“超プロ”K氏の金融講座

このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。

2018.05
監視社会

 「天の張る網は、広くて一見目が粗いようであるが、悪人を網の目から漏らすことはない。悪事を行えば必ず捕えられる」
 中国の偉大な哲学者、老子の言葉です。この老子の言葉「天の張る網」、「天網」に倣って中国では人々を監視する全土に張り巡らせた監視カメラのシステムを「天網システム」と呼んでいます。町の至るところに張り巡らせた監視カメラシステムは極めて精巧になり、技術は日進月歩で進歩して、現在では中国のあらゆるところを網羅する監視システムが構築されようとしています。北京の一部の電柱では何と60台ものカメラが1台の電柱に取り付けられているケースもあるほどです。高性能カメラは人々の顔を識別していきます。不審者となればたちまちアップで画像が提示されるわけです。

●現在の日本に、監視社会は訪れているのか?
 2017年末現在で中国全土に1億7000万台の監視カメラが設置されていますが、中国では2020年までに4億台のカメラを設置する予定です。監視カメラはAIと直結して巨大な監視ネットワークシステムを構築しています。カメラの演算速度は毎秒30億回に及びます。今や5万人のデモ隊の中からでさえ、容疑者1人を見つけ出すことが可能になっています。このカメラでは中国人であれば1秒で照合可能、外国人であっても2秒で確実に照合できるのです。サングラス型のスマートグラスを付けた警察官はカメラで映しだされた顔を犯罪者のリストと照合、0.1秒という速さでアラームがなります。こうして犯罪者を特定して、すぐさま逮捕できるのです。既にこの監視システムによって中国では2000人超の逮捕に繋がっているのです。
 このカメラが顔を捉えてその人の照合を始めると、特定されたその人は過去1週間何を何処で行っていたか、容易に調べ出すことができます。乗っていた車、何処で誰と会っていたか、そして親族はどのような人たちか、頻繁に会っている交友関係者はどのような人なのか、つぶさに検索できるというわけです。かつて監視社会の悲惨さを描いたジョージ・オーウェルの『一九八四年』という小説は1948年に発表されました。その後1950年代に映画化、古くからの話題作として映画ファンの伝説的な人気作となっていますが、現在訪れているのは、まさにジョージ・オーウェルの描いたような自由のない監視社会なのでしょうか?
 そしてこの監視社会は中国だけの話でしょうか? AIや技術の発展によって、人々はもう完全に監視状態から逃れられません。あらゆるところにカメラが設置されてきたのは日本でも同じですが、かような流れは止められないように思えます。
 かような社会は息苦しいように感じるかもしれませんが、反面、本当に悪事が見逃されない例も出てきています。昨今、日大のアメフト試合でも殺人タックルが問題視されて、マスコミで連日報道され、社会問題化してきています。あのタックルシーンも従来であれば、試合の中継は普通ボールを追いかけていますので、ボールから離れたところで行われたあのタックルシーンは何処にも映像記録が残っていなかったはずです。鮮明なタックルシーンが映像に残っていたからこそ、今回事件化しているわけですが、ひと昔前ならば、映像が残っているわけもなく、そうなればタックルの異様さを証明するすべもなく、事件は闇に葬られていたことでしょう。まさに誰かがスマホで映像を取っていてSNSを通じて拡散したからこそ、日大監督とコーチの悪事が暴かれたわけです。その後も日大の監督は、「反則シーンを見ていなかった」と記者会見でとぼけていましたが、反則が行われていた直後の映像シーンでは監督の動向を捉え、監督がしっかりと反則シーンをみていたことが映されていました。中国の「天網システム」ではないですが、まさにカメラが従来では捉えきれなかった悪事と嘘を暴いたわけです。
 かように監視社会は息苦しいようにも思えますが、反面、日大の事件の表面化のように真実を白日の下に晒せる効果もあります。そうはいうものの、監視され続ける社会などには住みたくなく、監視社会は中国だけのものであって、日本では決して個人のプライバシーを侵害されることはなく、憲法で定められた基本的人権を犯すような、国民個々人の監視などあり得ないと思われます。監視社会はお隣の独裁国家である中国だけのことで、それは政治体制が違うからで、日米欧など自由主義国家で犯罪行為に当たる国家の国民監視などあり得ないと思うでしょう。

