“超プロ”K氏の金融講座
このページは、舩井幸雄が当サイトの『舩井幸雄のいま知らせたいこと』ページや自著で、立て続けに紹介していた経済アナリスト・K氏こと
朝倉 慶氏によるコラムページです。朝倉氏の著書はベストセラーにもなっています。
「2023年は起点の年、2024年は加速の年、2025年はこれを定着させる年だ」
1月7日、経団連の十倉会長は日本で賃上げが定着していくことに対して強い期待感を示しました。
このような経営側の姿勢を受けて、連合の芳野会長は「今年は昨年2024年を上回る賃上げを目指す。中小企業の賃上げ率が全体を上回り、格差是正が進むことを期待したい」と述べ、遅れている中小企業の大幅な賃上げにも期待感を示したのです。
経団連の2025年の基本指針では、「賃上げの勢いを社会全体に定着させるのが経団連・企業の社会的責務だ」と記しています。通常、経営側は賃上げを抑制しようとして、労働側は大幅な賃上げを勝ち取ろうとするので、経営側と労働側は対立するのが普通です。ところが現在の日本では、経営側も労働側も揃って賃上げを目指しているのですから異様な世界です。経営側、労働側の姿勢をみる限り当然、今年も昨年並みかそれ以上の賃上げが達成されることは必至と思えます。
●厳しい二極化の流れ
ここで問題は中小企業です。大企業に関して言えば、現在労働分配率は37%台と史上まれにみる低さです。
労働分配率がかつてないほど低いということはそれだけ、大企業は労働者に対して賃金を支払う余裕があるわけで、そのような観点から見れば、ほとんどの日本の大企業は今年も楽に目標の5%超の賃上げを実施することができると思われます。既に先行して多くの大企業が昨年を上回る賃上げを行うことを宣言しています。春闘はこれからですから、今後交渉が本格化するにつれて、益々今年の賃上げの水準が上がっていくでしょう。
問題は中小企業です。連合の集計では中小組合の賃上げ率は2023年が3.3%、2024年が4.4%です。大企業は5%超の賃上げを実施していますから、中小企業と大企業の賃金格差は広がる一方です。連合はこの格差を縮めるべく今年の中小企業の賃上げ目標として6%という数字を掲げています。
これは中々難しい、日本の中小企業の団体である日本商工会議所は早くもこの6%という大幅賃上げ要求をけん制する発言を行っています。
日本商工会議所の小林会頭は1月16日に記者会見をして「6%までは無理だ」とはっきり述べています。これが実体でしょう。企業が賃上げするにはその原資が必要です。大企業であれば折をみて適当な時期に製品の値上げに踏み切れるでしょうが、中小企業は売り上げのことを考えるとそう簡単に値上げに踏み切るわけにも行きません。日本商工会議所の調査によると、「2024年10月時点でコスト上昇分を価格に転嫁できているか」との問いに対して「4割以上の価格転嫁ができた」との答えが52%、「1-3割しか価格転嫁できていない」と答えた企業が3割にも達しています。これが現実です。
世間を見渡すと昨今は企業の姿勢が大きく変わってきました。従来ですと価格転嫁をためらっていた企業も次々に値上げをする流れが生まれてきました。
輸入物価が全く下がりません。食料品など輸入が大半ですから当然値段は下がりません。また国内で大部分を生産しているコメの価格でさえ昨年60%を超える爆発的な上昇となりながら、今年も値段は全く下がる気配がありません。
とにかく世界的に異常気象です。日本も世界も農作物の価格などは上がる一方です。さらに円安も再び加速してきていて、現在のドル円相場も155円台で推移しています。ガソリン価格も政府による補助金の削減によって上がってきました。ガソリンはリッター185円となってきましたが、これでも日本のガソリン価格はG7各国の中で米国やカナダに次いで安いのです。因みに各国のガソリン価格を比較するとイタリアは289円、フランスは288円、ドイツは281円、英国は266円です。資源がない日本が如何に各国と比べて割安なガソリン価格に甘んじているかがわかります。ほんの少し補助金を減らしただけで、ガソリン代は上がってしまうのです。しかも日本では今月から再び電気・ガス料金の補助金が再開されます。そしてその補助金も春になれば打ち切られる予定です。このような現実を踏まえればあらゆるモノの価格が下がるはずはないのです。ですから大企業でも中小企業でも賃上げを継続的に行うしかないのです。物価が恒常的に上がり続ける、インフレ時代に入ってきたのですから、当然賃金も毎年上がらなければなりません。それについていけない企業は残念ながら生き残れないのが現実となってきたのです。
このような中、日本の社会も消費も完全に二極化の傾向が露わになってきました。賃上げできるところ、値上げできるところと、賃上げできないところ、値上げできないところがはっきり見えてくるようになってきたわけです。そして消費も盛りあがっているところと低迷するところのコントラストが鮮明になりつつあります。これはデフレからインフレという大きな変化の中で生じてくる冷然としたな現実でもあります。
