枢であり、日本のGDPに占める割合は4割です。まさに日本の中核である関東圏はエネルギー不足となって経済成長ができなくなるのです。

 一方で政府の強力なバックアップのもと、巨大な復興事業が始まります。なにしろまずはインフラの回復からです。壊滅した道路や港湾、鉄道、そして住宅など膨大な復興事業を展開しなければなりません。これはかつてなかったほどの規模です。今回の地震は阪神大震災の時と違って、東北地方の太平洋側、ほとんど全域に被害が広がっています。これを国家の力を最大限に投入して短期間に回復させなければなりません。気の遠くなるような膨大な事業です。高度成長期に匹敵する建設ブームが生まれることでしょう。内需拡大ができないというのが問題だった日本経済ですが、一転して海外どころか国内に巨大な資金を投入する必要があるのです。
 このように日本は、復興という<需要拡大>と、一方で地震の後遺症からくるエネルギー不足がもたらす、<成長率低下>という異なった要因を持つことになりました。復興需要は膨大な資源が必要となりますから、原油や鋼材など輸入は大きく増えることでしょう。 一方で輸出は、工場の完全な修復を待たなければならないので、どうしても停滞します。
 となると、今の貿易黒字が赤字方向に向かっていきます。また復興需要と言っても、資金がありませんから国債発行を伴う巨額な財政出動をするしかありません。今の国の財政状況を照らし合わせて貿易赤字に向かえば、当然中長期でみて円安方向です(短期は円高の可能性も)。
 そしてこの需要拡大と供給不足が何をもたらすか? 必要なのに物がなかったらどうですか? インフレです。誰でも欲しければ買いにいくのです。今ガソリンに2、3時間待ちの列が作られていますが、仮にこれが値段の制限がなかったらどうでしょうか? 必要なら1リットル200円でも300円でも買うのではないですか?
 新日鉄は今、原料の調達に苦しんでいます。鉄を作る原料である鉄鉱石と原料炭の値段が高騰しているのです。1トンの鉄を作るのに鉄鉱石1.5トン、原料炭0.8トン必要なのですが、この鉄鉱石は前年比40%高、原料炭は65%高で資源メジャーと契約しました。当然新日鉄も鉄の価格を4月からは値上げの構えです。値上げしなければ自分のところが持ちません。これは一例ですが、現在世界中で資源価格が高騰しています。

   そしてこれから日本は膨大なインフラ整備が必要なわけですが、このインフラ整備に使うのは何でしょうか? 鉄です、銅です。まさに今、新興国は急激な発展をして資源の値段がロケットのように上がってきている。地震を契機としてこれらの資源をこれから爆発的に必要とするのが日本なのです。鉄が高いからって道路や鉄道、港湾の整備を後回しにすることができますか? 今、ガソリンを並んで必要とするように、どうしてもこれらの資源、鉄や銅は必要なのです。地震後、数日は経済の悪化を懸念して世界的に商品相場は下がりましたが、もうすでに日本の需要を見越してじりじりと上昇が始まりました。

 またエネルギーを考えてみましょう。原発はもう国民が拡張することを許さないでしょう。そして全世界で今回の福島原発のことが連日報道されました。当然世界的に原発に対するアレルギーが急激に高まってきています。各国、原発計画の見直しが相次いでいるのです。ここ2、3年はCO2排出の問題から火力発電が嫌われ、原発建設の流れが大きくクローズアップされてきたこの時に、日本の地震が起きたのです。当然、世界各国はエネルギー源を原子力以外に求めるしかありません。では現実的にはどうでしょうか? 実際は火力発電しかありません。太陽光や風力はまだ物にならないのです。となると火力ですから再び石油、石炭ということになります。石油の値段も石炭の値段も急騰していますが、今回またリビアの情勢が怪しくなってきています。またバーレーンもデモを力で抑えました。いつまたこの地域が収集のつかない混乱になっていくかわかりません。石油も石炭も一時的に値段が下がることはあっても、基本的には大きく上昇するトレンドなのです。

 食料はどうでしょうか? 今回の地震で被害を受けた東北地方は米どころ、穀倉地帯です。また日本で一番の漁場です。今は全滅状態です。現在この農作物や魚は値段は大きくは動いていません。例えば魚は計画停電の関係で業者が冷蔵庫を使えないために購入を控えているのと、地震でマインドが冷えた消費者が高級品を買わないという事情があります。
 農作物も築地など市場に入ってくる物が少なく市場に活況がありません。しかしこの状態が一段落して落ち着くと、一気に値段が上がってくる可能性が高いでしょう。なにしろ供給が少なくなるという根本問題があるからです。

みんなで力を合わせて、苦難を乗り越えよう!!
 このように考えていくと、いよいよこの地震を契機にして日本の本格的な物価高が始まりそうです。まさに地震が引き金を引いて水面下でくすぶっていたインフレが頭をもたげてくるということでしょう。
 残念ながら、経済は来年にかけて混乱の度合いを増していくでしょう。しかし、起こることは全て必然と言いますが、これらの混乱は我々に大事なものを気づかせてくれるきっかけになるのではないでしょうか。コンビニやスーパーの棚に何もなくなって初めて気づきました。今まで日本人はいろんな物に満たされていたのです。そして大事なものを忘れていました。今回地震の後、皆、助け合おう、協力しようという機運が盛り上がってきています。まさにこれから本格的な経済混乱が襲ってきますから、皆で助け合って、支えあって生きなければなりません。苦難を力に変えましょう。困難は私達に生きる意味、本当に大事な物は何か、教えてくれるに違いありません。

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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