“超プロ”K氏の金融講座

このページは、船井幸雄が当サイトの『船井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介している経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2011.10
崩壊に向かう資本主義

 「資本主義は本質的に矛盾を持った社会制度であり、永続は不可能、発展すればするほど行き詰り、やがて崩壊に至るだろう」
 これは約10年前、2002年初頭に出た船井幸雄先生の著書『断末魔の資本主義』(2002年1月 徳間書店)の一節です。船井先生は資本主義はエゴがそのベースとなっているシステムであり、人間本来の生き方とは相容れない、ゆえにやがてその役目を終え、10年足らずで崩壊に至り、新しい世の中ができると説いたのです。もちろんこの本においては政治、経済、環境、歴史、そして人間の生き方という根源的な多くの観点から資本主義崩壊に至る必然性を説いていました。
 ところが、その本が発刊されてまさに予言通り10年経とうとしている今、この資本主義崩壊の予兆について、大物投資家達が発言するようになってきたのです。彼らの視点は、主に経済、社会的な視点からなのですが、さすがにあらゆる情報が入ってくる彼らの言動は事実に裏付けされているに違いなく、いよいよ資本主義というシステムが最後の段階にきて、これから想像を絶する混乱が待ち構えていると思うしかないのです。2012年は全世界の人達が声を失う金融の大混乱、パニックが訪れることでしょう。

すでに世界の金融システムは破綻している!?
 まずは、世界的な投資家、ヘッジファンドの頂点に立つ、ジョージ・ソロスです。彼は現在の欧州危機から発している国際金融市場の混乱について、この動きは「旧ソ連崩壊前夜の様相だ」と断じたのです。1980年台後半、東欧諸国は次から次へと行き詰り、国内で革命的な民主化の嵐に晒(さら)され、ドミノ倒しのようにその共産体制が崩壊していったのです。1989年にはついにベルリンの壁が民衆の手によって壊され、東ドイツは崩壊しました。少し間をおいてソ連は崩壊、大混乱を経て現在のロシアへと至るのです。まさにこの当時、20世紀最大の変化がダイナミックに起きたわけですが、これも歴史の必然と言えるでしょう。ソロスはこのソ連邦崩壊を、現在の世界を覆う資本主義システムの崩壊とダブらせているのです。彼から見れば今や世界の金融は絶壁の淵に立っていて、もう奈落の底に落ち込むのを待つだけというわけです。ソロスは世界の現状について20年前のソ連邦崩壊に重ねて、「西側世界では当時と似たような状況にもかかわらず、各国当局の力によって生き永らえている。人々はシステムが現実に崩壊したことを理解していない」と述べたのです。
 彼の言うシステムというのは、「世界を覆う金融システム」のことですが、実は彼の言うように、今や世界の金融システムは完全に破綻している様相なのです。ただ当局が真相を隠しているだけ、ないしは世界中の人達が「システムは健全だ」という幻想に生きていると言ってもいいでしょう。もう、世界の金融には何もなく、まさに「裸の王様」なのですが、当局や多くの識者が大丈夫と太鼓判を押すので、思考停止となっているだけなのです。実際はもう世界中の銀行には何もありません。まさに裸の世界、皆が裸ではないと言っているから機能しているだけなのです。

 ソロスの言うように、「人々はシステムが崩壊したのを理解していない!」というのを聞いても、「何のこと?」と思うかもしれません。しかし現実に銀行に何もないのです。例えば今の欧州、最近「デクシア」というベルギーとフランスの資本が入っている銀行が実質破綻しました。このデクシアは3ヵ月前まではストレステストで健全銀行というお墨付きを欧州当局からいただいていたのです。ところが昨今になって、ギリシアの国債が危ないということになったら、このデクシアはギリシア国債の保有が大量だということで行き詰ってしまいました。さらにアイルランドやポルトガルの国債、スペインやイタリアの国債、そしてついにフランスの国債までもが危うい淵に立ってきたのです。
 今や世界中の銀行をはじめ、保険会社や年金など金融機関の持っている資産のほとんどは国債なのですが、この国債にまずは欧州から危機が直撃です。このデクシアの場合は、218億ユーロの国債を保有していました。このうちの34.8億ユーロ、約15%がギリシア国債だったのです。国債に対する懸念が拡大し、資金調達に支障をきたし、破綻したのです。因みに欧州の主要銀行をみると、ドイツ銀行が国債保有額が94億ユーロで、そのうち15億ユーロがギリシア国債、同じくコメルツ・バンク(独)は173億ユーロの国債保有で、30億ユーロのギリシア国債、BNPパリバが355億ユーロの国債保有で、50億ユーロのギリシア国債、ソシエテ・ジェレラルが92億ユーロの国債保有で、26億ユーロのギリシア国債保有となっています。これらほとんどの欧州の主要銀行は現在、資本不足が伝えられています。
 デクシアは、国債保有額の15%がギリシア国債で実質倒産ですが、それではギリシア国債を資産の8割近く保有しているギリシア国内の銀行は大丈夫なのですか? 当然ギリシアの全ての銀行が実質破綻状態と言えるでしょう。それでも破綻処理はされません。当局が破綻と認定していないからです。一番酷いのは中央銀行であるECB(欧州中央銀行)で、これはギリシア国債や今話題となっているイタリアやスペインの国債を山のように持っています。おそらく世界で一番酷い、実質債務超過の最たる銀行はECB、欧州中央銀行でしょう。誰も異論は唱えないと思います。言わないだけです。裸の王様を裸というのは勇気はいることなのでしょうか? それでも現在ユーロも健在なのは、もう今世界中の人達は感覚がマヒしているわけです。何にマヒ? 銀行は潰れるわけがない! 当局が何とかしてくれるだろう! という盲目的な信頼です。当局には絶対的な力がある、と思っているのです。だからソロスは言うわけです、もう限界がきている、と。「人々は現実にシステムが崩壊していることを理解していない」と。