日本フードサービス協会が1月27日に発表した2024年の外食売上高は、前年比8.4%増でした。外食各社はコメなどの値上がりで値上げしたものの、客数は増えました。また百貨店の売上は前年比6.8%増と好調です。インバウンド需要が旺盛で大都市の百貨店中心に売上が急増しています。
一方で、東京や大阪など大都市以外の百貨店の売上は前年比0.5%減となっています。都会と地方の格差です。スーパーの売上もパッとしません。全国のスーパーの売上は前年比2.7%増です。物価上昇を考えればほとんど増えていないわけです。スーパーの売上自体は5年連続で前年実績を上回っていますが、食料品の値上がりを考えれば10%超の売上増になっていても当然のように思えます。
これをみると、日本全体で消費者が値上げ疲れのような状況になってきたようにも感じます。まさに日本全体で消費にも二極化が起こってきたようです。今後、様々な地域や企業において賃上げできるところと値上げできるところ、それに対応できないところの差が歴然としてくることでしょう。弱肉強食の残酷なインフレ時代は始まったばかりです。デフレからインフレへの劇的な変化は止めようがありません。今後インフレも格差も益々広がっていくことを覚悟しなければならないのです。
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★『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)に引き続き、『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)が2009年5月に発売。その後 家族で読めるファミリーブックシリーズ『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)が同年5月30日に発売。さらに2009年11月には、船井幸雄と朝倉氏の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)が発売され、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を、2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』 (徳間書店)を発売、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』を発売、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。
★朝倉慶 公式HP: http://asakurakei.com/
★(株)ASK1: http://www.ask1-jp.com/
経済アナリスト。
株式会社アセットマネジメントあさくら 代表取締役。 舩井幸雄が「経済予測の“超プロ”」と紹介し、その鋭い見解に注目が集まっている。早い時期から、今後の世界経済に危機感を抱き、その見解を舩井幸雄にレポートで送り続けてきた。
実際、2007年のサブプライムローン問題を皮切りに、その経済予測は当たり続けている。
著書『大恐慌入門』(2008年12月、徳間書店刊)がアマゾンランキング第4位を記録し、2009年5月には新刊『恐慌第2幕』(ゴマブックス刊)および『日本人を直撃する大恐慌』(飛鳥新社刊)を発売。2009年11月に舩井幸雄との初の共著『すでに世界は恐慌に突入した』(ビジネス社刊)、2010年2月『裏読み日本経済』(徳間書店刊)、2010年11月に『2011年 本当の危機が始まる!』(ダイヤモンド社)を、2011年7月に『2012年、日本経済は大崩壊する!』(幻冬舎)を発売。2011年12月に『もうこれは世界大恐慌』(徳間書店)を、2012年6月に『2013年、株式投資に答えがある』(ビジネス社)を、2012年10月に朝倉慶さん監修、ピーター・シフ著の『アメリカが暴発する! 大恐慌か超インフレだ』(ビジネス社)を発売。2013年2月に『株バブル勃発、円は大暴落』(幻冬舎)を、2013年9月に『2014年 インフレに向かう世界 だから株にマネーが殺到する!』(徳間書店)を 、2014年7月に『株は再び急騰、国債は暴落へ』(幻冬舎)を、2014年11月に舩井勝仁との共著『失速する世界経済と日本を襲う円安インフレ』(ビジネス社)を発売、2015年5月に『株、株、株!もう買うしかない』、2016年3月に『世界経済のトレンドが変わった!』(幻冬舎刊)を発売、最新刊に『暴走する日銀相場』(2016年10月 徳間書店刊)がある。
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