トップが語る、「いま、伝えたいこと」
不況はますます深刻化しています。そのことは私の新著『2009〜2013 資本主義崩壊、最終ラウンド』(徳間書店 5月31日刊)に詳述しています。御一読ください。
そこできょうは3人の第3者の意見を紹介します。
一人めは藤原直哉さんです。彼は5月20日の「ワールドレポート」の中で、つぎのように書いています。
それにしても日本の景気は全体として良くないですね。各企業の決算発表や来期の見通し、行動計画を聞いても、大抵のところは売上が減るのでリストラして利益を稼ぐと言っています。設備投資計画を見ても自動車大手は来年3月期に3割の減少となっており、要するにこれから何をすれば良いかがわからないので、本部と経営者だけが生き残ろうとして、社員や下請けを切り捨て、じっと黙って何もしないで好景気の神風が吹くまで冬眠していようという戦略です。極めて無責任な戦略であり、こんなことをしていては倒産失業が増加するばかりで経済全体の破壊はますます進みます。さらに冬眠といっても実は今回のリストラで今年度から黒字になるのではなくて、リストラしても赤字の会社がほとんどなのです。それでもこういう無責任な戦略で臨むのはなぜか。他にやり方がわからないからなのです。もはや日本の自民党も大企業も未来を創るリーダーシップが完全に枯渇したと判断できます。昨日と同じ事を続けるしか能のないりリーダーはこういう乱世に組織を潰すことしかできないのです。統計を見ると銀行融資の焦げ付きが増えています。2月は3.4%の増加で01年3月以来最悪の数字です。また普通鋼材の受注は3月が43%の減少で、過去最悪の減少率。さらに08年度の国内自動車生産は7年ぶりに1千万台を割っており、ソニーも国内3事業所の生産を終了すると発表しています。4月の発受電力量は8.5%の落ち込みですし、世界的にも今年第1四半期の不動産価格は下落が加速しています。4月の企業倒産件数は久しぶりに伸び率が1桁になったとは言え未だに前年同月比で9.3%の増加であり、新しい年金制度としてスタートした確定拠出型年金制度については、何と加入者の6割が元本割れを起こしているのです。この制度について筆者は当初からもしやるなら全額円貨建て定期預金にしておくべきだと言い続けてきました。その言いつけを守った人は元本が守られたと思います。反対に相場に年金資産を入れた多くの人は、資産を減らしてしまいました。
これなど国家的な振り込め詐欺なのではないでしようか。みずほ銀行などは公的資本導入を議論する必要がないと言っていますが本当に大丈夫なのでしようか。中央三井信託銀行は公的資金の返済期限の延長申請を考えているようです。日本の金融機関も実は状況は大変なのだと思います。総じて言えば昨年に比べて経済統計の数字の下落率は減少傾向にあります。それは最も激しい落ち込みの時期が通り過ぎつつあるからで、決して景気が良くなってきているからではありません。世界大恐慌のようなときには景気の2番底、3番底が来ます。ですから再び何らかの契機に景気が下降し始めると、どこまでリストラしても黒字になる見とおしが立たず、組織は内部崩壊していきます。やはりここで改めて日本人は未来を創るリーダーシップを学ばなければなりません。昭和時代までの日本であればごく普通にみんながやっていたことですが、今の現役世代にはほとんど継承されていないようです(転載ここまで)。
二人めは、朝倉慶さんです。彼は私へのレポートでつぎのように書いています。
インフレを抑えられないFRB
<出口戦略はあるのか!>、FRBの進めている、常軌を逸した金融緩和政策について、専門家の間では、懸念が出されています。<いったい、インフレになったら、元に戻せるのか?> 今回のような、壮大な金融の緩和政策は、歴史上、なされた試しはなく、この未知の実験の行くすえに対して、はっきりとした展望が持てない、といったところが本音でしょう。
今までは、金融政策と言えば、金利の上げ下げで行われてきたわけです。景気が過熱すれば、金利を上げることで、経済活動を抑え、景気の行き過ぎを調整する、反対に不景気であれば、金利を引き下げることによって、経済を刺激し、経済の活性化を図っていく、というわけです。今回は100年に一度と言われる、バブルの崩壊からくる、資産価格の急激な下落からくる、特殊なケースですから、従来の金利の引き下げだけでは、効果がなく、お金の量を増やしていく、という量的緩和まで踏み込んできたわけです。この量的緩和も、日本のケースで明らかになったように、なかなか効果を発揮しません。よって、FRBは、この効果をどうしても得るために、企業や銀行に対しての直接的な資金供給、要するに、彼らの持つ、<売れない資産>、不良債権を買ってあげて、無理やりに民間に資金が行き渡るようにしたわけです。問題となっている、証券化商品や、昨年夏に経営危機に陥った、住宅公社、フレディマックやファニーメイの発行する社債や債券などは、まとまった買い手もなく、すべてFRBが償還されたものを買い取る、並びに、市場においても買い続けるということを、やり続けてきました。ニュースにもなりませんが、FRBは、昨年8月からこのフレディマック、ファニーメイの社債や債券を40兆円も購入しているのです。その為、気がついてみると、FRBの資産から、最も流動性のある、短期国債は消え去って、資産に残っているのは、この様な証券化商品をはじめとする、とても現在市場で、売却することは不可能な資産ばかりになってしまったのです。このような流動性のない資産に対して、FRBはドルを発行しています。いわば、FRBは、何でもかんでも買い取って、ドル発行を続けてきたわけなのです(転載ここまで)。
三人めは、私の友人に見せてもらった文章なのですが、それは『現代産業情報 No.622』(5月15日 現代産業情報研究所刊)の文章です。分りやすい解説でした。私は同社の会員ではないので、転載はできませんので、要点だけ私流にまとめて発表します。
@日経平均が9,000円を上回ったので「経済は底打ちした」という楽観論が拡がりつつあるが、これはまちがいだ。
A日米欧が、景気刺激策をとり、紙幣を増刷しているからである。
Bこれで財政の健全性も金融の規律も無視されている。
C国(政府や日銀、アメリカではFRB)がなりふりかまわず、非常識なことをしている。
Dこの状態は、すでに資本主義ではない。
Eしかしこのまま放置すれば、日経平均は6,000円を下回る。
Fいまの経済の実態を一番よく表わしている本が一冊ある。
講談社セオリーブックの『不況の教科書』である。ここにはストレートに経済事情が書いてある。
Gいま政府が手を引き、日銀が引きしめに入ったら、すぐに昨年10月以上の金融パニックになることは必然。
以上のとおりです。いま日本も世界もあぶない綱渡りをつづけているのです。そのことを読者もぜひ自覚しておいてください。
=以上=
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