 ところが現実はそうでもありません。実はあなた方一人一人、日本でも国民すべてが監視されつつあるのです。
 これは元NSA(米国家安全保障局)の分析官であったスノーデンの暴露で明らかになりました。スノーデンは2009年から日本の横田基地に滞在、表面上はデルの社員として勤務していました。しかし実際はNSAの職員として働いていたのです。スノーデンの暴露によると、当時スノーデンはNSAの分析官として日本の通信システムの傍受、並びにそのシステムの乗っ取りを行っていたというのです。
 NSAは米国の国家 安全 保障局、National Security Agency ですが、別名No Such Agency<存在しない組織>とも言われています。要するに秘密のベールに包まれているわけです。スノーデンの話によればNSAはCollect it all(全てを収集する)を目標として、全世界のあらゆる通信を傍受、保管するのを目標としているというのです。
 考えてみると通信の傍受は、自らの支配権を得るためには極めて重要で効果的な手段です。日本がかつて太平洋戦争において米国との戦いで徹底的な劣勢に陥った転機はミッドウェーの戦いでした。この時、日本海軍は主力を集めて米国との決戦に臨んだわけですが、実は通信を傍受されていて日本軍の動きは敵に筒抜けになっていたのです。結果、ミッドウェーの海戦で壊滅的な敗退を喫した日本軍は、その後劣勢一方となり、敗戦へと向かっていたわけです。この時の通信傍受の話は戦後数十年して明らかになったことです。かように、通信を傍受される、通信を握られるということは国家の一大事なわけですが、これを現在では、米国がインターネットのインフラを支配して、米国国内のみならず、日本の通信システムまでもが米国の支配下にあることを意識しておく必要があるでしょう。
 盗聴されているというのは、ある意味、国家間のやり取りにおいては常識的な事として対処していることもあります。かつて小泉総理が北朝鮮に行って拉致被害者の帰国を協議していた時に、横田めぐみさんはじめ、多くの拉致被害者の帰国がなされず、死亡と通知された時、北朝鮮の会議場の控室で当時幹事長であった安倍晋三氏は、「交渉を止めて帰りましょう」と小泉総理に進言したということですが、これは北朝鮮側の盗聴を意識して行った発言と言っていました。また1996年の当時の橋本龍太郎氏と米国のカンター通商代表との日米貿易交渉では、日本側のやり取りは米国側に全て傍受されていたと言われています。

 逆に米国が傍受される場合もあります。1980年代、当時のソ連に米国大使館を作ったわけですが、その時当然のことですが、現地のソ連製の資材を使って建物を建てたわけです。
 建物ができてから米国側が大使館を調べてみると、多くのところから盗聴器が発見されたということです。困った米国側は盗聴器の存在を調べるために様々なところを壊して調べてみると、実はあらゆるところに盗聴器が付けられていることがわかって、作った建物を全て解体して壊すことになったというのです。かように盗聴は国家同士の間では常識的な手法でもあるわけです。
 しかしながら現在のシステムはほとんどインターネットを介して行われるのですが、元々インターネット自体が米軍で開発されたものですし、国際間のインターネットを介した通信は米国のシステムを通過することとなるので、どうしても米国側に傍受されてしまうわけです。更に昨今のようにカメラのシステムまで精巧な技術となりますと、日本という国土においても米国による完全な監視体制が敷かれていると覚悟した方がいいかもしれません。もちろん一般の人が監視対象になっていることはないでしょうが、米国がその気になれば日本国民全てが監視されるシステムが整っている可能性は否定できません。
 スノーデンの告発によりますと、日本のシステムにはマルウェアと呼ばれるコンピューターのシステムを乗っ取れるチップを埋め込んだと言っています。そして日本の重要な施設、送電線やダム、病院などは完全にコントロールできるというのです。盗聴だけに留まらず、システム自体を乗っ取って、いざとなれば自由自在にコンピュータープログラムを動かす体制ができている、と証言しているのですからたまりません。
 まさに我々はマジックミラーの世界に住んでいるようです。我々は鏡をみて自分の姿だけを認識して日々平穏に暮らしているわけですが、実は鏡の裏側にはしっかりと監視システムが稼働されていて知らず知らずのうちに巧みに支配下に置かれているのかもしれません。スノーデンの言葉が忘れられません。「日本が米国の同盟国であるうちはいいが、そうでなくなったら日本は終わりだ」。NSAの分析官として日本で監視活動を続けてきたというスノーデン本人の赤裸々な証言は驚愕的です。

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暴走する日銀相場『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
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Profile:朝倉 慶(あさくら けい)

K朝倉慶経済アナリスト。 株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。 実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。 著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。

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