我々に見えない“金融の闇”とは?
 しかしソロスが言っている「システムが実質崩壊している」という言動は、もっと深い意味もあります。彼だから知り得る観点での、世界の銀行システムの破綻が迫っているということでしょう。では、もう一つの我々に見えない金融の闇はどこにあるか? というと、それはタックスヘイブン、いわゆるケイマン諸島や、バミューダ諸島などの租税回避地に隠されているわけです。
 これは何かというと実は、2008年当時の米住宅ローン担保証券をベースにした証券化商品なのです。2008年の段階では一旦、会計処理を甘くして、これらの時価評価を封印してきました。当時レベル3と言われたこれら証券化商品を時価評価する予定だったのですが、米国、欧州も急遽方針を変更したのです。こうして、いわゆる「飛ばし」という小会社やヘッジファンドへの貸付という形で損失が公になるのを隠してきたわけです。
 一番酷い出鱈目(でたらめ)は、レベル3のような証券化商品は値段がつけられないので、正確な価値を判定できない、ゆえに自ら査定して、自分で値段を決めろという通達です。これで欧米金融機関は堂々と決算を粉飾できたのです。ところが実際は、これら証券化商品はデリバティブ市場で値段がついていて、元金の2割、3割、中には無価値になったものもざらなのです。これらの証券化商品はその元が米国の住宅ローンをベースにしているわけで、この米国の住宅価格は当時に比べて下がっているわけですから、問題が拡大していることは疑いありません。この封印した膨大な損失がいよいよ覆い隠せなくなってくるかもしれない、そして欧州の金融危機がそれらを白日に晒(さら)すきっかけを作るかもしれないわけです。
 思えば1989年、日本のバブルが崩壊して、わずか1年半で株価と不動産が半値以下という大暴落をしました、しかしその直後は、主要金融機関は日本でもどこも潰れなかったのです。全て損失を「飛ばし」と言って、小会社や貸付として封印したからです。しかしそれから8年経って、ごまかしがきかなくなってついに山一証券の倒産から長銀、日債銀、北海道拓殖銀行の破綻へと至り、それでも実質止まらず、2003年のりそな銀行への公的資金投入へと至るのです。まさにバブル崩壊以降は、当局は嘘のつき放題、金融行政はごまかしの歴史だったのです。
 このようなことは、現在の米国の主要銀行の取引にも現れてきました。いわゆる倒産確率を売買するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)というものでは、何と米国の主要銀行であるモルガン・スタンレーが10月11日、6.5%という数字になりました。これは倒産確率3割以上ということです。モルガン・スタンレーはデリバティブの想定元本ベースが4,300兆円もあるというのです。我々の想像を絶する取引額で詳細は闇の中です。金融の雄と言われるゴールドマン・サックスもCDSの値が4%、これは倒産確率2割ということです。世界でベスト10に入ると思われる金融機関がこのような大きい倒産確率で取引されているという事実をどう思いますか? 「全く手のつけられない銀行危機を引き起こすであろう!」ソロスの言葉が重く響くのです。

 ゴア元米国副大統領と共に2004年にファンドを立ち上げた、同じくヘッジファンド業界では大物のデビッド・ブラッドは現在、米国から始まって世界中に拡大している「ウォール街を占拠せよ」のデモ拡大に好意的です。彼はデモ行為者の主張は正しく、いよいよ「資本主義は存続する資格を失うリスクがある」と警告しました。「我々は99%だ、わずか1%の人達が富を独占している」と訴えるデモ参加者の主張は正しく、我々がどこに向かうべきかという判断も正しい、と言うのです。そして資本主義自体が崩壊しているか、ほぼ崩壊しつつあるという問題が存在する、と指摘して、残念なことだが資本主義は今や忌まわしい呼び名と化していると断じました。まさに資本主義は存続する資格を失う可能性があり、我々はその時、本当に深刻な問題に直面することになるだろう、と言うのです。

 船井幸雄先生がおよそ10年前に警告した資本主義の崩壊が予想通り10年経って本当に現実化しようとしているのです。ヘッジファンド業界の大物達は、現在の危機が欧州に留まらず、全世界的な危機に拡大していって、やがて資本主義という現在のシステムの崩壊を引き起こすことを確信し始めているのです。
 もう我々に残された時間は少ないのです。混乱と共に時代を乗り切る覚悟が必要な段階にきています。「物的なモア・アンド・モアの追求と共に、競争、秘密、浪費、分離、金銭至上主義などという資本主義の持つエゴの立脚した方向性は、人間を不幸にし、文明を破滅させ、人類を原始人に戻らせてしまう」と警告した『断末魔の資本主義』の一節が胸に響きます。



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朝倉慶氏最新著『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を発売。2011年7月に最新刊『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。

『朝倉 慶の21世紀塾』を2009年2月より開始(主催:(株)船井メディア)
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 船井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を船井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に船井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を発売。そして2011年7月に最新刊『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。

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